第四話
どう言う事だ。
「杏奈」のお迎え? 「アンナ」って……
そこで、彼女はやっと我に返る。
あぁ、そうか。そうだった。
私は、一人でスーパーに来たんだ。
だって、元々娘はいなかったんだから。
瑠奈は、そう自分に言い聞かせようとするが……
いや、違う。
娘はいる。でも、それは長女だ。長女のアンナだ。
そして、カンナは……
「杏奈」は、この春五歳になったばかりの、瑠奈の娘だ。
そして「環奈」は、もうすぐ三歳になるはずだった……
そう、産まれていれば。
カンナは、ちゃんと産まれていれば秋には三歳になるはずだった、瑠奈のもう一人の娘だ。
次女のカンナは、妊娠二十週目で瑠奈の体内から消え去った。
そして瑠奈は、その喪失にどう対応していいか分からなかった。
それからは、何もかもが悪い方向に向かって行った。
感情的に不安定になった瑠奈は、夫と会話する事や娘のアンナを育てる事で必死だった。
何とか毎日起きて、家事をして、アンナを保育園に連れて行った。洗濯をして、掃除をして。買い出しをして、料理をして。請求書の支払いをして、アンナが大きくなるにつれて必要な物を買い揃えて。年賀状を書いて、大掃除をして。
時間だけが過ぎて行った。それでも、何故か瑠奈は元には戻れなかった。
でも、それもそうだ。
だって、これは罰なのだ。
何故なら、カンナは瑠奈自身が殺したのだから。
次の更新は明日(8月22日(木))の19時半となります。