第89話 たぶんこの話だけ、かっこいい感じのテーマソングが流れていると思うんですよ、なんか腹が立ちますね
崖の下に転がり落ちたわけですが、まだ生きています。
全身が打ち身とスリ傷だらけですね。冒険者をやっていればケガの一つや二つは慣れていますが、ここまで痛いのは久々です。
とくに足首のケガが重いので、立ち上がるのが困難でした。
「こんな状態で、なーんでモンスターに包囲されてるんでしょうねぇ……」
どうやら私は、ひとつ下の階層に落ちてしまったらしく、新手のモンスターたちがぞろぞろ集まっていました。
悪知恵洞窟のモンスターたち、頭がキレるだけじゃなくて、ちゃんと強いんですよね。
モンスター図鑑においても、後ろの方のページに乗っている強い個体ばっかりでした。
ははは、乾いた笑みがこぼれてしまいますよ。
これ、ギャグじゃカバーできないぐらいピンチですね。
悲しいですねぇ。こんなところで私の冒険は終わるんでしょうか。
そんなの嫌なんですが、足首をケガしたせいで立ち上がれないんですよ。
くっそー、せめてもの抵抗として、懐に隠し持った小型ナイフで一体ぐらい道連れにしてやりますよ。
と思ったら、隠し持っていたはずの小型ナイフが懐にありません。
どうやら崖の下に転がり落ちる最中に落としたみたいです。
はぁー、こんな日にかぎって、運がないですねぇ。
私の唯一の取り柄は運のステータスが高いことなんですが、なんで死の間際で発動しないんでしょう。
やれやれ、運命の神様は意地悪です。
私は死ぬことを受け入れて、そっと目を閉じました。
あと何秒ぐらい生きられるんでしょうか。
嫌ですねぇ、死ぬのは。
あともうちょっとだけ、仲間と一緒に冒険したかったんですが。
と、ウダウダ考えているわけですが、なぜか痛みはやってきません。
その代わりに、嫌な奴の声が聞こえてきました。
「なんでお前らみたいなネタパーティーが、こんなヤバイ案件に首を突っ込んでるんだ?」
盗賊イシュタル。
勇者パーティに所属する盗賊で、スピード能力がカンストしている世界最速の単純男が、なぜか私の前にいました。
*CMです*
ヒーローは遅れてやってくる。でもせっかくならかっこよく演出したい。そんなあなたにお届けするのが、ファンファーレ専用トランペットです。
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かっこいい登場シーンを演出する、トグサ楽器店でした。




