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レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました  作者: 秋山機竜
第二章 そろそろダンジョン配信者が板についてきて、お金儲けもぼちぼちやれるようになったころ
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第100話 情報の鮮度に気をつけましょう!

 フンまみれになったイナズマストーンを探すために、ペスカータン山にやってきました。


 この山ですが、皿を裏返したような形をしていて、標高はそこまで高くありません。


 一見すると登りやすそうな山ですが、モンスターの生息地ですから、ハイキングには向いていません。


 まぁドラゴン伝説が残っている山を一般人が上るはずもないので、そんな心配をしても無意味ですけどね。


 なお山の入り口から配信をつけますよ。だってもう社会奉仕活動は終わりましたから、ここからは配信者として広告収入を稼がせてもらいますからね。


 というわけで、私はVITのカメラに向かって挨拶しました。


「視聴者のみなさん、おはようございます。本日は朝から山登りです」


 コメント欄も朝から元気でした。


『おはよう、ユーリュー』『今日は山登りかよ。大丈夫なのか?』『そこってドラゴンが飛来した伝説がある山だろ?』


 コメント欄の視聴者ですら知っているので、ありふれた伝説なんですよね。


 そんな背景があって、レアな食材ブームとなったら、もしかして私たち以外にもイナズマストーンの正体を知っている冒険者がいるんじゃないですか?


 はい、この予感は的中でした。


 すでに複数のパーティーが、ペスカータン山を散策しているんですよ。


 山の出入口付近にはキャンプが設営されているし、モンスターを退けるための篝火も炊いてありました。


 私は、いろいろ察しました。


「詐欺師のゼランですけど、クエスト手配師のくせに情報収集するのが遅すぎて、イナズマストーン関連の情報は鮮度が落ちきっていたんでしょう。そんなもので儲けようとするんですから、なんてセンスのないことでしょうか……」


 きっとイナズマストーン関連の情報は、二週間ぐらい前から出回っていたんでしょう。


 それなのにゼランは今週になってようやく情報を手に入れたから、お買い得情報ではなくなっていたわけです。


 となると、ゼランの弟である有料クエスト手配師・ゴロンも、イナズマストーン関連の情報を知っていたことになります。


 たとえペスカータン山に登ったところで、すでに他のパーティーが荒らしたあとだと。


 なぜそれを我々に教えなかったかというと、領主の館を清掃させるためですね。


 くわーっ! なんてずる賢いやつでしょうか!?


 私を腹黒バトルで負かすなんて、まったくもって気に食わないやつです。


 僧侶のレーニャさんは、他の冒険者たちを観察すると、ふーんっと鼻を鳴らしました。

 

「これだけ冒険者が、うじゃうじゃいるなら、とっくにモンスターをかたづけてあるはずでしょ。なら、用心棒を雇わずに、あたしたちだけで冒険しても問題ないわね」


 たしかにそうですね。情報の鮮度が落ちたがゆえに、先駆者たちが安全を確保したあとですから、我々にとってはちょうどよかったのかもしれません。


 戦士のアカトムさんは、空っぽの宝箱を指さしました。


「安全になった代わりに、お宝も空っぽってわけだ」


 それは実に残念ですが、イナズマストーンで儲けられればいいし、最悪配信が盛り上がって広告料が入ればいいので、そのあたりは前向きに行きましょう。


 武道家のシーダさんは、草むらをかきわけました。


「タンポポが食い荒らされてるが、これは獣の仕業じゃなくて、人間の摘み方だ。きっと食用の山菜を現地調達して食べているんだろう。長期滞在の食費を浮かすために」


 モンスターの生息する山の山菜が食い荒らされているとなれば、とんでもない人数の冒険者が攻略中というわけですよ。


 私は適当な岩によじ登ると、周囲の冒険者たちの人数を大雑把に測りました。


「いやはや百人以上いますよ。これだけ大量の冒険者が山を攻略しているのに、まるで発見報告がないってことは、もしかしたらドラゴンさん、最近この山に来てないかもしれないですねぇ」


 僧侶のレーニャさんは、山の斜面を見ました。


「イナズマストーンは、いくらでもあるんだけどねー。ドラゴンが食べた感じはしないもんね」


 戦士のアカトムさんは、足元に埋まっているイナズマストーンを木の棒で突きました。


「コケだらけだし、かじりついた形跡もないし、本当にドラゴンはこの山にこなくなったみたいだね」


 武道家のシーダさんは、イナズマストーンの匂いを嗅ぎました。


「これ、なんか臭くないか? 街中にあったやつと違って」


 えっ、臭い石ですって?


 もしやドラゴンのウンチの匂いとか?


 私たちは全員でイナズマストーンを嗅いでみました。


 ひえっ、くっさーいですね、本当に。


 ただしフンの匂いではありません。


 硫黄と発酵した牛乳を混ぜたような匂いが漂っています。


 ただし、そこまで強い匂いではないです。もし強い匂いでしたら、山全体がこの匂いで包まれているはずですから。


 謎が増えましたね。


 なんでこの山のイナズマストーンだけ、こんなに臭くなったんでしょうか?


 領主の館の裏手にあったイナズマストーンは、そんな匂いまるでしなかったのに。


 この謎を解くためには、ペスカータン山の臭いイナズマストーンを回収して、街に戻ったほうがよさそうですね。


 きっと領主ポンポは、この手の情報に詳しいはずですよ。


 だってあの人が、イナズマストーンはドラゴンの胃薬って教えてくれたんですから。

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