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5.付き纏い

「お前! アリーちゃんの何なんだよ!?」


 後ろから肩を掴まれそうになり身を翻して躱す。

 思ったように肩をつかめずバランスを崩している。顔を真っ赤にして怒っている。

 俺が何かしたんだろうか?


「何だとは?」


「あぁ!? 見てた人に聞いたら家から来たっていうじゃねぇかよ!? なんでお前がアリーちゃんの家から来るんだよ!?」


「あぁ。そういう意味か。俺はアリーの家の居候にしてもらったんだ」


 再び顔を真っ赤にしている。

 何をそんなに怒ることがあるというのか?


「一緒に住む同居人ってことか!? 付き合ってるってことか!?」


 同居人という事ではあるが、付き合うとはどういう事なのだろう?


「ちょっ! コザーさん! やめて下さい! テツさんは何も悪くありません! 私が居て欲しいって言ったんです!」


 俺の前に両手を広げてアリーが立ち塞がる。


「うるさい! どけぇ!」


 アリーの肩を掴んで横に吹き飛ばす。

 ダンッと壁に頭から打ち付けてしまうアリー。

 アリーの方に駆けつけようとすると、前にコザーが立ち塞がる。


「何処に行く!?」


「アリーが怪我したかもしれない」


「お前なんかが呼び捨てにするなぁ!」


 拳を振り上げて殴りかかってきた。

 心の中でため息を吐きながら迫る拳を見つめる。 

 拳に手を添えて後ろにクルッと回り込む。

 そして、後ろに引き前に転ばせる。


 ぐあぁと言っているが、この男が怪我しようが何しようが知ったことではない。

 パッと手を離すとアリーの元へと駆け寄る。


「アリー、大丈夫か?」


「あっ、はい! ちょっと頬を擦りむきましたけど、これくらい大丈夫です!」


 綺麗な顔の頬に傷ができてしまった。

 言い知れぬ感情が自らを襲う。


「悪化してはダメだ。直ぐに治療しよう」


「えっ? 大丈夫ですよ? これくらい」


「サナさん、治療する薬ありますか?」


 サナに呼びかけるとポーションを用意してくれた。俺にはどうすればいいか分からなかったが、アリーはそのポーションを手のひらに落とすと頬にもっていき、付けた。


 すると、あっという間に傷が良くなっていき、数秒後には傷は跡形もなく治った。

 これを見た時は驚いた。

 前世にもこんな治療薬があったらどれだけよかった事か。


「くそがぁぁ! 俺を無視してんじゃねぇ!」


 再び襲いかかってくるコザー。

 腰にタックルして来ようとする。


 トンッと跳躍して足からコザーの体を飛び越え、腕を伸ばして首に腕をかける。

 そのまま首を締めながらコザーの背中に座り、一緒にドサッと床に落ちる。


 少しすると意識を失った。

 殺してはいない。

 気絶させただけだ。


「テツさん、すみませんでした。コザーさんは私に毎回声をかけてきてくれるんですけど、他に話しかけた男の人とかがいると絡んでいくんです」


「いや、問題ない。コイツどうすれば?」


 アリーにコイツをどうするか聞く。

 煮るなり焼くなり好きなようにすればいいだろうが、アリーはそんな事はしないだろうな。


「サナさん、コザーさんお願いしてもいいですか?」


「良いわよ。もう付き纏わないように言っておくわ! 全く、ギルド内で暴れて! 危ないったらないんだから!」


 サナさんも怒り心頭のようだ。

 ただでさえ鋭い目を更に鋭くさせて怒っている。


「それじゃあ、行きましょ!」


 ギルドの出口へ向かう。

 先程中に入る時に声をかけられた冒険者の男に再び声をかけられた。


「兄ちゃんよ! あんたホントに強いんだな!? コザーをあんなにやり込むなんて凄い腕だ!」


「はぁ」


 いきなりそんなことを言われて戸惑う。

 あいつはそんなに言われるほど強くなかったと思うが。


「はははっ! いや、すまない。ちょっと安心したんだ。アリーちゃんいい男捕まえたな?」


 アリーは顔を真っ赤にしてその男の肩を叩きながら何か言っている。


「ジンさん! 止めてよ! もう! ホントお父さんみたい!」


「はははっ! そりゃ、光栄だ」


 むぅと怒った顔をしながらギルドを出ていく。

 後を追って出ていくと、こちらを向いて頭を下げてきた。


「ごめんなさい! 私のせいでジンさんは変な事言うし、コザーさんなんてテツさん襲っちゃうし! 一緒にいたら不幸になっちゃうかも……」


 不安そうな顔で下を俯いている。

 チラッと涙を溜めているようにも見える。

 何がそんなに不安なのかわからない。


「俺は、あの程度の奴には殺られないぞ? そこまで心配することじゃない。俺は、着替えがないんだ。生活用品を買わせてくれないか?」


「えっ? 出ては行かないってことね……」


「どうした?……あっ、金がないんだよな。俺」


 そうだよな。

 まだ何にも稼いでないのに着替えが欲しいだなんて贅沢な話だった。


「それでいいんです! 出世払いで貰います! さぁ! 買いに行きましょう!」


 急に元気になったアリー。

 なんでそんなに急に元気になったのか?

 俺が買い物に行くって言ったから喜んでいるのだろうか?


 たしかに、昔聞いたことがある。

 女性は買い物が大好きで見ている時間がとても長いと。

 しかし、男は何も言わずに一緒に回るのだと、それがデートだと。


 その情報が前世のものだとしても異世界でもその情報は、あっている事がわかった。

 これからも前世の情報が使える機会があるかもしれないな。


「ほら! テツさん! 行きますよ!」


 手を引かれて街へ繰り出す。

 長くかかることを覚悟して、買い物にいざ参らん。

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