第3話 籠の鳥
思っていた通り、私は売られたようだった。
それも娼館に。
身綺麗にされて、毎日男と一緒の部屋に入れられて、色々された。
脱がされたり、突かれたり、舐められたり。
気持ち悪いと思いながらも、実家にいた頃と大差なかったので我慢できた。
酷い奴隷のような扱いを受けるかと思っていたが、自分の部屋を与えられて、食事も普通に与えられた。男たちの性の吐け口にされる以外はそんなに悪い環境ではなかった。
それから数ヶ月もすると、言葉を理解できるようになってきた。
いくつか分かったことがある。
この国はレーリリアル王国という名前らしい。この世界はどうやら異世界のようだった。
魔法があったり、エルフやドワーフがいたりなど、ファンタジー系の世界らしい。
私の境遇としては、娼館に売られた性奴隷という状態らしい。奴隷なんですね。
ちなみに、奴隷制度はこの国では合法とされているため、奴隷から抜け出すには権利書を破棄する必要があるとのこと。
そんな話を私のお客さんから仕入れたりしていた。客の中にはこの街の衛兵もいたので、法律関係も色々教えてくれた。
私の状況について説明したところ、私の権利書を燃やしてしまえば、法的には自由になれるとのことだった。あとは、誰かに私の権利を買ってもらうのも手らしいが、私は割と売れっ子だったため、娼館側が売り渋るだろうとのことだった。面倒。
正直この環境には嫌気がさしてきていたので、脱出することにした。
男たちを籠絡してチップを出させて、こっそり貯金を増やしていった。
また、娼館のオーナーと仲良くなって、事務系の仕事を手伝ったりもしていた。
その中で、私の権利書の場所も把握した。
正直、言葉さえ分かれば男たちを誘導するのは簡単だった。
男たちが求めるものを与えてあげる中で、私の都合のよい方向に向けてあげればいいだけなのだから。日本にいた頃と比べて、今の私の見た目はかなりよくなっていることも都合がよかった。
それから数ヶ月、1年間働かなくても生活できる程度のお金を貯めた頃に抜け出すことにした。
オーナーの部屋に行って、晩酌として供するワインの中に睡眠薬を混ぜて眠らせて、オーナーのポケットから鍵を拝借。事務室の中の金庫をその鍵で開けて、私の権利書を暖炉の火で燃やしてしまう。気休めかもしれないけど、私が抜け出したことが発覚するのを遅らせるために、オーナーのポケットに鍵を戻しておく。
ちなみに、明日は私の仕事の休日だったため、自室で寝てると思われば発覚しづらいだろう。
自室に戻って、目立たない服に着替えて、上からローブを着て、顔にはフードを被る。
準備が終わったので、裏口に向かう。
外に出る前に何となく一礼する。
お世話になりました。
そして私は夜の街に消えていった。