第81話 この物語にしては珍しく、ちゃんとしたバトルシーンですよ
前監督が利用したと思われる抜け道の探索が始まりました。
先頭を進むのは、PMCのみなさんです。
「光明の魔法で暗闇地帯を徐々に進みつつ、魔法のたいまつを壁に設置していく。冒険のスピードは遅くなるが、確実性を重視するぞ」
みなさん続々と抜け道に入っては、壁際に魔法のたいまつを設置していきます。
たった一つ設置するだけでも、ぼわんっと周囲が明るくなるので、かなり歩きやすいですね。
ちなみに我々は足手まといなので、魔法のたいまつを背負う係になりました。戦闘要員として期待されていないので、荷物運びというわけですよ。
そこそこ重労働ではあるんですが、モンスターと命がけの戦いをしないだけでも楽な役割なので、とくに文句はないです。
そうやって我々弱小パーティーが、せっせと魔法のたいまつを運んでいると、先頭を進むPMCのみなさんの大声が響きました。
「モンスターの巣だ! 総員交戦ラインを下げてから、魔法使いの範囲攻撃で露払いしろ!」
やっぱりあったんですね、モンスターの巣。新規ルート開拓って、本当に恐ろしいです。
というわけで、百人単位の冒険者たちは、まるで波が引くように抜け道から後退。
それと入れ替わりで各パーティーの魔法使いたちが前面に出て、ずらりと魔法の杖を構えました。
それぞれが得意とする炎、風、雷などの攻撃魔法が飛び出して、モンスターの巣を覆いつくします。
まるで大自然の猛威が生き物を襲うように、モンスターの巣には魔力の破壊現象が巻き起こりました。
我々の待機している後方にまで、むわっと熱気と突風が漏れてきて、モンスターの焼ける匂いも流れてきました。
武道家のシーダさんが、ちょっとだけヨダレを垂らしました。
「意外にも、おいしいそうな匂いだ」
私はすかさずツッコミました。
「食べないでくださいよ、モンスターの肉って有毒なんですから」
「フグみたいに毒抜きしたら、案外いけそうじゃないか?」
「フグは肝を抜けばなんとかなりますが、モンスターは肉そのものが有毒です。諦めてください」
「なんだ夢がないな」
なんてバカっぽい会話をしているうちに、どうやら攻撃魔法による露払いが完了したみたいです。
帝国兵のみなさんが、私の肩を叩きました。
「君たちは一度、このルートから離れてくれ。これから一斉突撃を開始する」
「魔法のたいまつはどうするんです?」
「こうやって投げ込むのさ」
帝国兵のみなさんは、魔法のたいまつをモンスターの巣に投げ込んで、即席のかがり火みたいに使用しました。
光の量が桁違いに増えたので、モンスターの巣の全貌が明らかになりました。
さきほどの攻撃魔法で焼け落ちたモンスターの死体と、いまだに生き残っているモンスターの群れ見て、僧侶のレーニャさんが軽く腰を抜かしました。
「ひえっ! ここの巣にいるモンスター、図鑑でしか見たことないような強いやつばっかりじゃない!」
戦士のアカトムさんも、高レベルモンスターの群れを見て、舌を巻きました。
「魔王城の周辺に出現する高レベルモンスターだらけだね。もしユーリューがVITで新規ルート開拓の告知をしてなかったら、ボクたちだけでモンスターの巣に突入して、死んでたかも……」
……いやぁ、私の機転って、たまに重大な局面を乗り切るみたいですね。
これも私の唯一高いステータスである運のおかげでしょうか。
ちなみに生き残っていた高レベルモンスターと真っ先に戦いだしたのは、PMCのみなさんです。
「たとえ敵が魔王城周辺に出現するモンスターであっても、先制攻撃でダメージを与えてあるんだから、数で攻めれば勝てるぞ!」
おお、さすがですね。ただ戦い慣れているだけじゃなくて、大人数を指揮するのに慣れているんですね。
きっと帝国軍にいたころは、それなりに高い地位だったはずですよ。
PMCのみなさんの指揮能力のおかげで、それ以外の腕自慢の冒険者たちが、残り少ない高レベルモンスターたちに突撃を開始しました。
剣戟の音に、攻撃魔法の炸裂する音が、まるでお祭り騒ぎみたいに爆ぜていました。
これだけ激しい集団戦になると、いやはや我々完全に場違いですね。
せいぜい足を引っ張らないように、隅っこの岩場に隠れましょう。
ふれーふれーと戦うみなさんを応援していたら、抜け道の後ろから怪しい影が近づいてくることに気づきました。
「あっ、まずい! 我々の背後から、元々このダンジョンで自然湧きしていたモンスターたちが近づいてきましたよ!」
これだけ大切な戦いで、背後を突かれたら、戦線が崩壊するかもしれません。
武道家のシーダさんが、かっこいいガッツポーズを決めました。
「我らの出番だ! あいつらを止めるぞ!」
ええ、いくら私がレベル1の遊び人であっても、ここは踏ん張りどころだと理解していますよ。
*CMです*
シバーイ鮮魚店です。近年、フグを自己判断で調理して、猛毒で亡くなる方が相次いでいます。フグの調理は免許を持ったプロが行いますので、お客様は自己判断で包丁を通さずに、当社に持ち込んでください。




