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天才子役!天原久遠のオーバーワーク  作者: あすもちゃん
進撃の小学生編

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122/132

122、月うさぎ温泉計画

「お・じ・さ・ま♡くおん~、お願いがあるの~♡」


「…………なんだ?」


薬師寺山キャンプから数日、私は高天ヶ原グループ本社の社長室に来ていた。


「私の山で温泉が出たから~、大規模な温泉レジャー施設を作ろうと思って~、それを高天原で主導してくれないかな~って」


「態度の割にまったく可愛げのない要望だな、あとキモイから普通に話せ、見ろこの鳥肌」


そう言って伯父こと天原高彦が腕を見せてくる。

うわっ、すごい鳥肌。


「せっかく可愛い姪が頑張ってサービスしてあげてるというのに」


「お前の何処に可愛げがあるというんだ」


「失礼ですね、伯父様はこんなに有能で可愛い姪がいる幸せをもっと噛みしめるべきだと思いますよ?」


「有能であることは認めるが、可愛いと思ったことは一度もないな」


伯父とは高天ヶ原グループ総帥の椅子を奪い合うライバルだが、何かと気が合うのでよくこうして遊びに来ている。


特に商売の話や会社の利益になる悪巧みなんかは伯父と話してる時が一番楽しい。

だって規模が大きいし、何だかんだで有用ならお願いも聞いてくれるから。


「で、温泉か。山を貰ったとは聞いていたが……」


「そうなんですよ!それがもう素晴らしい温泉で、これを整備すれば日本一、いや世界一の温泉になること間違いなしの自慢の温泉で!」


「ふむ、俺はあまり温泉には詳しくないのだが、そんな山奥に客が来るのか?」


「もちろんただの温泉では客はわざわざ遠くまで来ません、しかし私の温泉は別です」


「温泉なんてどれも同じだろう」


なんとこの伯父、日本人でありながら温泉の良さをまったく理解していない様子。


「はぁ~やれやれ、これだから趣味の無い仕事人間は、人生の半分は損してますね」


「別に温泉ごときでそうは思わん」


仕方あるまい、ここは私がこの哀れな伯父に人生の楽しさというものを教えてやろう。


「時に伯父様、最近お休みは取りましたか?」


「いや?ここのところ忙しくてな、主にお前のせいで」


「それはいけません、伯父様が倒れたらグループの皆が困ります。というわけで私の温泉にご招待します」


「だからそんな暇は無いと」


「まあまあ騙されたと思って。斎藤」


「ハッ」


私が指をパチンと鳴らすと斎藤が現れる。


「伯父様を接待してあげて、コースはソロキャンシャトーブリアンコースで」


「かしこまりました」


今は土曜の午後1時、今からでも十分間に合う。


「お、おい!俺にはまだ仕事が!」


「私が代わりにやっておきます」


「任せられるか!おい離せ……!」


バタン。


斎藤に引きずられていく伯父。

部下の人も休んで欲しいと思っていたのか協力的だ。

無能には厳しいけど、結構慕われてはいるんだよなぁこの人。


さて仕事仕事っと。




翌日。


社長室のデスクに座る伯父は明らかに肌ツヤがよく、目の下のクマも完全に取れ、いくらか若返ったようだった。


「久遠、何だアレは」


「温泉です」


「温泉なわけあるか!」


「そう言われましても」


地面から出てきたお湯だから温泉としか言いようがない。


「それよりキャンプはどうでした?楽しかったですか?」


「ああまあ、悪くはなかった……」


「やっぱり!伯父様はソロキャンが合うと思ったんですよね!これからは疲れを溜める前に定期的に行った方がいいですよ?ああでも伯父様には奥さんも子供もいるから、難しいかもですね」


結婚するとこれだからなー、既婚者は自由にソロキャン出来なくてかわいそう!


「いやキャンプなんかよりあの温泉だ、どうするつもりなんだ?」


「なんかとは何ですか!キャンプあっての温泉、温泉あってのキャンプです!私はあそこを温泉&キャンプ場+その他諸々のファミリー向けの最強レジャー施設にするつもりです!」


「……キャンプ、いるのか?」


「いります、必須です」


「……分かった。それで?計画を聞こう」


仕事人間の伯父もようやくその有用性を認めてくれたようだ。

これであとは適当に要望を伝えておけば良い感じに進めてくれるだろう。

伯父様のこういうところ好き。


「まずあの山の持ち主は私なので、オーナーとして高天原に開発依頼を出す形になります」


「そうだな、お前は小1なのにおかしいくらい資金があるから、こういう所で使うべきだな」


なんせ歯が100億で売れる上、子役や配信の仕事でお金が貯まる一方だ。


「温泉もそうですけど、色々ファンタジーな場所なので、運営は神霊関係に強いツクヨミが中心になってやろうと思います」


今回私はオーナー兼ツクヨミの代表という形でここにいる。


「まあウチではアレをどう扱っていいか分からんし、それは助かる」


「他にもギャラクシー温泉と風祭建設、空星重工にも協力を頼もうと思います」


「待て、ギャラクシー温泉に風祭建設に空星重工?どれもその分野ではトップ企業ではないか」


「ええ、偶然コネがありまして」


ギャラクシー温泉グループは以前サウナで知り合った子がご令嬢だった縁で、私がイメージガールとして採用されたこともある。

風祭建設と空星重工は言うまでもなく幼馴染たちの実家だ。


「相変わらず恐ろしいな……」


「金成財閥からも協力させてほしいと言われています」


「あの金成から⁉一応高天原とはライバル関係なんだが……」


「次代は私の下僕です」


「お前は一体どんな学園生活を送っているんだ?」


「そんな訳で資金面や技術面はバッチシです」


「確かにな……しかしそれ程の大企業が集まって作る施設か、とんでもない規模になりそうだな」


「そうですね、山丸ごと使ってすんごいの作りたいですね」


なんせ日本のみならず、世界中から人が来そうな温泉だ。

普通の敷地じゃ到底賄いきれないだろう。


「ふむ、そうなると人手がな、最近はどこも労働者不足だ」


「あ、労働者は私に当てがあります」


「なに?どうするつもりだ」


「いるじゃないですか我が国には。働き盛りでありながら働いてない100万人近くの人材が」


「まさかと思うが……」


「はい、ニートを使います」


――――――――――――――


「というわけで私の山に無事温泉が出たので、最強温泉レジャーランド計画を始めまーす!」


【ウェーイwww】


【ほんとに温泉出たんだ】


【月の兎に導かれてって、なかなか面白い設定じゃん】


【↑多分実話だぞ】


伯父と話しあい関係各所に話を通したあと、私は自分のチャンネルで大々的に企画を発表した。


「私はこの温泉を究極で最高で世界一の温泉にしたいと思ってるんだけど、そうは言っても人によっては究極って違うじゃない?私が思う究極を突き詰めても万人受けするとは限らない、なにより私は全ての温泉に入った訳ではない」


【ふむ】


【久遠ちゃんが思う究極が俺にとっての究極だけど?】


【ファン以外にも客を呼びたいってことだろう】


「なので、コンペをしたいと思います!」


私なりに理想の温泉像があるにはあるのだが、私とて全ての温泉を知っているわけではない。

中には私の知らないサービスや風呂があるかも知れない、だからコンペという形を取ることにした。


【おおーーー】


【マジで?俺理想のスパ銭作るの夢だったんだけど】


「全国のスパ銭ファンは、当然自分だったらこうするのになぁとか、こうすればもっと儲かるのにとか考えたことあると思うんだよね、それを是非今回のコンペで発揮してもらいたい」


【絶対参加する!】


【絵がかけないからなぁ】


「文字だけでもいいよ。というかどれか一つを選ぶんじゃなくて、各アイデアの良い所を良い感じに組み合わせた形にするから優勝とかは無し、その代わり一部でも採用されたら何か賞品を用意するよ」


【なるほど】


【それならワンチャンあるかも】


「今から概要を言うね?まずは山頂には温泉施設、源泉付近に神社があるけど他は全部温泉ね」


温泉施設なので食事処やくつろぎスペース、お土産屋もあるが宿泊施設はここには無い。


「山頂はかなり広いけど、多分それでも温泉は手狭になると思うんだ、何せ世界中から来るからね。だから思い切って温泉は混浴にしちゃいます」


【え?こここ混浴⁉】


【キターーー!】


【えーそれはちょっと】


「もちろん水着か湯あみ着着用必須ね、脱衣所と洗い場は当然別。ナンパ行為は即退場のうえ一生出禁ね」


【ひぇ】


【なるほど】


私は温泉が大好きだが、正直全裸になるのは苦手だ。

常々水着でいいじゃんと思いながらタオルを巻いて入っている。

そして狭い土地を更に男女で分けて窮屈になっている温泉を見る度に、水着で混浴にしたらいいじゃんと思っていた、スパ銭ならなおの事。


それに家族やカップルで来る人も相手の出るタイミングを気にしたりして、のんびり時間を忘れることが出来ていないのも気になっている。

私の温泉はファミリー層も楽しめる温泉にしたい。


「だから滑り台とか、子供が遊べるお風呂があるといいかもね、もちろん大人向けな静かな場所も用意する感じで」


【ふむふむ】


「それで中腹から山頂にかけてはキャンプ場やバンガロー、グランピング施設なども用意するよ。宿泊客はここに泊ることになるね」


【贅沢に土地使ってるなぁ】


【キャンプ場のアイデアも募集するってことか】


「ふもとから山頂まではケーブルカーかロープウェイを用意するつもりだよ、車をふもとに置くことで開いたスペースを有効に使う予定」


【山中に駐車場あると殆ど車で埋まるもんね】


【ふもとなら立体駐車場でいくらでも伸ばせそうだ】


「一応物資輸送用に車道も整備するけどね。でも日中は封鎖して、サイクリングやスケボーのコースにでもしようかなと考え中。でっかいアスレチックとかダイナミックに遊べる場が欲しいね」


【はえー色々考えてるなぁ】


【車のない坂道とかめっちゃ楽しそう】


「もちろん徒歩で来れるように登山道も整備するよ。頑張って山登って温泉入ってキャンプ、休日はここで決まりよ」


【あまりにも健康的】


【俺らそこに行っていいんだろうか】


「こんな感じで計画してるわけだけど、御覧の通り完成にはとんでもない労力が必要なの」


【そらーね】


【完成何年後?】


「故に」


私は声のトーンを落とし、雰囲気を変える。


【お?】


【なんぞ?】


「私はここに、ニート動員令を布告する!!!」


【え、俺?】


【ニート動員令www】


「全国のニートどもよ!働け!君たちが様々な理由から働かないのは理解している、しかしいつかは働かなければならない!それならば、私のために今働け!」


【了解であります!!!】


【すごい理屈w】


【でも久遠ちゃんのためならマジで働けるぞ!】


「私は今回のプロジェクトに際し君たちの力を必要としている。山を開発する単純労働なので素人でも可、女性も歓迎だ。簡易寮を用意するので基本住み込みだから地方民でもOK、Wi-Fi食堂完備、毎日温泉も入れるぞ」


【うーん、まわりみんな同類だし楽しそう】


【地方民でもいいのか】


「さらに完成後はそのまま施設スタッフとして優先採用、関連企業に口利きするなど望むなら就職サポートもしてあげよう」


【大チャンスやん】


【関連企業って?】


「ツクヨミ、高天原、ギャラクシー温泉、風祭建設、空星重工、金成財閥とかかな」


【全部大企業www】


【俺今の仕事やめてそれに参加していいすか?】


「定員は一万人だ!決意が固まったら下のバナーから応募してほしい!私と一緒に究極の温泉&キャンプ場を作ろう!じゃ、そんな感じで、またねー」


私は足を組み、バイバイと手を振って配信を終わらせた。




【最後までキャラ通せw】


【うおーマジかー、久しぶりに外に出る時が】


【一万人か……このちゃんねる見てるニートどれくらいいるんだろう】


【十万人はいるんじゃね?無理だな】


【でもニートでもマジで働けない人と、やる気はあるけどくすぶってる人がいるからな、案外すんなり通りそう】


【俺働いてるけど応募するから、実際はもっと狭いぜ】


【↑そこは譲ってやれよ】


【多分久遠ちゃんなりの就業支援なんだろうなぁ】


【頑張れよニートども】



こうして私と大企業と一万のニートたちによる、巨大プロジェクトが始動したのだった。


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