第105話 臭いものにはフタをしましょう!
なんで山小屋が振動しているんでしょうねぇ。
おかしいですよね、明らかに。
っていうか、私たちがこの山を調査していたとき、こんな振動ありましたっけ?
他の冒険者たちだって、わざわざキャンプを設営して、この山を長期間調査していたんですから、たとえわずかな振動であっても気づくはずなんですが。
もしやと思って、私は山小屋の外に出てから、そこらの地面に寝転んでみました。
「なるほど、山小屋に近いほど揺れて、山小屋から遠ざかると振動が小さくなりますね」
そう、山小屋から離れれば、振動が弱くなるんですよ。
僧侶のレーニャさんは、杖で山小屋を小突きました。
「なら、山小屋が揺れてるのかしら?」
戦士のアカトムさんは、山小屋の基礎部分の土を軽く掘り返しました。
「いや、山小屋の真下にある地層が揺れてるんだと思うよ。だってベッドで寝転んだときより、床に直で寝転んだときのほうが振動強かったでしょ」
武道家のシーダさんは、袖をまくると、山小屋の物置からスコップを持ってきました。
「なら床板を外して、地面を掘ってみよう」
力自慢であるシーダさんが、山小屋の床板を外してから、ざくざくとスコップで床下を掘ってみました。
そこまで深めではなく、ある程度深めまで掘った瞬間。
ぷお~~ん、っと悪玉菌で発酵した例の強烈な汚臭が広まりました。
あまりにも臭すぎて、私たち四人は山小屋の外に飛び出しました。
「臭すぎですよ!」「臭いわよなにこれ!」「本当に臭いよ……」「最悪だ、臭すぎる」
まるで毒ガスを掘り当ててしまったような気分ですねぇ。
間違いなく、イナズマストーンが臭くなった原因ですよ、この臭さは。
山小屋の真下に、なにがあるんでしょうか?
臭いのは嫌ですけど、もう少し掘ってみますか?
なんかちょっと怖い気もしますが、謎は解きませんと。
私たちはタオルで鼻と口をふさぐと、臭いのを我慢するために順番で掘っていきます。
やがて私の出番がやってきて、ごりごりと床下を均等に掘り進めていると、スコップの先端が硬質な物体に引っかかりました。
注意深く周辺の土を取り払うと、石板が埋まっていることに気づきました。
「……文字が掘ってありますが、これ人間の言葉じゃないような?」
結構古い石板に、文字らしきものが掘ってあるんですが、人間の言葉ではありません。
これじゃあ、なにが書いてあるのか、わからないですね。
うちのパーティーには頭脳担当がいませんし、誰かに解析してもらわないと。
あ、そうだ! 領主ポンポは博物館の館長をやっていたんですから、こういう謎言語の解読が専門のはずですよ!
そうと決まれば話は早いですね。
この臭い石板を街に持ち帰って解読してもらいましょう。
っていうか、臭すぎでしょう、この石板。
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