第77話 久々にダンジョン配信するわけですが、その前に作戦会議
ひさびさにダンジョン配信することになりました。
映画の撮影から馬券勝負まで長くなりましたが、ようやくダンジョン配信系のネット小説らしい展開になりましたね。
なお配信に映したらマズいシーン(闇市とか、ガンギマリのトキさんが吸っていたモノ)が終わったので、画面をオンにしました。
急激に配信のコメント欄が活性化します。
『ようやく映像が出てきた』『ずっと映像禁止ゾーンだったわけだが、いったいどんなヤバイ場所で配信してたんだ……』『大丈夫なのかよ、そんなところで配信して』『大丈夫だろ、ユーリューは人生そのものがリスクだから』
なんですか、人生そのものがリスクって。
そりゃあ父親は指名手配されていますし、私自身もスリと置き引きで路銀を稼いだ時期がありますから、他人に誇れるような人生を送っちゃいませんけどね。
まぁいいでしょう、視聴者が増えてくれるなら。
現在の同時接続数は600人前後です。映像を切っていた割には、結構多いじゃないですか。
戦士のアカトムさんいわく「衛兵隊に協力して、内通者の逮捕に協力したことが話題になってるみたいだよ」みたいです。
へー、たまには良いことをやっておくもんですね、視聴者が増えるんですから。
でもまぁ、たまたまですよ。
うちは勇者パーティーみたいな正義の味方ではないですから。
さて気持ちを切り替えて、ダンジョン配信で稼いでいきましょう!
おっと、その前に、前提条件の再確認をしておきましょう。
私たちが衛兵隊から受託したクエストは、前監督の逃亡先を確かめることであって、逮捕することじゃないんですよね。
つまり逃亡先を確定させたら、衛兵隊に通報するだけで、報酬がもらえます。
「というわけで、前監督が本当に潜伏しているかどうか確認するために、ダンジョンに潜るわけですけど、我々弱小パーティーですからね。どうやってモンスターを回避するのか考えておかないと」
僧侶のレーニャさんは、ぱらりとダンジョンの地図を広げました。
「ここのダンジョンの地図って、普通に冒険者ギルドで配布されてるのよね。なんでかしら?」
戦士のアカトムさんは、ダンジョンの地図を眺めて、ふーむと唸りました。
「公的に地図が配られてるってことは、とっくの昔に踏破済みってことだね。つまり宝箱は全部空っぽってこと。ただしモンスターは自然に湧くから、経験値稼ぎとか、ダンジョンに潜るための練習に使われてるみたい」
武道家のシーダさんは、こくりと首をかしげました。
「踏破済みでも、モンスターは湧くんだろう? ならどうして前監督は普通の人間なのに、ダンジョンに潜っても死なないんだ?」
なぜ前監督が死んでいないか? いくつかのパターンが考えられます。
1、実は隠れた実力がある。
2、金さえ出せば、どんな悪人でも護衛してくれるタイプの傭兵を雇っている。
3、ダンジョンの構造を熟知しているから、モンスターを避けながら移動できる。
個人的には3のパターンが現実的だと思います。
っていうか、前監督って何者なんでしょうか。
ちなみに内通していた衛兵隊の受付は、前監督の正体を知らないみたいです。
ちょっと謎めいてきましたねぇ。
前監督の正体に関しては、捕まえてみないことには、わからないかもしれません。
まぁ捕まえるのは私たちの役割ではないので、とにかくダンジョンが前監督の潜伏先なのかどうか確定させましょう。
「いくら地図があっても、私たちは弱小パーティーなんですから、わざわざダンジョンに突撃する必要はないと思うんですよ。ダンジョンの出入口でキャンプして、前監督が水と食糧を切らして外に出てくるのを待ちましょう」
僧侶のレーニャさんが、ぱちんっと指を鳴らしました。
「名案じゃない。楽な手段があるなら、無理しないほうがいいに決まってるわ」
戦士のアカトムさんは、VITの検索機能を使って、前監督が潜伏するダンジョンの情報を調べました。
「他のダンジョン配信者たちも、ここのダンジョンにぼちぼち潜ってるみたいだし、いざとなったら彼らに手伝ってもらえるかもね、前監督の捕縛」
武道家のシーダさんは、投げ縄をぶんぶん振り回しました。
「モンスターを相手にするより、人間を相手にするほうが得意」
やけにやる気満々ですが、あくまで私たちの役割は、前監督の潜伏先を確定させることであって、逮捕することじゃないですから。
無理をせずに、ゆっくり確実に待ち伏せしましょう。
というわけで、来週からはダンジョン配信(ただし出入口で待ち伏せ)開始ですよ。お楽しみにー。
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