隣人さんと後輩ちゃん
「え、誰ですか?」
「え? 隣人だけど...。そっちは...」
隣人...。そしてこの声は...
そう、俺の目には玄関先で佐倉の前に立つ隣人の姿が既に...。
今、ちょうど数秒前にインターホンを鳴らした者が村田ではないことが判明したのだが、もう彼女がドアを開けることを止める時間など到底俺にはなかった...。
気が付けば、もう...
今も佐倉は玄関先から俺の方をチラチラと見て困惑している様子...
それはそうだとは思うが、俺自身も困惑をしている...。
「さ、斎藤さん。すみません。隣人さんみたいですけど、そうなんですか?」
「え、あ、どうかしましたか」
本当にどうしたこんな時間にわざわざ。何かあったのか?
そう。俺の目には改めて隣人の姿が目に入ってくる。
そう。西野とは別側の隣人の男、大野さんの姿が...。
正直、この人については別に嫌いではないが、得意でもない。
ただ、何もないわけがないので、とりあえず俺も急いでお箸をおいて玄関先に向かう。
「いや、どうしたもこうしたも、夜勤明けに帰ってきたらお前ん家のところの鍵がドアに挿さりっぱなしだったから」
「え? あ、ほ、本当にですか。すみません。ありがとうございます」
む、村田...の糞ガキが。あいつマジで。
鍵が開けっ放しであることは仕方がないし、俺が悪い。そのつもりであいつに鍵を渡した記憶は確かにある。
ただ、挿しっぱなしなのはさすがに何を考えてんだと思わざるを得ない。あいつ...。本当に。
そしてたった今、この人、大野さんのことを得意ではないなんて心の声で言った自分を殴ってやりたい。ただの善意だった。
「いや、本当にすみません。教えてくださってありがとうございます」
「おう、てか、さっき西野ちゃん。駅からの帰りにすれ違ったけど、今日は一緒じゃないんだな」
「え、あ、まあ、今日は」
まあ、確かに最近は、ほぼほぼ毎日時間が重なって一緒に通勤していたのかもしれないが、そうか。このおっさんに見られていたのか。別にいいけど、何か...
「で、お前の隣の彼女は...」
「あ、彼女はその会社の同僚と言うか、はい。ただの会社の同僚です、べ、別に変な関係ではないですよ。色々ありまして」
「色々...」
そして、やっぱりこの人のことは苦手かもしれない、何でそんなバキバキの目で俺のことを凝視するように...。あれか? 夜勤明けだからか? そうなのか?
「会社の同僚と一夜を共に...パジャマ」
いや、何だその言い方。いや、別に何もない。本当になかった。
って、何だ。ブツブツと言いながら自分の家に戻っていった...?
え? 何だやはり彼の行動がわからない。
って、今度はその大野さんの自宅から何かを思いっきり蹴ったような大きな音?
え? マジで何だ。意味がわからない。
意味がわからないけれど、鍵のことを教えてくれたことは確か。そこは素直に感謝だ。
まあ、少し、いや割と変わっている人ではあるが、悪い人ではないのだろう...。
とりあえずは、そうだな。もう一度村田に鬼電だな。
「西野ちゃん...? 一緒?」
そして、佐倉は佐倉でどうした...。
いまいち何を言っているのかは聞き取れなかったが、何かを考えるように気が付けば隣でブツブツと...
でも、やっぱりよく考えたら、いや、よく考えなくても、佐倉が俺の自宅にいて、しかも俺のパジャマを着ている光景、おかしい。おかしすぎるよな...。
そして、何故俺はあの時...
そう。扉の前にいるのが村田ではないと分かった時、もう一人の隣人、西野の存在が頭に浮かび、さらにやばいと言う感情が思いっきり頭によぎってしまったのだろうか...。
そう。やばいという感情が...どうして
あんなにも強く...
本当に面白い、続きが気になると思ってくださった方だけで大丈夫ですのでブクマと評価★★★★★をいただければ幸いです。元気が出ます。
よろしくお願いします。




