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102、初等部への入学と再会

私立御柱(みはしら)学園。

英才教育を受けた上流階級のみが集う日本有数の学園である。


初等部から大学までのエスカレーター式で、生徒たちはここで勉学の他、社交なども学び、将来は指導者として手を取り合い日本を導くことを期待されている。


桜舞い散る4月。


私、天原久遠はそんな御柱学園初等部の校門前で仁王立ちしていた。


「ここが私の新たなるステージってわけね」


日本全国から集められた選りすぐりのエリートが集う学園だ。

きっとタケルの記憶にもないような刺激的な日々が待ってるに違いない。


やっぱりライバル企業の息子とかが勝負を挑んできたりするんだろうか。

もし挑んできたら返り討ちにして親の会社ごと下僕にしてやるんだ。


「げ~ぼっくひゃっくにっんでっきるっかな♪」


私はそんな未来にワクワクしながら、いざ入学せんと校門を跨ぎ……。


「久遠ちゃん入学おめでとう!今の意気込みを教えてください!」


「久遠ちゃん小学校では何をする予定ですか!?」


「えー今子役の天原久遠ちゃんが校門前に現れました。大勢の記者に囲まれ質問責めにあっています。これはどう声をかけたものか……」


跨ぎ……。


「見て、天原久遠ちゃんよ。凄まじい人気だわ……」


「親会社の令嬢だし、挨拶しておくか……」


「いい?あの子とは絶対お友だちになるのよ?絶対よ!敵対してはダメよ!」


「う、うんわかった……」


「いいか、絶対あいつには負けるな!我が家は天原より上とお前が示すのだ!」


「は、はいお父様……」


「なんだろうあの人混み」


「有名人でも来てるのかな?行ってみよう」


「…………」


跨げねぇ。


周囲はマスコミや挨拶待ちの大人たち、野次馬も集まり一歩も動けない。


「すみませーん通してくださーい、はいはい取材はあとでお受けしまーす、通してくださーい」


入学式に付いてきた斎藤が慣れた様子で人混みをかき分ける。

母が斎藤を連れていけと言っていたから運転手として一緒にきたが、このためだったのか。

ちなみに両親は両親で挨拶を受けまくっている。


「ご苦労さま斎藤」


「いえ、行ってらっしゃいませ久遠様。御入学おめでとうございます」


「ええ、ありがとう」


頭を下げる斎藤の横を通り過ぎ、ようやく校門を跨ぐ。

校舎へと足を踏み入れると風がざぁっと桜吹雪を舞い上げる。


私は長い髪を押さえて歴史ある校舎を見上げた。


今日から晴れて私は、この御柱学園の生徒だ。




「そうですねー、友達作りも勉強も、全てを楽しもうと思います」


完全無視は感じ悪いので、校舎の隅に寄り少しだけインタビューにも応えてあげる。


「やはりギルドがどうなっているのかは気になりますね、実際に体験し、よりよいものに出来たらと思います」


「お仕事との両立は難しいですが、どちらも全力でこなして見せます」


こんなもんかな?早く行きたいんだけど。


「おい、あの方がお見えになったぞ!」


「分かりました!久遠ちゃん、応えてくれてありがとう!学園生活楽しんでね!」


「ええはい、ありがとうございます」


記者たちが慌てて次の標的に移る。

流石エリート学園、私の他にも取材対象には事欠かないのだろう。


さて、ようやく静かになったし入学式に向かおう。

私は上級生のお姉さんに造花を付けられ、講堂へ案内された。


―――――――――


「あ、久遠さま!こっちこっち」


「くおんちゃん久しぶりー」


「おー小太郎にスミレちゃん、元気してた?」


講堂に入ると子分の小太郎と友人のスミレちゃんが椅子に座って待っていた。

私たち3人は同じ白鳥幼稚園出身として、卒園式以来の再会を喜び合った。


「くおんちゃん何組?」


「一組だね」


「えースーちゃん二組だよぉ」


「そ、そんな……」


ガーン。

マジかぁ、私の癒し、スミレちゃんと別クラス……。

まあこの子ならすぐ友達作るだろう。


「久遠さま、俺一組です!一緒ですね!」


「え~小太郎と一緒~?」


それはそれでガーンだな。

こいつ私をブス呼ばわりしたアホ猿筆頭だし。


「まぁまぁ、クラスの男子の調略は俺が引き受けますんで、また新しい国を作りましょう!」


「やらなくていいからね?ほんとだよ?」


こいつは私をなんだと思っているのか。

初等部でも王様ごっこは流石の私もちょっとキツイぞ。

せめて影の支配者、裏番とかなら……。

いやいやなんでそうなる、私は平穏に、普通の学生として楽しく過ごすのだ。


「えー新入生の皆さん、入学おめでとうございます」


…………


……


式が終わり、教室に移動する。

その間も私はこの学園でどう過ごすか、どの立ち位置でいこうか思考を続ける。


なろうと思えば学園を率いる王になれるだろう、それくらいの地位はある。

だが別に進んで面倒を引き受けたくはない、私は仕事が忙しいだろうし。

たまに学校にくる芸能人ポジションでいいんじゃないか?

みんなキャーキャー言って出迎えてくれるの。

他のクラスの子も休み時間に見に来たりさ。

そういうのも悪くないかも、いやしかしコネ作りも必要だしなぁ。


考えながら教室に入る。

黒板に名前が書かれているので自分の分だけ確認し、席に付く。


あれ?そういえば私は天原だから出席番号は1番だと思ってたけど2番だ、前に誰かいる。

相沢さんとかだろうか、お互いア行だと苦労しますな。


私はちらりとだけ前の席を見て、思考を続ける。


――しかしこの学園は上流階級のボンボンばかりだ。

親の権力を傘に横暴を働く愚か者がいないとも限らない。


そうなった時戦えるように、独自の勢力を持っていた方がいいのではないか?

そうなるとやはり王という立場は便利だ。


立場が弱くイジメにあう子も救えるかもしれない。

それが力を持つ者の責務であろう。

私なら、それが出来る。

全てを守り導く王に。


ふっ……なってやりますか、学園の王ってやつに。


「久遠さん」


そう静かに決意を固めていると前の席の女の子が振り返り、かわいらしい声で私を呼ぶ。


「はい?……ってええ⁉」


「久遠さんお久しぶりです!ようやくまた会うことが出来ましたね!」


「せ、刹那様⁉」


ガチの王様がいた。


正確には皇族。

今上天皇の孫、皇太子殿下の一人娘の刹那内親王殿下だ。

皇族には苗字がないから1番ってこと?


「一緒のクラスなんて嬉しいです!」


「わ、私も光栄です……」


手を両手で握られ、キラキラした目で私を見つめるお姫様。


「あのミュージカルからも大活躍でしたね!わたしくしテレビであなたを見かけるたび嬉しくって、あの、同年代だし勝手に親近感を覚えてたのですけど……!それで、その、今日会えたら言おうってずっと思ってたんですけど、わ、わたしくしと、お、おと、お友だちに……」


はわーやっぱりかわいいなぁ。

物凄い高貴なオーラを纏ってるのに早口でワタワタ喋っててすごくかわいい。

うわー守ってあげたいなぁ、ていうか仕えたい。

側近として主の願いを叶えてあげたい。

刹那様のためなら世界とも戦える気がする。


ああこの私がそう思う日が来るなんてなぁ。

これが真の王者というものか。

私のように力で支配する蛮族の王とは根本から違うのだなぁ。


「分かりました殿下」


「!じゃ、じゃあ、お友だちに……」


「私は征夷大将軍でいいです」


「え⁉」


「刹那様が学園の王、私が将軍ということで」


「どういうことです⁉」


私は椅子から降り、跪き臣下の礼をとる。


「我が陛下、私になんなりとお申し付けください」


刹那様の手をとり、手の甲に軽いキスをする。


「はわ!はわわ……!」


「さ、とりあえずこのクラスの掌握から始めましょうか」


「はい……って始めません!」


刹那様が手を振り払って慌てる。


「ふむ、陛下は支配をお望みではない、と。ではどうしますか?」


「どうもしません!ていうかなんですかそのキャラは?」


「いえ、自分でもよく分かりませんが何故かこうなります」


「普通にしてください普通に」


「はい」


頑張って普段通りに戻す。


「もう、いじわるはやめてください」


「あはは、自分でも不思議なんですけど、月詠の血ですかね?」


「確かに知り合いの分家の方も、わたくしに対してそんな態度ですけど……月詠家ってみんなそうなんですか?」


「さあ……月詠家に知り合いいるんですか?」


「ええ、皇居には三日月の護衛が何人かいますよ。久遠さんのことは竹丸からよく聞いています」


「え?あの下僕、刹那様の護衛なんですか?」


三日月竹丸は私と次期当主をかけて指相撲で勝負し、私に負け下僕になった少年だ。


「ふふ、ええまだ学生ですし、中等部にいますから学園に通ってる間は彼が護衛をしてくれます」


「あいつ先輩だったのか」


「ええ、下僕とは認めてないですけど、久遠さんのことは楽しそうに話してくれますよ」


あの竹丸がねぇ。私より弱いのに護衛なんて勤まるんだろうか。


「月詠家は代々皇室に仕えてるとは聞いてたけど、今も関係があるんだ」


「月詠家と婚姻を結んだこともありますよ、だから霊力も使えます、ほら」


刹那様の手が淡く光る。


「え、すごい。じゃ、じゃあさじゃあさ」


思えば同年代の子と霊力やあのトンデモな家(月詠家)の話をするのは始めてだ。

気付けば私と刹那様はすっかり打ち解け、数年来の友人のように接していた。


「うふふ、やっぱり久遠さんは素敵な方。改めて、わたくしのお友だちになってくれますか?」


「もちろん!できればもう少し砕けた口調で話してほしいけど」


「この口調は流石に変えられませんね、義務ですから」


「そっか、じゃあ呼び名を変えよう。私のことはくーちゃんでいいよ」


「く、くーちゃん?」


「うん、私はせっちゃんって呼ぶね?」


「せっちゃん⁉」


せっちゃんは顔を真っ赤にして照れている、かわいい。


不敬とは言うまい、むしろ友達同士で遠慮することこそ不敬というもの。

私はこのかわいいお姫様と、全力で友達になることを決めた。


これが後に私と一緒に数々の大旋風を巻き起こすことになる、生涯の大親友せっちゃんとの始まりだった。


新章突入!

カクヨムの方の近況ノートで刹那のイメージイラスト載せてますので、興味があったらどうぞ。

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