第66話 映画の撮影をしながら逃亡した前映画監督を追跡せよ
さて首謀者である前映画監督が、クーデターを利用して逃亡してしまったわけですが、この件に関して衛兵隊の偉い人からお言葉がありました。
「首謀者の共犯がうちの隊員だったということは、我々だけで捜査すると犯人に情報が筒抜けになるかもしれない。そこで君たちに新しい依頼だ。前映画監督の逃亡先を調査してくれ。もし仕事に成功したら、ゴールド袋をやろう」
この街の衛兵隊は、隊員の身辺調査を開始するみたいですね。
いくら借金が理由とはいえ、犯人と共謀する隊員が出てきたなら、同じような汚職があるかもしれないと考えたわけです。
それが終わるまでの間、我々冒険者で犯人の追跡というわけですよ。
やってやろうじゃないですか。レベル1の遊び人でも、モンスターと戦うわけじゃないなら、ちゃんと役立てますよ。
と思っていたんですが、ある意味面倒な条件が追加されました。
映画のスポンサーたちが、とんでもない要求をしてきたんです。
「映画は必ず上映する。そのために、君たちが前映画監督を追跡する過程を映画本編として撮影するんだ。すでに撮影済みの場所とくっつければ、斬新な刑事ドラマになるだろう?」
ええ……? そんな裏技みたいな映画、本当に人気出るんですか……?
いやまぁ前映画監督を追いだしたの他でもない私ですから、強く反論できないんですけど。
というわけで、私たちは映画を撮影したまま、前映画監督――略して前監督を探すことになりました。
「刑事役の口調を維持したまま人探しをするのは困難ですし、二人だけで犯人を追跡するのはシンプルに危ないですから、元ネタを無視して四人で行動しましょう」
僧侶のレーニャさんは、トレンディなサングラスをくいくいと揺らしました。
「四人で一組の刑事ってわけね。あたしも銀幕で大暴れするわよっ!」
戦士のアカトムさんは、肩パッドの入ったスーツをもぞもぞ動かしました。
「ずっと思ってたんだけど、なんでこの衣装、肩にパッドが入ってるんだろう?」
武道家のシーダさんは、スーツの内ポケットからヌンチャクを取り出して、びゅんびゅん振り回しながら、私にたずねました。
「人間の犯人なんて、このヌンチャクでイチコロだ。それで、どこから調べるんだユーリュー?」
ふーむ、前監督が撮影現場から盗み出したもので利益を得ているとしたら、盗品を換金できる非合法の場所を利用しているはずなんですよ。
そこを調べれば、彼の逃亡先に関連したヒントが手に入るはずです。
ですが、私はこの街における盗品を扱うスポットを知らないので、まずはそこから調べないといけません。
うらびれた酒場を調べるのがよさそうですね。ああいう場所に、怪しい情報が集まるわけですから。
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