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勇者は魔王が倒せない  作者: ふぁん
1/4

議会制勇者

 世界を闇で包み人々を恐怖に陥れるもの。それを魔王と呼ぶ。


 魔王を倒すために一人の勇敢な若者が旅だった。人は彼を勇者と呼んだ。




 荒廃した大地を進む一行あり。魔物しか棲まぬ危険地帯をものともしない。

 吹きすさぶ寒風にも負けず、毒の沼や瘴気の森などを乗り越え目指す先。この世の終わりのような、地獄のような。魔王の居城はそんな場所にそびえ立っていた。


「ようやくここまで来たな」


 勇者は感慨といくらかの興奮を持って呟いた。

 恐怖はない。ここまでの長い旅路、幾度も危険な目に遭ってきたが、仲間の協力と勇者が持つ偉大な力によって突破してきた。


「あとは城にいる魔王を滅ぼすだけだ」

「苦労しましたね……」


 仲間たちも感慨深げだ。

 今、勇者に従うメンバーは四人。出発した時は一人だった勇者の旅も、多くの仲間と出会い、そして別れ、喜びも哀しみも分かち合ってきた。


「だが、俺たちならきっと勝てる」


 魔王との戦いは恐ろしくもあるが、それ以上に仲間の絆が頼もしい。厳しい戦いを生き抜いたこのメンバーはいずれも精鋭揃いで負ける気はしない。


「魔王を倒したら俺たち英雄だな」

「もうすでに英雄だろう」

「俺、国に帰ったら恋人と結婚するかな」

「今それを言うのはやめとけって」


 軽口を叩く仲間たち。そんな中、一人だけ渋い顔をした魔法使いが、重い口を開いた。


「皆に悪い報せがあります」


 勇者と仲間たちは魔法使いを見た。「悪い報せ」という言葉に真顔になっている。


「我らの故国が別の魔物に襲撃されています」

「えっ」

「それで議会から、緊急召還命令が発せられました」


 一同しんと静まり返った。

 彼らの国において議会とは最高の意思決定機関であり、勇者を任命したのも議会である。多くの戦士たちから彼を選びだし、勇者の能力を付与したのも議会である。

 そして、勇者一行の戦いを左右する権限も議会にはあった。


「……」

「勇者、帰国して人々を守らなければ」

「だが、ここまで来ておきながら……」

「戻らなければ抗命罪に問われます」


 ここに至るまで苦難の連続だった。ほんの数日前に命を散らした仲間もいる。多くの人々が魔王に苦しめられてきた。

 魔王を取り除くことこそ世界のためである。が、国の危機、国の命令は彼らにとって非常に重い。


「勇者……」

「……君には恋人がいるのだったな」

「それは……」

「議会の命令に従おう」


 勇者は命令を受諾した。魔法使いの転移魔法で故郷に帰るのは一瞬である。一行を不思議な光が包み込み、次の瞬間には見覚えのある故郷の都、その町並みが視界を埋め尽くす。




 都は炎と煙に包まれていた。空をドラゴンが飛び交い、いくつもの建物が破壊されている。


「竜王の残党か。あの時もっと徹底的に破っておくべきだったな」


 勇者は強い。ドラゴンたちは数刻後には屍となり都を飾るオブジェクトに成り果てた。


「さすが勇者たち。議会を代表して礼を言わせてもらう」


 議長の称賛に勇者は愛想笑いで応じた。悔しさはある。魔王をあと一歩のところまで追い詰めておきながら戻ってきてしまった。

 だがその憤りを議会にぶつけることはない。議員は国の代表であり、議員たちを選び出す市民こそ、この国の主権者だ。国と議会と市民。彼らを護るのに何かを厭っているわけにはいかない。


「人々を護ることこそ我らの役目ですから」


 結局、勇者はこれまで何度も口にしてきたセリフで議長に応じるに留めた。


 被害状況を確認した後、勇者一行は再び魔王討伐に逆戻りだ。このタイムロスに魔王がどう動くかと懸念していたが、それ以上の問題が発生する。


「勇者……俺はついて行けない」

「どうしたんだ急に?」


 仲間の武闘家が蒼白な顔で辞退を申し出てきたのだ。苦楽をともにしてきた仲間の発言に一行は動揺を禁じえない。


「死んだ」

「え……」

「恋人がドラゴンの襲撃で……死んでいたんだ」


 ――帰ったら恋人と結婚する。そんな言葉を一行は思い出した。彼のささやかな未来図は永遠に叶わぬものと成り果てていたのだ。




 旅の仲間がまた一人欠けた。悲しいことだが、そんな事態に慣れてしまったことがまた哀しい。一行はすぐにでも旅を再開し魔王を討ちたかった。


 だが足止めを食らう。ドラゴンの襲撃に関し、議会で野党から勇者不信任案が提出された。その案が否決されるまで身動きが取れなかったのだ。

 世界を救うために戦っていても、与党側の勇者を認めない勢力からは常に何らかの攻撃を受けてきた。


 ようやく魔王の城にとんぼ返りしたが、城はなんともぬけの殻である。

 勇者の進撃に恐怖した魔王は拠点を移してしまった後だったのだ。


 再び最初からやり直しだ。情報を集めて魔王の居場所を突き止める。その場所へ往くための道を拓き、敵を打ち破り、障害を破壊する。


 それらの作業は本人たちも驚くほどのスピーディーさで進行した。旅を続けるうちに相当な力を身に着けた結果である。


 こうして彼らはハイテンポで魔王の新拠点を目指したが、仲間の魔法使いが渋い顔である。


「悪い報せがあります」

「今度は何だ」

「シーフ殿、あなたの家族が逮捕されました」


 仲間の一人、シーフがギョッとした。

 彼は盗賊上がりの冒険者。過去に罪を犯していたが、その能力を買われて勇者の仲間となっていた。

 彼自身の罪は議会によって赦免されていたが、彼の家族が逮捕されたのはどういう訳か。


「窃盗、強盗、傷害、殺人等々の罪に問われている模様ですが」

「シーフ……お前の家族も盗賊なのか」


 途端に白い目で見られるシーフだったが、彼は頭を振った。


「確かに家族は悪党だったけど、俺が勇者の仲間になる前のことだ。支度金と仕送りで生活には困っていないし、過去の犯罪も今まで追求されてこなかったのに……」

「ですがシーフ殿、今やあなたに対しても召還命令が出されています。市民もあなたに疑惑の目を……」

「くっ……」


 シーフは魔法使いに伴われて帰国した。

 数日して魔法使いは戻ってきたが、彼一人だけだった。シーフは家族を弁護するのに忙しく、もうともに旅はできないそうである。




 一行はまた数が減った。勇者と魔法使い。そして屈強な暗黒騎士の三人である。

 人員を補充したい気持ちもあるが、すでに世界で彼らに追随できるほどの戦士はおらず、一から育成している暇もない。

 時が経つほどに魔王の驚異は世界を覆うのだから。


 魔王の居場所はわかっている。地獄の如き火山地帯に新たな城を構えて守りを固めていた。

 だが魔王の僕達は勇者を止められない。勇者は旅が上手く進まぬ鬱憤を魔王軍にぶつけたため、魔物は地形が変わるほどの攻撃を受けて四散した。


 鬱憤が溜まっているのは勇者だけではない。魔法使いは火山地帯を利用して灼熱地獄を生み出し、魔物の群れを一掃した。

 暗黒騎士は漆黒のオーラを迸らせ、魔王軍の屈強な戦士たちを切り捨てていく。


 乱戦の最中、勇者と魔法使い、暗黒騎士の三人は背中を預け合う。


「暗黒騎士殿、まさかアナタが最後のメンバーに残るとは」


 魔法使いの言葉にはいささか含みがある。


 暗黒騎士はかつて魔王軍の騎士だった。氷の心と漆黒の殺意を持ち幾度も勇者一行の前に立ちはだかったものだ。

 だが勇者と死闘を重ねる内に凍りついていた心は融け、互いに認め合うようになったのだ。


「懐かしいな」

「あの時は騎士殿に苦労させられました」


 勇者と魔法使いは笑ったが暗黒騎士は気にも留めない。このような話題は過去にも何度か触れており、皮肉を交えながら談笑したものだ。

 彼らの絆はいつしか血よりも濃いものとなっていて、この程度の会話では摩擦も起こらない。




 魔物の群れは滅び去り、ようやくようやく魔王城の前に立った。堅固な門などは何の役にも立たず、勇者の一刀のもとに破壊される。


 いざ進まん、という時に魔法使いが足を止めた。通信魔法で交信をしている。

 勇者と暗黒騎士はまさかと顔を歪めた。


「悪い報せがあります」

「言え」

「暗黒騎士殿に召還命令が」


 議会の言い分はこうだ。

 元々魔王軍に属していた暗黒騎士は裏切る可能性があるため、議会に呼び出して査問にかけるとのこと。


「何故今になってそんなことを……これから決戦なんだぞ!」

「議会は代わりの補充要員を送ると言っています」

「そんな奴ら信用できるのか?」

「勇者殿……議会の命令は絶対です」


 暗黒騎士を省みるが、彼は言葉を発しない。元来が寡黙な男で放っておけば一日喋らないこともある。

 そんな彼だが、目だけは哀しみを湛えて勇者を見ていた。

 その目が、諦めたように固く閉じられる。


「……議会の命令に従う」




 暗黒騎士は魔法使いに伴われて帰国した。戻ってきた時、魔法使いが四人になっていた。補充とは彼らのことか。偏りが過ぎるものの勇者は諦めた。


 魔王城内部では一層手強い魔物たちが襲いかかる。勇者は一人で前に進み敵を斬り伏せた。パーティーの戦力バランスは無惨な有様で己が前に出るしかない。

 それでも新たに加わった魔法使いたちは補助魔法に長けていたため、時間をかけて道を切り拓くことができた。


「勇者殿。議会から通信が……」

「……」

「総選挙が近いからそろそろ魔王を倒せないか、と」

「……」


 あらゆる困難と障壁と災難を乗り越え、一行は魔王の前に立つ。


「来たか勇者」

「魔王、お前を倒すためにここまで来たぞ」

「フフフ、勇者よ。お前は何のために戦っているのだ?」

「知れたこと」


 ギリと歯噛みする。今までの冒険の記憶が蘇る。




 魔王の出現によりいくつもの国が滅んだ。多くの生命が失われていった。

 人々はこれを打ち破る英雄の出現を望んだ。


 厳正な審査を経て議会より勇者の名と力を授かった。定期的な審査を受けながら旅を進めた。仲間が加わるたびに身元を改め査問にかけ、議会の追認を得ていった。

 議会と市民の目は常に厳しかったが、それも期待の表れと前向きに捉えてきた。


 次の行き先を議会が議論している間は束の間の休息を得られた。だが旅の間は色恋沙汰と無縁だったものだ。

 誰か女性の陰がちらつくと世間が放って置かなかった。他国の王女と面会した時などすぐさま熱愛報道に発展したほどだ。同じ理由から彼らの仲間に女性が加わったことは無かった。


 一方で、野党が対抗馬に女勇者を立てると市民の注目が逆転しそうになったこともある。


 いつしか勇者は戦いに没頭するようになった。戦っている時だけは余計なことを考えないで済む。

 それは仲間たちも同様で、彼らは強い絆で結ばれるようになった。

 その仲間も今は魔法使い一人だけ。あとの三人は急ごしらえの知らないものたちだ。




 多くのものを失ってきた。多くのことに耐えてきた。それも魔王を倒し人々に、世に安寧をもたらすため。剣を握る拳に思わず力がこもる。


「魔王よ。俺はお前が傷つけてきた人々、奪ってきたもの、それら全てのためにお前を倒す」

「クックックッ……ハハハハハハ!」

「何がおかしい!」


 哄笑する魔王に対し勇者は今にも斬り込みそうな形相だ。魔法使いたちはその光景を棒立ちしたまま真顔で眺めている。


「これが笑わずにいられるか。勇者よ、本気でそんなことを言っているのか?」

「本心でなくて何だ!?」

「憐れな男よな」


 勇者は駆け出す。もはや言葉は不要とばかりに斬りつけた。

 その手に持つのは伝説の剣。幾人の仲間を失いながらも獲得した魔王に勝つための武器だ。入手直後に議会から、哀悼より先に剣の調査を申し込まれた時はイラッとしたものだ。

 仲間の心血まで込めて振り下ろした一撃は――魔王に深い傷を負わせることに成功した。


 続けて魔法使いが極大魔法の詠唱を始める。その前に議会へ通信で報告し、後で追認を得る段取りを話しておく。強力過ぎる魔法のため議会の制約の元で使うことを強いられてきた。


 魔法使いの杖も、勇者の盾も鎧も、議会の審査を経て使用を許可されている。危険な魔法を使用した後は決まって市民団体から抗議が寄せられた。

 市民は国の元だから。強すぎる力は暴走の危険を孕んでいるから。

 議員を通して無数の市民と向き合ってきた旅だった。それももう終わる……。




 魔王はほどなく斃れた。

 勇者は戦いにのめり込むうちに力をつけすぎたのだろう。仲間の補助のおかげもあって圧勝だった。


 戦いは終わった。終わった……のか?

 勇者は目の前の現実に意識がまだ追いつけていない。青春を魔王討伐に捧げてきた。そんな人生の柱が急に失われて忘我状態にある。


「終わりましたね」


 側には魔法使いが立っている。結局残った仲間は彼一人だ。後から追加された三人は知らない。


「……ようやく終わりだ。これで帰れる。勇者の重責からも解放――」


 グラリと視界が揺れた。揺れたのは勇者の体だ。膝を付き意識が朦朧とする。


「さすが勇者殿、私の麻痺魔法でも完全には動きを封じられない」


 哀しそうな、本当に残念そうな顔で魔法使いが見下ろしていた。


「何を……する?」

「ともに戦ってきたあなたです、白状しましょう。私は議会の回し者でした」


 何を言っている。勇者は訝しんだ。


「私だけでなく、彼ら補充の魔法使いたちも皆、議会の意向を受けています。その意向とは、すなわち勇者の行動を監視することでした。

 勇者には特別な力が授けられる。その力が暴走しないよう、人々に向けられないように見張るのが私の役目でした。


 ですが、あなたは強すぎた。議会の想定を越えて力をつけたあなたは、危険な存在となってしまったのです。そのつもりが無くてもね。


 だからこの決戦の地で魔王を討ち果たした後、英雄もともに果てる。それが彼らの望んだシナリオというわけです」


 四人の魔法使いが共同で巨大な術式を構築していく。それとともに地面がぐらつき始めた。地震か。火山地帯であるこの大地が鳴動しているのだ。


「火山の大爆発を誘発する魔法です。この地一帯は死の大地と化すでしょう。あなたと魔王もともに消える。

 さようなら勇者殿。あなたのことは、本当に仲間だと思っていたんですよ」


 それでも議会の命令が優先されるということだ。目をうるませながらも、魔法使いは術式を構築し終えるとその場を後にした。四人とも転移魔法で跳躍し、今頃は安全な都の中だろう。




(終わった……)


 体は上手く動かない。この魔王城と運命をともにすることになりそうだが、勇者は奇妙な安息の中にいた。

 もう勇者の重責に苦しめられることはない。議会の命令に縛られることもない。解放されたのだ。

 できれば生きて平和になった世界を謳歌してみたかったが、それは叶いそうにない。


 思えば仲間たちが引き剥がされていったのも議会の計画だったのだろう。

 怒りはあるが、それより今は眠りたい気分だった。


「惨めな姿だな」


 魔王が見下ろしていた。


「……死んだふりだったのか、魔王のクセに」

「貴様に現実を見せてやろうと思ってな。……いや、実はもう死ぬ寸前だ」


 魔王の体からは血が止めどなく流れている。

 ちょっと斬りすぎたかな、などと勇者は考えた。


「こうなることを知っていたのか?」

「妙な動きが多いから察しはついていたさ。人間というものは所詮弱者の集まりよな」


 嘲笑う魔王。だがどこか寂しげでもある。

 それは勇者も似たようなものだった。残された力を振り絞れば、最後の一撃を見舞えるかもしれない。だが今はそんな気分も失せていた。


「我も最早まともに動けぬ。二人仲良く火山爆発の餌食かのう」

「それが我らの議会、そして市民の願いらしい」

「貴様はそれに従うのか?」


 従うも従わぬも、死は免れそうにない。大地の鳴動は徐々に大きくなってきている。


「勇者よ。二人とも助かる方法が一つだけある」

「何?」

「我と貴様で融合するのだ」


 何を言っているのだコイツは。勇者は訝しんだ。


「そんなことが可能なのか?」

「できる。融合すれば貴様の生命力で我を補い、我が魔法でこの地獄から脱出もできよう」

「もし……仮にそうなったら俺たちの意識はどうなるんだ。都合の良いことを言って俺の生命を利用するつもりだろう」


 何より、ここで魔王の生命を永らえさせれば今までの旅が無駄になる。いや、もう無駄だったのか。だが魔王が死ねば世界は平和になる。

 そこに勇者の生命は勘定されていない。人類対魔王の戦いにおいて、勇者たちの人権は常に勘定に入っていなかったのかもしれない。


「貴様を利用するだけならば長話などしない。貴様の意思は消えぬ。二人で体を共有することになるから、貴様の同意が必要なのだ」

「しかし、そんなこと急に言われても……」


 勇者はハッと気づいた。今まで議会の命令に従うばかりで重要な決断をしてこなかった自分を省みる。

 常に自分たちを監視し、求めなくとも判断に首を突っ込んできた議会との関係は切れたのだ。


「俺は……」



 ***



 都は総選挙の話題で持ち切りである。勇者を選定し魔王を討伐させた与党は歴史的大勝を収めた。

 勇者は魔王の根城と運命をともにしたと伝わっている。英雄の非業の死に涙しつつも、人々は平和な時代を謳歌しようとしていた。


 そんな都に暗雲が立ち込め、雷光が議事堂の屋根を吹き飛ばした。

 質疑中だった議員たちは慌てふためいたが、煙の中から姿を現したものに度肝を抜かれる。


 それは勇者と魔王の融合体。半身が勇者、半身が魔王という異形の存在だった。


「議員諸兄の皆様、戻りました」


 変わり果てたが覚えのある顔と声。勇者の帰還である。


「き、君。その姿はいったい……」

「我は魔王。貴様らを地獄へ招待しに来たぞ」

「ちょっと今俺が話してるから」

「ままままままま魔王!?」


 議会は混乱した。無理もない、死んだと思っていた勇者と魔王が生きて融合して二人はまおゆうになって帰ってきたのだから驚天動地だろう。

 特に蒼白になったのは勇者の仲間だった魔法使いだ。彼は魔王討伐(それと議会の密命を果たした)の功績もあって政界入りし、初当選したばかりだった。


「ゆ、勇者よ、その魔王を何とかできないのか!」

「何とか、と申されましても。自分はどうしたら良いでしょうか?」


 議員たちは一旦集まり相談すると緊急動議を提出した。


「勇者に魔王の討伐を命令します。賛成の諸君、起立を願います」

「賛成」

「満場一致によって本案は可決。すぐにその魔王を討伐せよ」


 その瞬間、議長の首が斬り飛ばされ議事堂のオブジェと化す。振るわれた勇者の剣が、次は議員たちの方に向けられた。


「聞いてみただけだ」

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