表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第二章 そろそろダンジョン配信者が板についてきて、お金儲けもぼちぼちやれるようになったころ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/128

第122話 木を隠すには森の中

 帝都の競馬場にやってまいりました。


 でっかい競馬場ですね。お馬さんが十八頭横に広がって直線を走れるぐらいのコースを抱えていますよ。


 トレセンことトレーニングセンターがすぐ隣にあるので、そちらで営業しましょう。


 本日の我々の目的は賭博ではなくて、厩舎関係者にイナズマストーンを売りつけることですから。


 といっても、そもそも今日は開催日じゃないので、レースやってないんですけどね。


 僧侶のレーニャさんは地団太を踏むほど悔しがっていました。


「せっかく帝都までやってきたのに、開催日じゃないだなんて!」


 …………開催日じゃなくてよかったですね、どうせ盛大に外して絶叫していたんでしょうし。


 まぁいいんですよ、戒律違反の不良僧侶のことは。


 とにかく営業です。


 トレセンに行商人枠で入りますと、関係者たちが集まる休憩所にお邪魔しまして、イナズマストーンを掲げました。


「厩舎関係者のみなさま、消化済みのイナズマストーンはいかがでしょうか」


 調教師らしき高齢男性が、じーっと私を見ました。


「馬の口に入れるもんだぞ、怪しいやつから買えるはずないだろ」


 そりゃそうですよねー、もし私があなたたちと同じ立場だったら、信用できないやつから医薬品を買わないですからねぇ。


 そうそう、例の仕立て屋が売却先として貴重だったのは、手配師の仲介があって一定の信用を得られたからですし。


 でも仕立て屋はジェナーディに先を越されてしまったし……。


 むかつくー! あの色ボケ吟遊詩人めが!


 ふぅふぅ、落ち着け私、突発的な怒りで取り乱している場合じゃないんですよ。


 なんとかして厩舎関係者にイナズマストーンを売らないと、我々赤字になりますからね。


 ペスカータン山から帝都まで、あらゆる移動費がかさんでいますから。


 とはいえ、困りましたね、競馬サークルは飛び込み営業が通用する業界じゃないですからねぇ。


 誰か知り合いでもいればいいんでしょうけど。


 都合よくいないでしょうか、私の知り合いが。


 …………あ、すぐそこにいた。


 いや、そうじゃなくて、いなかったことにしたほうがいい人物がいた。


 っていうか、なんでバレてないんでしょうか。


 指名手配犯が堂々と厩舎スタッフのジャンパー着て働いているんですが?


 そう、私のお父さんです。


 元帝国海兵隊の大佐で、海軍の少将を殺害した罪で指名手配中ですねぇ。


 殺害、なんて物騒な単語のせいで、凶悪犯に感じますけど、実態は違います。


 海軍の少将は辺境部族を虐殺しようとしましてね。


 その命令をお父さんが拒絶したら、少将の直属部隊と戦闘になりまして、その結果殺害することになったんです。


 正当防衛みたいなもんですね。


 でも相手はお偉いさんで、しかも貴族だったものですから、正当な法廷に立つ権利すら与えられなくて、いきなり死刑求刑ですよ。


 だから逃亡したんです。かつての部下たちと一緒に。


 という感じのエピソードがあるんですけど、まぁお父さんの見た目からはそんな悲劇性が感じられないわけですよ。

 

 身長二メートル、体重百五十キロ、体脂肪率七パーセント。


 体型がゴリラで、顔がライオンですよ。


 こんな目立つやつが、普通に集団に交じって働いている。それも首都のど真ん中で。


 非常識もいいところでしょう。


 私はパーティーメンバーと視聴者にトイレに行くと嘘をついて、VITの配信画面から消えますと、お父さんにこっそり声をかけました。


「お父さん、なんで指名手配されてるのに、普通に働いてるんです……?」


 お父さんは、ごくごく自然体で微笑みました。


「こそこそすると逆効果だ。こういうときは普通に働いたほうがバレない。ほら木を隠すには森の中っていうだろう?」


 いやまぁたしかに帝都は人口過密地帯だから隠れやすいでしょうけど。


 でもお父さん、あなたその派手な顔つきと体型で目立たないと思ったんですか?


 絶対バレるでしょう、こんな漫画の格闘家キャラみたいな体型したやつ。


 うちのお父さんだけ、グラップラー〇〇の登場人物みたいですもん。


 …………まぁいいでしょう。実際バレてないみたいですし。


「そうだ思い出しました。皇帝からメッセージを預かってるんですよ。『ムーンライトセレナーデ』とかなんとか」


 お父さんは、ライオンのたてがみみたいな髭をぽりぽりかくと、私の頭をこんこんと二回ノックしました。


「俺の育てたとおり、ちゃんとギャンブルに詳しくなったんだな」


「ええ、おかげで冒険者としての職業は遊び人です」


「素晴らしい」


「レベル一で弱いですけどね」


「完璧だ」


「……? なにが完璧なんです?」


「そのうちわかるさ。それじゃあ、お父さん、これから仕事あるから、またそのうち会おう」


「その前に、イナズマストーン買ってくれませんか?」


「トレセンのホースクリニックが一つ欲しがってたから、一つだけ買ってやろう。だが残りはいらない」


「残り二つなんですが、なんかツテとかないですか?」


「一つは実家に売ればいいだろ。お菓子の店でも使うんだし」


 あ、そうでしたね。洋菓子店でも使うんでした。


 というわけで、実家の洋菓子店に向かいましょう!


 

 *VITの前にいないので、CMは流れませんよ。まさか指名手配犯を画面に映すわけにもいかないですし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ