表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第一章 まだまだダンジョン配信者として駆け出しのころ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/128

第31話 ドートンヴォーリ川

 みなさんお待ちかね、勇者エリアフの生い立ちについてインタビューしていきます。


 彼は台車を利用して、石材を運んでいるので、その作業を邪魔しないように、VITのマイクを向けました。


「勇者エリアフが人格者に育った秘訣はなんですか?」


 勇者エリアフは、ガラゴロ台車を押しながら、爽やかに答えました。


「人格者だなんて大げさだ。ただ俺は自分なりに魔王退治ってやつと向き合ってるだけだよ」


 まるで太陽みたいに真っすぐで明るい答えを浴びて、私の汚れた魂が消し飛んでしまいそうでした。


 それでも、うちの配信にぶらりと訪れた勇者ファンをゲットするために、負けじと

ドキュメンタリーを作っていきますよ。


「謙遜よりも、具体的な背景を知りたいですね。勇者がどんな場所で育って、どんな人生を歩んできたのか」


「両親は早々に亡くなってしまったんだが、育ての親である剣術の師匠がすごい人でね。その人に厳しく育てられたんだ。武器の使い方から、心の使い方まで」


「たしか昔読んだ新聞によれば、剣聖と呼ばれる剣術の達人に育てられたとか?」


「そう、剣聖カシューだよ。VITが普及してからは、野球観戦おじいさんになっちゃったけどね」


 以前、公共放送チャンネルには競馬中継があることを説明しましたが、あれと同じぐらい人気の番組が野球中継です。


 どうやら剣聖みたいな偉い人でも、野球中継は楽しいみたいですね。


 うちの母親も野球中継が好きですし、なんなら指名手配犯の父親も野球ファンですよ。


 そのせいで野球に興味のない私ですら、どんなチームがあるのか覚えてしまいました。


 となれば、ドキュメンタリー番組における一つまみの清涼剤として、応援チームの質問も許されるでしょう。


「ちなみに剣聖カシューの応援チームはどこなんですか?」


「ハーンシーン・ダイギャース」


「うわっ、ガラ悪そう……」


「そう思われても仕方ない客層ではあるんだけどさ、師匠は本来ああいうノリが好きなんだよ。ダイギャースが優勝したときだって、ドートンヴォーリ川に飛び込んだし」


 えっ、よりによって剣聖が川への飛び込みやったんですか?


 皇帝がわざわざ『ドートンヴォーリ川の飛び込みは危険だからやめようね』って通達を出したのに。


 コメント欄のお客さんたちも、大騒ぎです。


『皇帝のお触れで、ドートンヴォーリ川への飛び込みはやっちゃいけないはずだよな』『おいおい、配信で言っていいのか、その情報』『でも剣聖カシューだし、皇帝も怖くないのかもよ』


 いやぁ、コメント欄の雰囲気がおかしなことになってきましたね。


 皇帝に堂々と逆らうなんて、帝国領土内では御法度もいいところですし。


 しかし勇者エリアフは、あんまり気にしていませんでした。


「むしろちょうどいい機会だったんじゃないか。うちの師匠、剣聖なんて肩書きを捨てて、普通のおじいさんをやりたいみたいだし」


「いや、普通のおじいさんは、皇帝のお触れを無視して、ドートンヴォーリ川に飛び込まないと思うんですよ」


「たとえ皇帝のお触れがあっても、球団が優勝したときの喜びは止めらない。それが人間ってものさ」


 いや、その理屈はおかしい。


 と言いたいところなんですが、うちの両親もそうなんですけど、応援しているスポーツチームが優勝すると、心のブレーキが壊れるみたいなんですよ。


 うーん、勇者エリアフも、その師匠も、人間臭いところがあるってことかもしれませんね。


 勇者の生い立ちがわかったので、彼へのインタビューはいったん切り上げましょう。


 せっかくドキュメンタリーをやっているんですから、勇者パーティーを支えるスタッフにもインタビューするべきですよ。


 というわけで、次回の更新からは、スタッフのみなさんに取材していこうと思います。こうご期待!


 ***CM****


【剣聖カシューの剣術道場・門下生募集中】拙者は、虎式古流剣術の正統後継者だ。剣術も大事だが、心の成長を指南している。かの勇者エリアフも、この道場から巣立っていった。


 ああそうだ、ハーンシーンファンは大歓迎だ。野球中継を観戦できるように大型VITモニタを道場にセットしてあるから、応援グッズを持ってくれば一緒に応援できるぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ