表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/39

独身男の穏やかな午前中


 よし、昨日の件を盾に今日こそ早退をゲットしてやった。

 実際に病院に行くかどうかは置いておいて、今日は計画通り午後には退勤が可能に。さすがに課長も首を縦に振りやがった。 


 朝の外せなかった用も無事に終わったし、後は昼が来るのを軽く待つだけ。本当に昨日と比べると平和な一日。午後からどうするか。


 今日は昨日と違って窓の外も天気がいい。まさに快晴だ。


 と言っても、ぼーっとするだけなのだけどな。まあ、そのぼーっとするために早退するのだから普通に意味のある早退。


 ほんと昨日は散々だっただろうが、佐倉も今頃は名古屋を何だかんだで直帰前に満喫しているのではないだろうか。まあ、どうでもいいけれど。


 あと、そう言えば思い出したが、朝のあれは本当なのだろうか。まあ、あの感じは本当なのだろう...。


 雑炊...。持ってくる...。


 まあ...そう。今さら断るのは逆にめんどくさいし、持ってきてくれるだけなことはわかっている。よくある彼女の気まぐれなだけであって、俺でなくても彼女はそういうことをする女性...なはずだ。


 とりあえず特に意味はないが、色々と掃除はしておかないと駄目な気が...する。もちろん、彼女が家に入るかもしれないからとか、そういうわけではなく、人が家に来るかもしれない場合のマナーとして。そう。マナーとして。


 「すみません、斎藤さん」

 「ん? どうした村田」


 仕事中なのに他のことをボーっと考えながらパソコンのキーボードを叩いていると、いきなり隣には同じ課の後輩である村田。


 「今日の夜って空いてたりしますか?」

 「空いてない」


 音を抜き去る速さで俺はそう即答する。今日こそは家に帰る。週末ならまだしも、特にこんな週の真ん中頃にこいつの方から誘ってくるなんて、普通にやっかいごとの予感しかしない。絶対に空いていない。


 とは言いつつも、一応、理由だけは聞いておく


 「何かあんのか?」

 「いや、ちょっと理由は特にないんですけど、まあ飯でもどうですか?」

 「無し。それに今日俺、早退するし。また今度な」


 特に理由はないのに、こいつが誘ってくる。あまりにも不気味すぎる。せめて奢れとかそういうことならまだわかるが、今日は見ている限りそういう感じでもない。改めて普通に無し。それに何だそのわざとらしい笑顔は。


 「いやいやいや、どうせ何もないじゃないですか。斎藤さん」

 「殺すぞ...。ないけど」

 「じゃあ、お願いします。決定ですね」

 「いや、よく考えればあったわ...」

 「何ですか?」

 「飯、昔の知り合いと」


 あくまで、あくまで持ってくるだけだろうが、嘘ではない。予定は予定だ。


 「いやいや、本当にそこを何とか」

 

 そして何だ。何で今日のこいつはこんなにも食い下がらない。意味が分からない。大丈夫か? 何か心配になるレベルで意味不明。


 「いや、本当にどうした。何かあったのか?村田」

 「いや、ないですけど」

 「そ、そうか。じゃあそういうことだからまた今度な...」


 マジでどうした、こいつ...。


 「ちょ、一旦確認します。待ってくださいね」


 確認...。何を。誰に。


 まあ、何でもいい。今日こそあと数時間。とりあえず珈琲でもちょっと買ってくるか。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
殴られた証拠として病院で診断書を取っておくべきですよね。 後になって「そんなことなかった」とかとぼけられる可能性高いですし、訴えるにしても証拠必要です。
[良い点] 読み始めたら何の澱みもなくツルッと最後まで読めました。 テンポも内容も人間関係も分かりやすく、とても良いです。 佐倉ちゃんが当て馬でしょうか。 [気になる点] 続き。 [一言] せめてアニ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ