第60話 はい、ボスキャラ撃破ですよ、感動しましたね????
私は、地面の下にある虚無空間にもぐりこんでいるので、あらゆる地形を無視して、ダンジョンの最深部にたどりつきました。
四天王の間です。
ただのザコモンスターであるはずのホブゴブリンが、なんかちょっと調子こいたマントを羽織って、王座に座っていました。
なるほど、本当に最近の魔王軍は人材が枯渇しているから、ザコモンスターでも名乗りを上げれば四天王になれるんですね。
ただし私はレベル1の遊び人ですから、普通に戦ったら、普通に負けてしまいます。
では、どうやって四天王を【倒す】かというと、座標データの仕様を利用します。
私は、地面の下にある虚無空間をすーっと通り抜けると、四天王ホブゴブリンが座っている王座に真下に移動しました。
次に真っすぐ上に向かうように、虚無空間を抜け出すと、私はまるでホブゴブリンと一体化したかのように座標が重なりました。
その瞬間、ホブゴブリンは座標データを上書きされて、ぱっと人体消失マジックに巻き込まれたみたいに消滅しました。
はい、クエストクリアです!!!! みなさんやりましたね!!!!! 感動のエンディングですよ!!!!
うちの配信のコメント欄が阿鼻叫喚の地獄絵図になりました。
『なにも感動しないクエストクリアじゃねぇかwwww』『一番盛り上がるボスキャラとのバトルシーンがないんだが?????』『えっ、四天王ホブゴブリンはどこに消えたんだ?』
というわけで、私はゆっくりユーリューになると、なにが起きたのか解説していきます。
「これは座標データと人物データの保存性を逆手に取ったグリッチです。ホブゴブリンは死んでいませんが、四天王としては死んでいます」
美少女武道家のシーダさんも、ゆっくりシーダになると、おまんじゅうみたいな生首で、くいっと首をひねりました。
「なにがなんだかわからないぞ、ゆっくりユーリュー。ホブゴブリンはどこに消えたんだ?」
「四天王になる前の配置に戻りました。つまり、このダンジョンのどこかにいるでしょう。それを物語の内部判定で表記すると、ホブゴブリンはザコモンスターに戻って、四天王が敗北したという扱いになります」
ホブゴブリンが生きている証拠ですが、私の経験値が増えていないことから明らかですね。
もし私みたいなレベル1の遊び人がボスモンスターを倒したら、大量の経験値を取得して、あっという間にレベルアップするはずですから。
ゆっくりシーダさんは、納得いかなそうな表情で、私に軽く体当たりしました。
「そもそもなんで四天王のホブゴブリンは、王座から他の位置に動いたんだ? ユーリューは体当たりすらしてないじゃないか」
「座標データの法則性です。それぞれの登場人物には独自性が設定されていて、座標データが重ならないようになっています。では万が一重なってしまった場合、物語がどんな対処をするかというと、初期設定の座標に戻すんですよ。ほら四天王からザコモンスターに戻ったでしょう?」
「ふーん、つまりゆっくりユーリューは頭がおかしいということだな」
「相変わらず、ひどいことを言いますねぇ……まぁいいでしょう。とにかくこれでクエストクリアです。四天王クエストは、クリア報酬も結構多いので、ありがたい収入になりますね」
「おや、想像しているより獲得ゴールドが多いんだが、サブ目標もクリアになってないか?」
「その通り。なぜなら物語の内部判定としては、PMCはクエストを受注していますが、四天王とは交戦せず。それでいて主な契約主であるお坊ちゃんパーティーはクエストをクリアしたので、お坊ちゃんパーティーが四天王を倒した判定になりました」
ほら、私が最初にいったように、お坊ちゃんパーティーが四天王を倒したかのように偽装することが、応援配信RTAとしては最短時間になったでしょう?
うちの配信のコメント欄も困惑ぎみです。
『わけがわからん…………』『壁抜けがすごいことだけはわかった』『こんなバグとかグリッチを配信でやったら、対策されるんじゃねーの?』
ははは、最後のコメントが真理でしょうね。おそらく神様はバグを直してしまうので、同じ手はもう二度と使えないでしょう。
まぁいいんですよ。おかげさまで四天王クエストをクリアして、たっぷりゴールドが手に入ったので。
どれぐらい稼げたのかは、次回の更新でいつものリザルトをやるので、それをお待ちください。
**CMです**
皇帝の王座を設計したのが、パラウス家具店だ。一般家庭向けの椅子も設計しているし、業務用の机も作っているぞ。もし気品のある頑丈な家具が欲しければ、うちに注文してくれ。
たまに魔王軍も発注をかけてくるんだが、お前ら人類の敵のくせに、いったいなにを考えてるんだ?




