表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第二章 そろそろダンジョン配信者が板についてきて、お金儲けもぼちぼちやれるようになったころ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/128

第123話 故郷に錦を飾りたいところですが、そんなことより金銭交渉です

 私の実家がどこにあるかといわれますと、首都のお隣である港町にあります。


 街としての規模は中規模であり、以前訪れた商業都市と比べたらかなり小さいですね。


 ただし首都の近くということもあって、軍港がメインの港なので、街中には水兵がぞろぞろ歩いていました。


 というわけで、うちの地元の主な商売は、水兵相手の飲食業ということになります。


 自然と水商売も増えますよ。綺麗なお姉さんが路上でキャッチしています。ぼったくりバーもあるので要注意ですね。


 もし酔っ払った水兵が暴れ出したら、そいつを鎮圧する腕力が必要なので、地元の男たちは常に肉体を鍛えています。


 うちのお父さんが、ムキムキマッチョマンだったのは、そういう理屈ですね。


 さてお父さんの話題に触れたので、指名手配犯の娘である私の立場についても触れておきますと、実は不細工な顔のおかげで助かっています。


 ――指名手配犯には『娘』がいるらしい。


 はい、そうです。私の顔は不細工すぎて男と勘違いされるので、指名手配犯の『娘』として認識されないため、とくに迫害されてないんですよね。


 しくしくしく、こんな形で役立ってほしくなかったですねぇ、私の不細工な顔面。


 まぁいいんですよ。実際不細工のおかげで助かっているんですから。


 そんなことより私の実家である洋菓子店に到着しました。


 お母さんが経営していまして、街の中心地にあります。


 お店の見た目ですが、ありふれたレンガ造りですね。


 赤くて角ばっていて、色鮮やかなデコーレションが施されているので、なんだかチョコレートを重ねたお菓子の家みたいです。


 テイクアウト専門の業務形態ですから、店内に客席はないんですけど、固定客がたくさんいるので、予約待ちで大変なことになっています。


 今日もひっきりなしに予約していた人たちが受け取りにやってくるわけですね。


 もはや修羅場ですよ。お菓子の生産が予約時刻に間に合わないとクレームの嵐になるわけですから。


 洋菓子店って聞くと、なんだかほわほわした雰囲気のお洒落なムードを思い浮かべるでしょう?


 でも実際は材料運ぶために力仕事になりがちだし、朝早く起きて仕込み作業しないといけないし、食中毒対策で衛生に気をつけないといけないし。


 おまけに人気店となれば休む暇なんてないわけですよ。


 そんなお店を切り盛りするとなると、お母さんは強そうに感じると思います。


 ところがびっくりするぐらい細いんですよねぇ。突風が吹いただけで骨が折れるじゃないかって心配になるぐらいに。


「いらっしゃいませ~、こちらがご予約のチョコレートケーキですぅ、ありがとうございましたぁ~」


 という感じで接客するわけですが、その声は蚊の鳴き声みたいに小さいです。


 うーん、我が母親ながら、この人これだけ貧弱なのに、どうやって店舗持てるまでお菓子職人をやれたんだろうなぁと不思議になります。


 そんな感想を思い浮かべながら、予約受け取りのお客さんの波が途切れたタイミングで、私はお母さんに話しかけました。


「お恥ずかしながら、実家に戻ってまいりました」


「あらまぁ、ついに洋菓子店を継ぐ気になったのねぇ。冒険者なんて絶対に向いてないから、早くお菓子を作ったほうがいいわ」


 まぁ冒険者向きじゃないのは確かでしょう。


 もし私の肉体が、お父さんに近い性質を持っていたら、きっといまごろムキムキマッチョの凄腕ファイターだったはず。


 でも悲しいかな、容姿がお父さんに近い性質になって、肉体強度がお母さんに近い性質を持ってしまった結果、ごらんのとおり男みたいな顔つきの貧相な女になりましたとさ。


 遺伝子のやつ、ろくな仕事をしないですね。


 まぁいいでしょう、すでに生まれてしまったんですから、そこにグチグチ文句をいっても始まらないですから。


 そんなことより、お仕事の話をお母さんに吹っかけましょうか。


「いえ、まだ冒険者は続けますよ。今日は消化済みのイナズマストーンを買い取ってほしくて戻ってきたんです」


 お母さんの顔は、笑っているのに笑っていない表情になりました。


「一個5000ゴールドでよければ買い取るわよ」


「安すぎるでしょう!? 相場の半額ですよ!?」


「お母さんねぇ、ちゃんとVITで相場の変動をチェックしてるの。最近首都近辺で価格が暴落したのよね。あなた、さてはなにかやったでしょう?」


 む、むむぅう……鋭いですねぇ。


 この鋭くてめざといところが、細くて弱い母親が、独立してお店を持てた理由ですよねぇ。


 しかも娘が騒動を起こしがちなのも、ちゃーんと見抜いています。


 っていうか、お父さんが相場通りの価格で買い取ってくれたのは、なんだかんだ娘に甘いからですねぇ。


 お母さんは娘に甘くない……。


 へこたれている場合じゃないです。価格交渉していかないと。


「ドラゴンストーンが近隣で出回るようになったのは、我々がとある難関クエストを成功させたからです。というわけで、クエスト成功のお祝いと、親子関係のよしみということで、相場通りの1万ゴールドで買い取ってくれませんか?」


「タダじゃ無理ね。働いていきなさい。お友達も一緒に」


 年中繁忙期の洋菓子店で雑用開始ぃ!


 ある意味いつも通りの私たちってこと、次週は洋菓子店でアルバイト編です。


 *CMです*


 政府広報です。悪質キャッチにご用心!


 言葉巧みにお店に誘い込んで、ビール一杯で高額請求。はい、それ悪質キャッチです。


 もし被害にあわれましたら、すぐお近くの衛兵詰め所にご連絡ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ