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レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第二章 そろそろダンジョン配信者が板についてきて、お金儲けもぼちぼちやれるようになったころ
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第118話 皇帝の悪口を言うと逮捕される時代ですが、私は元気です

 二日ほど乗合馬車に揺られまして、やってまいりました華の帝都。


 バカみたいにデケぇー都市ですよ。馬がないと移動がめんどうになるぐらい都市内の道路が長いんです。


 お店の数も人口もすべての数字が桁違いですからね、便利だし華やかだしお金の匂いもするわけですが、相応に危ないところでもあります。


 犯罪の件数だって多くなりますし、悪い誘惑だってたくさんあります。


 カジノとか、競馬場とか。


 うちのパーティーの場合、競馬場があるせいで、僧侶のレーニャさんがいつもの症状を起こしました。


「競馬場はリアル観戦にかぎるわ! じゃんじゃん勝っちゃうわよ!」


 まるでニンジンに釣られた馬みたいな動きで競馬場に突撃しようとしたので、パーティーメンバーたちで引っ張って連れ戻しました。


「まずは取引からですよ。それが終わってから、自由時間でギャンブルしてください」

 

「そんなモタモタしてたら、おもしろそうなレース終わっちゃうじゃん!」


「まったくもう、なんのために帝都に来たと思ってるんですか」


「競馬場で遊ぶため!」


 はいはい、まずは取引ですよ、取引。


 というわけで、私たちは表通りを外れると、ちょっと薄暗い裏通りに入りました。


 都会の裏道は怖いですねぇ。


 日陰になっているところに犯罪者が潜んでいそうで。地元民であれば危険スポットもわかるんでしょうけど、我々田舎者は土地勘がないですから。


 しょうがないので、なるべく人通りの多いところを歩いて、身の安全を確保しつつ、数回の迂回を繰り返しながら、ようやく仕立て屋にたどりつきました。


 小さな店舗でした。


 いくら帝都とはいえ、こんな小さなお店が高価なイナズマストーンを四つも買い取れるんでしょうか。


 もしかして手配師ゴロンのやつ、紹介先を間違えたんじゃないでしょうね。


 ええい、こんな薄暗い道で立ち止まったままでいるほうが危ないので、とりあえずお店を訪問してみますか。


 ごめんくださーい、紹介状を持ってきたんですが、と言おうしたんです。


 しかし店員らしき人物は、私の顔を見るなり、すーっと店の奥に下がってしまいました。


 …………嫌な予感がするんですが?


 もしやこれ逃げたほうがいいパターンじゃないですか?


 犯罪組織の待ち伏せかなんかで、金目のモノが狙われているとか。


 ありえる話です。だって消化済みのイナズマストーンを回収するところを配信で流したんですから。


 うん、逃げましょう! さっさと表通りに戻ったほうがいいです!


 と思った矢先に、四方八方から衛兵たちが集まってきて、私に槍を突きつけました。


「逮捕だ、ユーリュー」「御用だ御用だ」「おとなしくお縄につけ」


 あ……あー、こっちのパターンですかぁ……!


 っていうか、どの罪状で逮捕でしょうか?


 みなさんご存じのように、私このパーティーに入る前、当たり屋とか置き引きとかやっていたので、普通に逮捕されかねないのですよね。


 すごいですね、ライトノベル系の物語の主人公が冤罪で逮捕されそうになるんじゃなくて、ガチで余罪があるっていう。


 配信つけっぱなしなので、視聴者に余罪がバレないように、それらしい演技をして無罪を訴えておきましょう。


「私、なにも悪いことしてないのに、なんで捕まえようっていうんです?」


 悪いことはしているんですが、証拠は残っていないはずです。


 物証がなければ逮捕できない……と言いたいところですが、これ中世時代の物語なので、普通に逮捕できます。


 いやぁ司法制度が皇帝の権力と直結する時代って怖いですねぇ。


 それはさておき、いまの私にとって避けなければならないことは、逮捕されて牢屋にぶち込まれることそのものじゃなくて、配信の視聴者を失うことですから。


 ひたすら冤罪だと訴えていきましょう。


 さて衛兵たちですが、私に槍を突きつけたまま、罪状を告げました。


「国家反逆罪だ。お前は皇帝陛下に逆らった罪で逮捕される」


「ええっ!? 会ったこともない人に、どうやって逆らうっていうんです!?」


 てっきり窃盗罪か詐欺で捕まると思ったんですが、国家反逆罪ですよ。


 ガチの冤罪ですね、これ。


 いや当たり屋と置き引きだけは事実なんですけど、皇帝に対する反逆なんて完全に冤罪ですから。


 しかし衛兵たちは、私の言い分なんて完全に無視しています。


「いいから逮捕だ」「抵抗するなよ」「この犯罪者め」


 こりゃあ聞く耳持ってないですね。


 縄で拘束される前に、小細工をしておきましょう。


 もし消化済みのイナズマストーンを没収されたら大損なので、スリで培った技術で戦士のアカトムさんのポケットにねじ込んでおきました。


 ちなみに逮捕される瞬間ですが、うちのパーティーの仲間たちの反応はこんな感じでした。


 まずは僧侶のレーニャさんから。


「ユーリュー! もしかして皇帝の悪口で漫談でもやって路銀稼いでたの?」


 逮捕されること自体に疑いを持ってないですねぇ。そんなにアウトローな人材に見えていたんでしょうか?


 次に戦士のアカトムさん。


「もしかして余罪がたくさんあって、刑務所に数年パターンとかじゃないよね?」


 ぎくっ……!


 余罪はあるんですが、でもそれは黙秘しておきましょう。


 最後に武道家のシーダさん。


「皇帝の悪口いって捕まるやつ、たとえ本音がどうであれ、反省していますと宣言すれば、あっさり釈放になるぞ」


 ……さては皇帝の悪口いって捕まった経験がありますね、シーダさんは。


 という感じで、仲間たちはある意味で頼もしいリアクションだったので、衛兵のご機嫌でも取って、さっさと釈放されてきますか。


 ちなみに配信中のVITは仲間たちが持っているので、私が逮捕されている間はCM流せないですねー。

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