第104話 ふかふかのクッションって、いいですよね
なぜイナズマストーンは悪玉菌で発酵してしまったのか?
その謎解きは、早い者勝ちとなりました。
本音をいえば、私たちだけで調査したかったんですが、ジェナーディのバカのせいで、こうなってしまったわけで。
いやまあ他の冒険者たちに滞在してもらうことで、自分たちの安全を確保したいのも本音なので、まぁとにかく切り替えていきましょう。
「なんで悪玉菌が発酵したんでしょうねぇ、このドラゴンの胃薬になるはずの石が」
たとえば実家のパン作りですと、イースト菌の発酵は狙ってやるものなんですよ。ふかふかのおいしいパンを作るために、必要な工程ですから。
しかしこの石における悪玉菌の発酵は、どう考えてもマイナス効果だし、おそらく臭すぎて胃薬として使用できないんでしょうね。
となると、なぜ悪玉菌が発生したのかは、二択で推理できます。
誰かが意図的に悪玉菌を発酵させたか、もしくは自然環境に変化があったか。
どちらの原因にせよ、山に変化が生まれたことだけは確かです。
私は仲間たちに語りかけました。
「昔と今で、山の環境に変化があるはずなんですよ。どこが変わったと思います?」
僧侶のレーニャさんは、杖で地面をほじくり返しました。
「さっぱりわからないわ。だってこの山のこと詳しくないし」
まぁそうですよね。私たち登山家でもないし、熟練冒険者でもないですし。
戦士のアカトムさんは、周囲をきょろきょろ見渡して、山小屋を発見しました。
「あそこの山小屋の管理日記に、なんか情報残ってないかな?」
武道家のシーダさんは、持ち前の健脚で山小屋に乗り込むと、ぱーっと素早く管理日記を持って帰ってきました。
「ぱらぱら読み返した感じ、ここ数年はずっと山小屋の寝心地が悪いそうだぞ?」
寝心地が悪い?
それはどういう意味でしょうか。
ふーむ、なんだか怪しいですねぇ。
さっそく私たちは、山小屋を調べることにしました。
内装はありふれた山小屋です。暖炉で燃やすための木材、伐採に使うための斧、狩猟に使えそうな小道具、川水を汲むための桶。
ありふれたものばかりですね。
これだけじゃあ、手がかりにならないですよ。
武道家のシーダさんが、古ぼけた戸棚を漁って、こう言いました。
「やけにクッションが多くないか?」
ずらりとクッションが並んでいました。それも衝撃を吸収しやすそうなフカフカのやつばっかり。
もしかしてクッションに大きな意味があるとか?
物は試しということで、私はクッションを枕にして、山小屋のベッドに寝転んでみました。
ベッドの寝心地は普通なんですが、どこからともなく淡い振動みたいなものを感じます。
なんというか、背中と後頭部がズンズン揺れるような?
「なんですか、これ?」
私以外のパーティーメンバーは、山小屋の床に直で寝転んでみました。
僧侶のシーダさんは、目をくわっと開きました。
「なにこれ! 地面が微妙に揺れてない!?」
えっ、地面が揺れている?
私もベッドから降りて、床に直で寝てみました。
うわっ、本当だ、微妙に揺れていますね。なんというか、幼稚園児の足音みたいな感じで。
戦士のアカトムさんは、床に耳をぴたっとくっつけると、険しい表情になりました。
「たったこれだけでも振動が伝わってくると、静かな夜には睡眠妨害になるだろうね」
だからこそのクッションだったんですね。
管理日記を読み返してみると、最初のページが二十年前の記録で、その時点で、すでにクッションを利用しています。
ずいぶん前からクッション使ってるんですねぇ。
となれば、さらに古い記録を知りたいです。
私は戸棚を漁って、さらに古い管理日記を発掘しました。
それによると、四十年前の時点では、クッションを利用していません。
つまりこの時点では、山小屋の床は揺れていなかったんでしょうね。
ではいつからクッションを利用していたのか?
それを知るために、古い日記を読み進めていくと、だいたい三十年前からクッションの利用が始まったことがわかりました。
ほほぉ、三十年前。
このタイミングで、なにかあったんでしょうね。
そのなにかを突き止めることで、悪玉菌の発生源がわかるかもしれません。
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クッションといえば、イニエス商店の【ハイパークッション】です!
なにがハイパーかといえば、イザというときに防具として使える衝撃緩和機能です。
オークのこん棒攻撃ぐらいなら、簡単に防御可能!
冒険者のみなさんのキャンプ用品におすすめ【ハイパークッション】でした。