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レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第一章 まだまだダンジョン配信者として駆け出しのころ

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第52話 配信者特有の悩み

 クエストをクリアしたころに、ちょうど性格反転キノコの影響も消えて、私たちは正常な状態に戻りました。


 すでにクエストをクリアした報酬が支給されていて、通常報酬は【薬草、マジックポーション、50ゴールド】のセットですね。


 ここに1+1=2でゲットした【小麦粉、砂糖、塩】が入るわけです。


 うーん、まさに駆け出しの冒険者向けのアイテムセット。たしかに生活の役に立ちますが、冒険の報酬として考えるとおいしくないです。


 なお報酬の中身には、元学長の魔人の手紙が入っていました。


『もしこの報酬を少ないと感じて、それが人生において大きな損失だと思ったら、いますぐ冒険者をやめて働きなさい』


 いきなり真面目なアドバイスしないでください!


 いやまぁ元々学長をやっていた人だから、若者に真面目なアドバイスをして当然なんですけどね。


 それはそれとして、通常のクエスト報酬が少ないと感じたから、ダンジョン配信始めたわけですし、このあたりはどれだけ広告収入を得られるかでしょう。


 なんてことを考えながら、アスレチック渓谷を出ようとしたら、出入口付近で、因縁のあるパーティーとばったり遭遇しました。


 お色気おパンツ配信の元祖、吟遊詩人のジェナーディです。


「誰かと思ったら、腹黒の遊び人ですわね。まさかまだレベル一のままだなんて」


「そういうあなたは本性を隠したぶりっこ吟遊詩人じゃないですか。私と同じぐらい性格悪いのに、配信画面では純真無垢な良い子を演じてるんですね」


 私とジェナーディの視線がバチバチと交差して、一触即発の雰囲気になりました。


 しかしジェナーディのパーティーは雰囲気が悪いらしく、いがみあった私とジェナーディを無視して、さっさと町に帰ってしまいました。


 おや、なんだか様子がおかしいですね?


 ジェナーディも、はぁと大きなため息をつくと、手ごろな岩に腰かけました。


「配信外でトラブル起こしても、一ゴールドの儲けにもなりませんものね……」


 いやたとえ配信中でもトラブルは起こさないほうがいいでしょう、と思うんですが、おパンツ配信をやるようなパーティーですから、その辺の常識は違うんでしょう。


 それはさておき、ジェナーディのパーティーになにがあったんでしょうか。


「もしかして、メンバー同士でケンカしたんですか?」


「発言の自由がないことがストレスになって、配信後は毎度こういう調子ですわ」


「ジェナーディたちは、国と教会がスポンサーですからね。下手な発言をすると契約解除どころか、逮捕されちゃいますから」


「すでに逮捕のプレッシャーに耐えきれなくて、パーティーメンバーが二人交代しましたわ。そうなってくると、離脱したメンバーが持っていた固定客も移動してしまうので、うちの配信はお客さんが安定しないんですの」


 これこそがジェナーディの配信でお客さんが以前より減った理由でした。


 パーティーを脱退した可愛い女の子と一緒に、その固定客が離脱しちゃうんですね。


「たくさん儲かることより、発言の自由を選ぶ人もいるってことですか」


「貯金が増えたのに、それを使う前にメンタルが崩壊してしまったら、きっと意味はないんでしょうね」


 うーむ、難しい問題ですねぇ。


 もし国と教会がスポンサーでなければ、彼女たちの発言がチェックされることなんてないんですけど。


 かといってお色気配信をやるためには、国と教会の特別許可がないと、わいせつ罪で逮捕されますからね。


「ジェナーディは、お色気配信以外の路線は模索しないんですか?」


「それは若さを失ってからやるつもりですの。せっかく男たちは若い女に弱いんですから、そこを利用して稼いでおきたいじゃありませんか」


 ほほぉ、やっぱりジェナーディは手ごわいですねぇ。自分の強みと賞味期限を理解しているわけですし。


 もし彼女みたいな打算的なリーダーが、お色気路線を捨てて、バラエティ路線に切り替えたら、私たちのお客さんなんてあっという間に奪われるでしょうね。


 そうなる前に、私たちも精力的にダンジョン配信をして、たくさん固定客を作っておきませんと。


「それじゃあ、またいつか会いましょう。ギスギスお色気パーティーのリーダーさん」


 私が別れの挨拶をしたら、ジェナーディはわざとらしく肩をすくめました。


「あなたに同情なんてされたくないので、いっそいまの裏話は広めてもらって結構ですわ」


「そんなもったいないことしませんよ。いつかあなたがこっちの路線にきたとき、コラボ配信したいですからね」


「コラボ配信とかいって、うちの固定客を横取りしたいだけでしょうに」


「ありゃバレた」


 こうして私とジェナーディは軽く握手を交わしてから、アスレチック渓谷を離れて町の冒険者ギルドに戻ることになりました。

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