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ゴタゴタ。

 各領地を通過する際に、そこの領主と面会する。それが暗黙のルールのようで、タッカーさんもうんざりしているようだ。

 ただ、正式に認可されるかどうかは不透明だけど、これから新米領主としてやっていくのならば、各領主との面通しはやっておくに越した事はない。


「特に領地が隣接している連中とはあまり仲良くないからな。隙あらば掠めとる。それが貴族の世界だよ」


 タッカーさんによれば、今回もポー領の領主が死んだ事で、領地を少しでも奪えないかと狙っている連中もいるって事だね。そんな事がまかり通るのかと思うんだけど、実効支配し、理由は後付けで王家に報告してしまえば承認される事も多いらしい。大丈夫かな、王家。


「王家っていうか、今の政治中枢が、だな。金さえ握らせればどうにでもなる連中が多いって事だろ。ブンドルがいい例だ」


 タッカーさんが吐き捨てた一言に、思わず納得してしまう。あんな汚い奴が幅を利かせて許されているって事は、それだけ甘い汁を吸ってる偉い立場のヤツもいるって事だ。

 僕が今プラチナランカーだったら、そいつらを潰しても許されるのかなって考えちゃうね。


「一応先触れを走らせてあるからな。行く先々で貴族と面会って訳だ。その反応で敵か味方か、ある程度判別できるヤツもいるだろう」

「宿泊はどうするんです?」

「一般の宿だよ宿!」


 貴族によっては宿泊するよう勧めていく者もいるし、それが格上ともなると中々断りにくいと思うんだけどなぁ。僕がその事を告げると、タッカーさんも分かってるとばかりに頷きながら答えた。


「そんな事は分かってるけどよ、そこが敵の巣の中って事もあるからな。護衛達に囲まれた宿屋の方が安心できる」


 そういうものか。

 そこで今まで黙っていたケルナーさんが口を開いた。


「そこでだ、お前達の手腕を頼りにしたいって事なのさ。先代が悪事に手を染めていた分、口封じのための暗殺部隊の練度は高かった。それを何もさせずに捕縛、しかも誰も殺さずにだ」


 うん、まあね。でもそれに関してはノワールの力が大きい。生死不問ならむしろノワール一人でやった方が早いし。


「僕の仲間は優秀ですから。ところで、次の宿泊場所は大丈夫なんですか?」


 ケルナーさんの言葉を軽く流し、そのまま自然に話題を元に戻した。

それについてもケルナーさんが答えてくれた。

 この先数日間は、貴族に対する警戒はそれほどしなくてもいいそうだ。伯爵家に表立って弓を引けるような大物ではないらしい。ただ、賊に襲われたりするのを黙認する可能性はあるから、むしろそちらを注意した方がいいだろうとの事。

 大変なのは王都に入る前に最後に通過する領地なんだって。王都の東西南北に隣接する領地はいずれも公爵家なのだそうだ。公爵といえば爵位で言うと最高位で、王家の分家筋が新しく家を興した場合に公爵を名乗る事になる。つまり王様の親戚なんだよね。

 北にノルデン公爵家 水の精霊王の加護を受けていると言われている。

 南にシュッド公爵家 この家は火の精霊王の加護を受けたそうだ。

 東にオスト公爵家 風の精霊王が加護を与えた家。

 西にザフト公爵家 そして土の精霊王はこの家に加護を与えた。

 これらが俗に四公家と言われている。

 グリペン侯爵家をはじめとする二候四爵家が王の剣ならば、この四公家は王の盾と言った感じだろうか。


「俺達の領地から向かうと、どうしても通過しなければならないのが東の公爵オスト閣下だ。良くも悪くも一本気な頑固なお方だ。親父のやった事の是非はともかく、親殺しの罪を着た俺を許すとは思えないんだよなぁ」


 タッカーさんが困ったように頭を掻いた。その横でケルナーさんも首を振っている。そんな諦めないで!


「許されなかったとして、タッカーさんはどうするんです?」

「そうだなぁ……」


 そうして考える事しばし。


「公爵家の権限で俺を処分する事は難しいが、王家の裁定に口出しする事は可能だ。その結果、俺が家を継げなくなるのはまあ仕方ねえ。けど、問題はポー領を治める後釜が誰になるかってのが問題だ」


 なるほど。領民を第一に考えれば、治める領主がまともな人間なら別にタッカーさんじゃなくても構わない訳で。


「もし、親父みたいな奴が領主に据えられそうなら、やるしかねえだろうなあ……」


 やるしかない、か。王宮でひと暴れするのか、それとも領地に戻って反旗を翻すのか。どっちにしても、覚悟は有りそうだ。


「もし、タッカーさんが徹頭徹尾、領民の為に命を懸けるなら、出来る限りの協力はしますけど」


 僕に言えるのはそれくらいだなぁ。まあ、そんなゴタゴタに巻き込まれて、プラチナランク昇格試験なんて受けられるのかって話もあるんだけどね。


「はっはっは! こいつは高く付きそうだ!」


 僕の一言に、タッカーさんは笑ってそう答えた。

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