第103話 逆張りついでに弱小パーティーの利益を確保しましょう
ジェナーディのやつが抜け目ないせいで、私はちょっとしたピンチになっていました。
もし、この山のイナズマストーンが臭くなっていること、がキーポイントだと知られてしまったら、こちらで利益を独占できなくなります。
うーん、誰にも知られたくないし、利益はひとりじめしたいですねぇ。
とくにジェナーディには、たった一ゴールドであろうとも利益を渡したくないです。
だって顔が可愛いじゃないですか。
あぁ、むかつく。
そうやって焦りと怒りを感じながら脳みそをフル回転させていると、ジェナーディは私に耳打ちしました。
「わたくしたちと秘密を共有しましょう。そうしてくだされば、あることないこと言いふらしませんわよ」
おのれ、おパンツ配信のリーダーめ、私を脅していますね。
もし秘密を共有しなかったら、他のパーティーにデマ混じりの噂を流して、私たちの調査を邪魔させるぞって。
あぁ、腹立たしい。
しかし真っ向から反論できない理由もあって、もし私が彼女と同じ立場であったら、同じ脅しをしていた可能性が高いからですね。
はっはっは、だって私も小悪党ですから、そりゃ口八丁で利益を最大化しようとしますよ。
だからといって、大切な秘密を素直に教えるはずもないわけで。
というか、こういうパターンで脅しに屈して取引に応じると、最終的に私たちだけが損するパターンになりがちなんですよ。
たとえば、二つのパーティーで協力して調査すると見せかけて、最後の最後で裏切って、おいしいところだけ独占するみたいな。
そういう事態を防ぐために、いっそ逆張りします、ちょっとした目的を叶えるためにもね。
私は配信中のVITに向かって全力で叫びました。
「この山のイナズマストーン、なんか臭いんですよ。怪しいって意味じゃなくて、物理的にぷんぷん臭いんです。そのせいでドラゴンが嫌がって近づいてこないんじゃないかなーって思いました、まる!」
私が堂々と公開した秘密は、VITのネットワークを通じて瞬く間に広まりました。
その結果、ペスカータン山から撤退しようとしていたパーティーたちが、うわっと活発化しました。
「イナズマストーンが臭いって!?」「しかもそれがドラゴンが山に近づいてこない秘密……!」「やった、これを解き明かせば、機会損失の埋め合わせができそうだ!」
こうして他のパーティーたちは、山の探索を再開しました。
はい、逆張り成功。これでジェナーディの脅しを無効化したうえに、私たちのちょっとした目的を叶えました。
ちょっとした目的とはなにか?
私は、ぴゅーぴゅーっと挑発的に口笛を吹いてから、説明してやりました。
「私たち、伊達に弱小パーティーをやってきたわけじゃないのでね。他のパーティーに同じ現場を長居してもらうことで、安全性を確保する目的もあるわけでして、これにて一石二鳥!」
私たちだけでは、山の探索は危なすぎます。
そしてジェナーディに利益を横取りされるのはムカツクじゃないですか。
なら逆張りで情報公開ですよ、私の勝ちー。
ジェナーディは、ぎりぎりと奥歯を噛みしめると、私をにらみつけました。
「この腹黒遊び人め……!」
かっー! 最高の甘味ですね、おパンツ配信のリーダーが悔しがる顔は。
なんならジェナーディの仲間である美少女メンバーたちも、ちょっと悔しそうな顔をしていることが、腹黒である私にとっての勝利の美酒という感じですね。
いやはや腹黒に生まれてよかったです、嫌いなやつに陰湿なダメージを与えられるんですから。
うちの配信のコメント欄も大盛り上がりですよ。
『性格悪すぎ』『やっぱユーリュー頭おかしいわ』『すべてのスキルを腹黒に割り振った遊び人』『配信業があって本当によかったな、冒険者向いてないし、レベル一のままだし』
みなさん褒めすぎですよ、はっはっは。
と余裕をぶちかましている場合でもないんですよね。
イナズマストーンが臭くなったことを公開してしまったわけですから、私たち以外の誰かが臭さの謎を解いてしまう可能性があります。
ジェナーディだって、わなわな怒りで震えながらも、山の地図を広げました。
「ええい、こうなったら早い者勝ちですわよ!」
こうしてイナズマストーンをめぐる争いは、スピード勝負になりましたとさ。
*CMです*
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