独身男の休日の昼
そうか、鍋か。あのまま話は進み、実際に夜は西野の家で鍋ということになった。
何故だろうか、彼女の言うことには何だかんだで首を縦に振ってしまう自分がいる。本当によくわからないが...縦に。
そして、まあとりあえず、それは夕方からということもあり、あの後に一旦解散した俺は今、元々先週から予約していた美容院にいるところ。
一応、自分の中では髪は別に1000円カットでも問題はないと思ってはいるのだが、数年前に姉の友達の友達が独立して店を開いたとかで無理やり行かされた頃から、実際のところかなり居心地がよかったこともあってそれ以降もそこに定期的に通っている。
値段もそれなりには高いが悪くない。休日のお昼に美容院。その言葉の響きもよくわからないがお洒落かもしれないと思ってしまう俺はおそらく、いや、普通にダサいのだろう。
とにかく、美容院についてはもう慣れたつもりでいた。いたのだが、今日は少し緊張をしてしまっている自分がいる。
なぜならば、今日はいつもの人が急用で入れなくなったようで、初めて見る人が俺のことを切ることになったよう。しかもいつもと違って若くてお洒落な女性...。
いつもは決してイケメンとは言えない男の人に切ってもらっているのだが、むしろそれがいい意味で美容師っぽくなくて俺に安心感をもたらしていた。
だから今日の人はちょっとどうしても色々とやはり緊張してしまう。
ただ一応、ヘアスタイルついては『前と一緒』ってわかったりしますかと聞いたところ、聞いているのでわかりますとすぐに返答があったので大丈夫だろう...とは思っていた。
まあ、ものすごく愛想もいいし、丁寧な人っぽいからいつもと人は違うが問題はないだろう...と髪を切り始めてくれた時には思っていた。
今も、切ってくれている途中でまだ完成では一応ないとは思うのだが...
明らかに...鏡に映っている自分の髪を見ている限りではいつもと色々と違う。
どこからどうみても既にいつもの髪型よりも短い...。
かなり短い...。
おかしいと思い始めた時にすぐに言えばよかったのだろうが、その時には過程はどうであれ、おそらく最終的にはいつもの様になるのだろうと自分に言い聞かせてしまい何も言わなかった。
そして、やはりこんなお洒落で若い女性に髪を切られることに慣れていないこともあって、俺は目をそれなりの時間つぶってしまっていた。
で、目を開けたら今の状況だ。
もう、ここまでくればどうしようもないのだろう。
今はちょうどワックスでだろう。髪をワシャワシャとセットされている。そしてヘアスプレー。
もう、好きな様にしてくれればいい。
と、完全に開きなおるしかないと思っていたのだけれども...
あれ?
何だろう、意外に悪くない気が...個人的にはする。
やはりいつもよりも、かなり短いのだが、むしろ...。
「はい、できました! 聞いていたとおりにいつも通りの髪型に切らせてもらったのですがどうでしょう!」
いや、間違いなくいつも通りではない...。
ないけれど...これはこれで
「あ、はい。ありがとうございます...」
ま、まあ、いいか。今回はまあ、仕方がないということに...しておこう。