表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第二章 そろそろダンジョン配信者が板についてきて、お金儲けもぼちぼちやれるようになったころ
102/119

第101話 善玉菌と悪玉菌

 なぜイナズマストーンが臭くなったのか調べるために、活動拠点の町に戻ってきまして、領主ポンポに知恵を借りることにしました。


 なんですが、領主の館をたずねたとき、領主ポンポはハンカチから鳩を出していました。


「もっと手品の演出をかっこよくしたほうが、お客さんのウケがいいかなぁ?」


 この人、もしかして公務中ずっと手品の練習をしてるんじゃ…………。


 あなたは税金で給料もらってる立場なんですし、真面目に働いてほしいんですけど…………。


 という私たちの白い目線に、領主ポンポは気づいたらしく、慌てて手品の道具を机の下に隠しました。


「ち、違うのだよ、君たち。今日たまたま暇な時間があったから手品の練習してただけで、普段はちゃんと公務してるんだよ。本当だよ?」


 これは絶対に嘘ですねぇ……すっかり目が泳いでますもん。


 この人、ロクに仕事しないで、ずっと手品の練習してるんです。これだから権力者ってのは信用できない。


 領主ポンポは、まるでごまかすように大笑いしてから、私たちに質の良い紅茶と高級お茶菓子を勧めました。


「ほ、ほら、君たち、温かいお茶でも飲んで、機嫌を直して。ね? ね? それはそうと、領主である吾輩に、なにか用件でもあったかな?」


 まったくお菓子を食べさせれば、公務をサボって手品の練習をしていたことをバラさないと思ったんですか?


 まぁ黙るんですけどね。もしゃもしゃ。


 あ、これ結構おいしいですね。さすがお偉いさん、高級なお菓子にも詳しい。


 私たちが普段食べられない高級なお菓子に舌鼓を打っていると、領主のポンポはほっと一安心したらしく、ふーっとハンカチで汗を拭きました。


「ところで君たち、吾輩になにか用だったかな?」


 私は事情を説明すると、ペスカータン山に埋まっていたイナズマストーンを机に置きました。


 領主ポンポは、山から回収してきたばかりのイナズマストーンを嗅いで、うっと鼻をつまみました。


「本当に臭いなぁ。館の裏手にあるイナズマストーンには、こんな匂い一切ないのに」


「なにか心当たりはありませんか? どうやら領主は博識みたいなので」


「領主に就任する前、帝都の博物館で館長をやっていてね。そのときに仕事の性質上、知識が増えたのさ。だから物品の鑑定はお手の物だ」


 といいながら、領主ポンポは虫メガネを使って、臭くなったイナズマストーンを分析しました。


 どうやら発見があったらしく、紙にメモしながら、その内容を復唱しました。


「これは臭くなったというより、発酵してるんだな。パンを作るときに、イースト菌を使って膨らませる感じに近い」


「パンですって? 石って発酵するんですか?」


「普通の石であれば、発酵しない。だがこれはドラゴンたちが胃薬に使う石だから、

構造がちょっと特殊なんだ」


「なにがどう違うんです?」


「柔らかいんだよ。ほれ、おいぼれジジイの腕力でも、ちょっと強めに押すとヘコむのだ」


 領主ポンポが、年老いた腕で強く押し込むと、臭くなったイナズマストーンは、べにょんっと凹みました。


「ふーむ、こんな柔らかい石が、この世の中に存在するんですねぇ。でもなんで柔らかいと発酵するんです?」


「錬金術師たちの分析によると、イナズマストーンの構造には隙間がたくさんあるから、そこで善玉菌が発酵しやすいらしい。そのはずなんだが、君たちが持ってきたイナズマストーンは、どうやら悪玉菌が発酵してしまったらしいんだ」


「だから臭いんですか」


「うむ。もしかしたらドラゴンたちが、ペスカータン山に近づかなくなったのは、悪玉菌が原因かもしれないな。イナズマストーンが善玉菌で発酵すると、もっと甘い香りがするはずだから」


 ふーむ、たしかに実家の洋菓子店で嗅いだことのあるイナズマストーンの粉末は、焼いた砂糖みたいな甘い香りがしましたね。


 というわけで、次回はもう一度山に戻って、なぜイナズマストーンの発酵が悪玉菌に変化してしまったのか、調べることになりますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ