表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/39

独身男の夜の自宅


 時刻は夜の20時00分。


 「どう? ふふ、上手にできてる?」

 「まぁ...美味い」

 「やった」


 今、俺の自宅には一人の美女...。

 自宅には、見慣れたちゃぶ台式のテーブルを挟んで俺とその部屋着の美女が食事をしている光景が広がっている。


 いや、別に、仕方がなかっただけだ...。


 今もこちらに笑顔を向けて話かけてくる隣人...西野美桜が、俺の自宅にいるこの現状は回避しようのなかった仕方のないことなのだ...。


 「へぇー、色々とお洒落。ふふ、ポイントアップ」

 「何のだよ...」

 「さあ、何のでしょう」


 そう。今も目の前にある雑炊というか、七草粥? とにかく、何故かはわからないが俺の怪我を労わって飯を作ってもってきてくれた以上、あがりたいと言われて彼女を断る理由もなかっただけ。


 こうなることなんて全く予想なんてしていなかった。全く...。


 「でも、雄大くん。部屋ちゃんと綺麗にしてんじゃん。ふふ、もしかして普段から可愛い女の子とか家に連れてきたりしてるんじゃないの?」

 「なわけないだろ...。姉ちゃん以外来たことねぇわ...」

 「ふふ、そっか、そっか」


 そう。別に部屋だってさっきたまたま片付けただけだ。たまたま偶然片づけた後に彼女が来ただけ。別に意味はない。本当に。


 彼女がさっきから、ちびちびと口に含んでいる梅酒に関しても、たまたま自分が飲みたくて買っていただけ。ただそれだけだ。


 でも、意外にも酒に弱いのか、今も目の前には頬を赤くやんわりと染めた西野の姿。


 いや、でもそんなにアルコールは強くないと思うのだが...。


 もしかして、今思えば、そもそも彼女はお風呂にでも入ってからここに来たとか...。例えば、無防備でラフな部屋着であることもそうだが、髪に艶というか、全体的に火照っている感じがして何か...。


 いや、気のせいだ。と言うか、だったとしても何だという話。


 「雄大くんって、料理で言えば何が一番好きなの?」

 「特に一番ってのはないかな...」

 「えー、強いて言えば?」

 「まぁ...一周まわって今はカレーかな」

 「ふふ、一周って。そっかー。ふふ、カレーね」


 そして何だ。その質問は...。


 「...」


 いや、別にそれで今度はカレーを作ってくれるのか?なんて想像を俺は一瞬たりともしていない。するわけがない。

 もし、そうなったらそんなの最早...。いや、だからしてない。そんなバカな想像。するわけがない。


 駄目だ。ちょっと色々と俺はまたおかしくなっているのかもしれない。


 そもそも、俺の部屋に女性がいること自体がおかしいのだ。


 一体、何を言っていると思われるのかもしれないが、彼女がここにいるだけで、まるで俺の部屋が俺の部屋ではない全く別の場所に感じられると言うか何というか...。


 というか、本当にこの状況は何だ。今まで生きてきて女友達すらいないに等しかった俺が、部屋着を着た美女と自宅でご飯って...。


 というか、本当にさっきから俺は何を考えている。バカか。


 「あ、そうだ。雄大くん、ここ知ってる?」


 そして、そんな意味のわからないことを色々考えていると、目の前に座っていた彼女が今度はそう言って、いつの間にか俺の隣に移動してスマホを見せてくる...


 「友達で一緒に行ってくれる人いなくてさー、今度一緒にとかどう?ちょっと遠いから電車とかで。駄目?ほら、例えばこの日とか」

 「えーっと」

 

 近い。あと何で急にそんな真顔に...

 

 「ふふ、別に今答えなくてもいいから、考えておいてよ」

 「え、あ...ああ」


 そして、何故か首をそう縦に振っている俺...。


 いや、マジで意味が分からない。よくよく考えると、いや、よくよく考えなくても本当に何だこの状況は...。


 隣人とならこうやって自分の部屋でご飯を食べるのは普通なのか?いや、別に彼女がそういうつもりでないことはもちろんわかっている。と言うか、もちろん。俺もそういうつもりではない。もちろん...違う。そんな勘違いはしない。


 というか、本当に俺は何を考えている。


 「あ、もう食べてくれたの? ふふ、何か嬉しい。おかわりいる?」

 

 そして、それはもう肩が触れ合うぐらいのすぐ隣には尚も笑顔で俺にそう話しかけてくる彼女。


 「え、ああ、ありがとう」

 「じゃあ、ちょっと待っててね。持ってくる」


 マジで何だ。これ...。


 あとさっき、提案された日って、確か...。


 同窓会の...。


 と言うか、今日のこれ、終わりはどうやって...。


 「...」


 いや、本当にどう...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これってあれだ、擬似的な幼馴染だ 一線を越えなければ居心地のいい関係のままでいられるやつ
[良い点] 面白かったです。次回も楽しみです
[良い点] ジレジレ感と主人公のキャラも好きです それと、微妙な距離感の女友達の感じがリアルでいい! 応援しています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ