二日酔いする独身男
昨日は色々と疲れた。結局、解散をしたのは夜の12時を回った頃。
西野は食事の後も自分の家から追加でチューハイを持ってきたりして、かなり飲み、最終的には俺の部屋で寝そうになっていた。だから、そのまま隣の家に送っていった記憶がある...。
でも、俺もそこまで酒が強いわけでもないのに昨日は割と彼女に合わせて飲んだから、ちょっとまだ二日酔いと言うか、酔いが覚めていない気がする...。
こんなに朝の太陽が気持ちよくないのはかなり久しぶり。
今も出社して自分でデスクにちょうど座ったところだが、もう帰りたい。コンディションが悪すぎる。でも、明日は祝日。神の祝日だ。今日さえ耐えれば何とかなる。
「斎藤さん!」
って、ああ佐倉か...。
声の向きに顔を上げるとそこには我が社のアイドル美女で若手のエース、後輩の佐倉が立っている光景。そうか。名古屋から帰ってきたんだったな。で、一体何だろうか。そんな真面目な表情をして...。
「今日の夜って空いてますか?」
「え?」
「先日のお礼をさせてほしいです」
「えーっと、だから全然大丈夫...。俺、殴られただけで特になんもしてないし」
と言うか、何だ。今日はそんな、らしくもないしおらしい表情と声で...。
正直、いつもみたいに小バカにされる方がまだやりやすいというか、何というか...。
それに、それはもう実際にもlineでも、本当に大丈夫と何度も言っているはずなのだが、何故そんな...。そして、雰囲気的に引き下がりそうにない真面目な雰囲気...な気が。
「えーっと、じゃあ村田も行くか」
「いえ、今日は二人がいいです。私と斎藤さんの二人で。駄目ですか?」
えーっと、二人...。
いや、何と言うか、もう朝の朝礼前でほとんどの人がデスクに座っている中でそんな大きな声で言われると...。
まあ、そっちがいいなら別にいいんだけど、案の定周りからの視線がこっちに...。
何か、睨んでくるやつもいるんだけど、別にそういうのではないからな...。彼女が俺にそんなわけはまずない。ない....うん。絶対にない...はず。ない。
元来プライドの高い彼女だ。借りを俺に作りたくない。そういうことかもしれない。とりあえずは、そういうことにしておく。おそらくそう。
そして、とりあえず、このままここで押し問答してもそれはそれで色々と...。
「わかった。そこまで言ってくれるのであれば、じゃあ行くか...」
まあ、実際に空いているか、空いていないかで言われると普通に空いているしな...。そう答える方が今は圧倒的に楽...だと思う。
「本当ですか。やった。絶対ですよ!」
「え、ああ...」
で、今度はさっきまでのしおらしさから一転して、まるで少女のようにおおげさに喜ぶ素振りを笑顔で見せてくる彼女。
いや、何でそこまで...
「ふふ、斎藤さん。何が食べたいですか?予約します!なんでも言ってください」
「えーっと、ちょっと考える時間とかって...」
「はい。でも、無しは無しですからね。絶対に無しですよ」
「え、ああ。もちろん...」
「ふふ、じゃあ待ちます。決まったら言ってください!」
「おう...」
えーっと、とりあえず居酒屋以外...。
と言うか、昨日も今日も、何だこれ...。
何だこれ...。