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レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第一章 まだまだダンジョン配信者として駆け出しのころ

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第20話 秘技・泣き真似、破れる

 勇者パーティーの盗賊は、かつて私が当たり屋稼業をやって、お金をしぼり取った人でした。


 しかも本人が目の前にいて、私が犯人だとバレているわけですね。


 ぴ、ピンチすぎる。


 このままだと衛兵に通報されて、マジで逮捕ですよ。


 ……いやでも物語的には、このまま監獄編に突入して、そこで悪いやつらと知り合って、組織犯罪に染まっていく私もPV的においしいかも……。


 って、バカな妄想してる場合じゃないんですよ。


 ダンジョン配信をテーマにした物語なんですから、逮捕されたらおしまいなんです。


 なんとかして、このピンチを切り抜けないと。


 よし、こうなったら、泣き真似で逃げきるしかない!


 私は、以前、巡回にやってきた衛兵相手に使った手――相手に見えない角度で目薬をさして泣いたフリ作戦を実行しようとしました。


 しかし、勇者パーティーの盗賊が、目にも止まらぬ速さで、私の側面に回り込んできて、目薬を奪っていきました。


「目薬を使って泣いたフリをしようだなんて、オレ様のスピードの前では通用しないぜ。絶対にな」


 くっそー、泣き真似が通用しなかったこともムカツキますけど、それ以上にこいつの性格がムカツキますね。


 ちょっと見た目がカッコいいからって、いい気にならないでほしいですね。


 あっ、ムカツクという感情で思いだしました。


 こいつがあまりにもムカツクやつだったから、当たり屋をやっても心が痛まないと思って、ターゲットにしたんでした。


 そんなことを思い出したところで、逮捕の危機は解消されません。


 もはやこうなったら、素直に謝るしかないですね。


「すいませんでした。あのときの私、今以上にお金がなかったので、つい当たり屋をやってしまって」


 腹黒の私ですが、珍しく真面目に謝罪しました。


 あのころ本当にお金がなくて、しかもアルバイトの面接に落ちまくる日々だったので、背に腹は代えられなかったんですよね。


 というのは半分ぐらい言い訳です。


 私はそれなりにサバイバルスキルもあるので、野生動物を狩って、肉、毛皮、爪なんかを売りさばけば、どうにかなったんですよ。


 しかし、いかにもお金を持っていそうなやつが憎くなったので、当たり屋を実行したわけですね。


 はー、しかし失敗しましたね。まさかターゲットに選んだ対象が、勇者パーティーの盗賊だったとは。


 そりゃお金持ってて当然ですよ。彼ら実力があって人気者だし。


 そんな勇者パーティーの盗賊ですが、目薬をお手玉みたいに転がしながら、こんなことを言ってきました。


「金がなくて犯罪に走るのはよくある話だろうけど、なんでそこで当たり屋って方法を選んだんだ? せめて置き引きとか、スリみたいな、安全な犯罪に手を出すべきだと思うんだが」


「逆です。あなたがスピード自慢で、動体視力が卓越していることはわかっていました。となれば、正攻法の盗みは成功しないから、精神面に揺さぶりをかけるために、当たり屋をやるのがベストだと判断したんです」


「ほぉ、やるねぇ。ちなみに、俺様からしぼり取った金の使い道は?」


「全部路銀ですよ。水と食べ物は野宿で補えても、それ以外の費用は現金が必要ですから」


 本当のことです。冒険者になるための専門学校があるんですけど、そこにたどりつくまでの路銀として使いきりました。


「ふーん、ならいいさ。見逃してやる。その代わり、お前のアルバイト代はゼロな」


 よかった、許してもらえたみたいです。


 ……ん? いま、アルバイト代ゼロっていいました?


 それってつまり。


「私たち採用ですか。ダンジョン配信を補助するアルバイト」


「他の女はともかく、お前はタダで使えるんだぜ。当たり屋の件は見逃してやるから、馬車馬のごとく働けよ、レベル1の遊び人」


 あー、やっぱりこいつムカツキますね。


 常識的に考えれば、その条件で働くしかないんですが、私はこいつがムカツクから、一つぐらい言い返しておこうと思いました。


「そんなケチなこといわないで、罪を見逃すついでに、アルバイト代を出してくれてもいいじゃないですか」


 盗賊の彼は、私の鼻先に指を押し当てながら、こう言いました。


「図々しいなぁ……衛兵呼ばれないだけありがたいと思えよ、腹黒女」


「鼻を触らないでください。いくら勇者パーティーだからって、女の子に許可なく触るなんて…………ん、あなた、私が女だって、ちゃんとわかってるんですか?」


 私のことをよく知らない人間は、ほぼ確実に男の子だと間違えるんです。しかし彼は一発で女だと見抜きました。これはすごいことですよ。


「匂いを嗅げば性別なんてすぐにわかるぜ、盗賊の鼻を舐めるなよ」


「気持ちワルっ……女の子の匂いを嗅ぎ慣れてるなんて……」


「な、なんて誤解を招くようなことを!」


「へー、誤解なんですかぁ、本当ですかぁ? どうせ勇者パーティーは女の子にモテまくるから、遊び放題なんでしょう?」


「だから誤解を招くようなことを大声で言いふらすなってば……! ダンジョン配信の広告主を怒らせたら収入が減るんだよ……!」


 ふーん、なるほど、そこが現在の勇者パーティーの弱点ですか。なら徹底して攻撃させてもらいましょうか。


「気持ち悪い、気持ち悪い、あー気持ち悪い。勇者パーティーの盗賊は女たらしで、女の子の体臭を嗅いで興奮する変態さんでーす」


「このやろう、いわせておけば!」


「なんですか、私の鼻を勝手に触った変態のくせに!」


 私たちが口論を始めたら、それを仲裁したのは、なんと勇者でした。


 勇者がどんなやつなのかは、次回のお楽しみに。

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