第110話 偉そうなエリートドラゴンと卑屈ななろうドラゴン
なろうドラゴンのプラテスは、まるで毒々しいカラーリングの毛虫を見たような顔をしながら、意地悪なドラゴンをにらみつけました。
「いつまでも弱虫弱虫って、うるさいやつだな」
意地悪なドラゴンは、偉そうに鼻を膨らませながら笑いました。
「何度でもいってやるさ。お前は弱虫だ。なんの取り柄もない卑屈なドラゴンだ」
「なにが取り柄だよ。君だって、要領が良いだけで、特別な取り柄があるわけでもないだろ?」
「いくらでもあるぞ。勇敢なことも、勝負に強いことも、牝竜にモテることも、すべて弱虫プラテスより俺のほうが上だ!」
うーむ、彼らの会話から漂ってくるヒエラルキーが、プラテスのコンプレックスの大元みたいですねぇ。
これを解消しないかぎり、石板なろう小説の呪いは解けないわけですよ。
さてどうやって解決しましょうか?
ナイスアイデアを閃いたのは、ようやく寒さから立ち直った領主ポンポでした。
「プラテスくんが、もう一体の偉そうなドラゴンに、なにかしらの勝負で勝てたら、石板なろう小説の呪いが解けると思うんだが?」
意地悪なドラゴンは、暴風のように大笑いしました。
「プラテスが俺に勝つだって? いったいどんな勝負で? 飛行速度勝負? すもう勝負? 知識量勝負? どれをやっても俺が勝つに決まってる!」
そういうドラゴンっぽいガチンコ勝負は、プラテスに不利でしょう。
でも、プラテスでも勝ち負けできそうな勝負に引きずりこめれば、チャンスがあります。
それはなにか? 私は、びしっと宣言しました。
「ずばりギャンブル対決!」
意地悪なドラゴンは、まるでお笑いコントみたいに軽くずっこけました。
「それはドラゴンの勝負じゃない! 人間の運試しじゃないか!」
「おや、逃げるんですか? 気高いことで有名なドラゴンが? 逃げちゃうんですか? か弱い人間の設定した勝負から? へー? いいんだ、逃げちゃって?」
こんなわかりやすい挑発であっても、ドラゴンのプライドから考えて、絶対に効果的ですよ。
ほらごらんのとおり、意地悪なドラゴンは目の色を変えると、活火山みたいにぷりぷり怒りだしました。
「に、逃げるだとぉ? この俺が? 冗談じゃない! その勝負、受けて立つ!」
うひょー、やっぱり挑発に弱いですねぇ、プライドの高い生き物っていうのは。
どこぞの勇者パーティーの盗賊も、挑発に弱いですしし、おだてられれば木に登りますからねぇ。
それはさておき、 こちらが主導権を握れたんですから、あとは勝てそうなギャンブルに誘導しましょう。
「決まりですね。これからあなたとプラテスはギャンブル勝負をします、ジャンルは競輪!」
意地悪なドラゴンは、首をかしげました。
「なんで競輪を選んだんだ? 競馬のほうがメジャーだと思うんだが」
うちのパーティーの僧侶であるレーニャさんも「そうよそうよ! 競馬で勝負したほうが楽しいわよ!」と競馬好きらしい発言をしました。
まあ競馬のほうがメジャーであるっていうのはその通りなんですけど、今回の勝負に関しては競輪を選んだほうが有利なんですよ。
その理由を説明しましょう。
「ドラゴンは馬の気持ちがある程度わかってしまうので、ギャンブルが成立しないからですね」
ドラゴンは野生動物の頂点にいるわけですから、競走馬のやる気を読み取れてしまうので、ギャンブルのランダム要素を削ってしまうわけですよ。
そうなってしまうと、私のアドバイスでプラテスが勝てなくなってしまうので――という部分は伏せておきましょう。インチキだと難癖つけられたら面倒ですからね。
さて意地悪なドラゴンですが、余裕の態度でふんぞり返りました。
「競輪でもなんでもいい、どんな勝負だろうと、この俺が弱虫プラテスに負けるはずがない」
「なるほど、そこまで自信があるなら、私がプラテスに車券の買い方をアドバイスしても問題なさそうですね」
「当然だ。それぐらいのハンデがなければ、俺と弱虫では勝負が成立しない!」
ふふん、言質は取りましたよ。これで人間のアドバイスがあったからこの勝負はノーカウントだとか言わせませんからね。
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