⑩以下されている
友達が私に、男性を紹介してくれた。
私がずっと、彼氏が欲しいと言い続けていたからだ。
誰でもいいわけではない。
私にだって、タイプは存在する。
喫茶店に来た男性は、冴えなかった。
地味なシャツに、ジーパン。
少しやせ形だった。
言ってしまえば、私のタイプには到達していない。タイプの裏側に、いるような人だった。
「あの、トイレに」
「わかりました」
来てすぐに、男性はトイレに駆けていった。
その姿は、弱々しかった。
誰かを守れるような人でないことは、すぐ分かった。
「タイプじゃないよ」
「相性いいと、思ったんだけどな」
「職業は何している人なの?」
「イカだよ」
「イカ? イカって何?」
「『僕の方が全然下だよ。キミ以下だよ』って言って、安心させる仕事」
「以下っていう職業があるの?」
「レンタル彼女とか。相談にのる仕事があるんだから。不思議じゃないでしょ?」
「うん。失礼かもしれないけど、なんか全ての能力が、平均よりチョイ下っぽいよね」
「でしょ? それがクセになるのよ」
「まだ、何も話してないから。分からないけどね」
「ごめんね。トイレ近いのよ」
「あっ、もしかして、お腹の調子もあれ?」
「そう。平均以下」
「すみません。すみません」
「大丈夫ですよ」
男性は、笑っていた。
苦笑いに近い笑顔を、してくれた。
でも、それが不思議と輝いていた。
弱々しいのに、強く心に来た。
「友達から聞きました。職業のこと」
「そうでしたか。そうでしたか」
声のボリュームも、平均以下だった。リアクションの大きさもそうだ。
たぶん、年収もそれほど行っていない。それに、あまりいいところには、住んでいないだろう。
それでも、なぜか惹かれていた。独特さに、惹かれたんだと思う。
笑顔のまばゆさだけは、トップクラス。そう感じていた。




