城からの呼び出し
「なんか、申し訳ありません。僕達のゴタゴタに巻き込んでしまって」
僕が謝罪しているのはマシューさんだ。理由はこのポーバーグへ滞在の延長を余儀なくされた事。マシューさん親子にしてみれば、なんの利益も生み出さない、ただの時間の無駄だもんね。
ケルナーさんが宿に来訪した次の日、全員で冒険者ギルドに向かっている。ケルナーさんに提案された依頼を受ける旨をギルドに報告する為だ。
「いえいえとんでもない。夜襲を仕掛けようとした相手を、事前に無力化して下さったんです。もしもショーンさんがいなかったらと思うと、冷や汗が流れますよ」
そう言って彼は恐縮する。うん。申し訳ないけど数日は留まってもらおう。ただ、心配なのはリンちゃんだ。同年代の友達もいない旅が続いており、気分も鬱屈してるんじゃないかなって。
「だいじょーぶだよ! おねいちゃんたちやおじいちゃんがあそんでくれるから!」
でも、リンちゃんは無邪気な笑顔でそう言ってくれた。にへっとした笑顔で見上げてくる姿がとても愛くるしい。思わず頭をなでなでしてあげてしまった。
「呆れた。あんた、そんな幼女にまで手を付けるつもり?」
「ちっ違うよっ!」
酷いなデライラ。そもそも僕は誰にも手を付けてなんてないぞ!
むしろ手を付けていただきたいのですが、なんていうノワールの呟きをスルーし、むしろ我から手を出す機会を窺っているのだが、なんていうアーテルの大きな声を敢えて無視し。
「なんじゃ、やっぱり幼女趣味じゃ――ぶぼっ!?」
調子に乗って畳みかけてきたグランツに割と遠慮なく水弾をぶつけた。そんな事をしているうちに、冒険者ギルドが見えてきた。今は総勢八人の大所帯なので、僕とデライラが代表して中に入って話を通すことにした。
ギルドの扉を開いて入ると、中で依頼を探していたり、ミーティングをしている冒険者達の視線が刺さる。なんだろう? 別に見た目は特別じゃないしなあ? ああ、デライラは美少女だけども。
『おい、あいつらだろ? 噂のグリペン侯爵お抱えの冒険者って』
『なんでも、ブンドル商会の刺客を無傷で蹴散らしたって話だぜ』
『むしろ、領主を暗殺したんじゃねえかって話だ』
全くヒソヒソしていない冒険者達のヒソヒソ話が丸聞こえだよ……
酷く居心地の悪い思いをしながら、僕とデライラはカウンターに行った。グリフォバーグの冒険者ギルドよりは幾分規模が小さく、窓口は三つ。その中に一つに向かう。
「ゴールドランカーのショーンです。僕等のパーティ『ダークネス』に軍のケルナーさんから依頼が入っているかと思うのですが」
「あっ、はい! えーと……あ、依頼はございませんが、伝言なら承っております」
ゴールドランカーと聞いて一瞬驚いた表情をした受付嬢さんが、僕の首にあるゴールドのタグを見て瞬時にお仕事モードに切り替わる。
その内容はちょっと予想外だけどね。
「伝言の内容は?」
「はい、詳細を詰めたいので城まで来ていただきたいとの事です。門番に話を通してあるので、ケルナーさんの名前を出せば大丈夫だと」
デライラの質問によどみなく答える受付嬢さんに、特に不審な点は見られないね。僕とデライラは互いに顔を見合わせた。
「どうしようか?」
「行ってみれば? あんたならどうとでもなるでしょ」
まあ、それもそうか。
「それじゃあ、今からちょっと行ってきます」
「あ、それならばギルドで馬車を用意しますね。えーと、八人だから少し大きめの……あ、あります。空いてます!」
ちょっと待って。八人?
「あの、僕達のパーティだけじゃないんですか?」
「ええ、伝言には八人全員でとありますね」
うーむ……
マシューさん親子を人質に取ってとか?
まさかね。むしろ僕達を戦力を分散させて各個撃破っていう作戦も取れなくはない。それが成功するかどうかは別の話だけども、それをしてこないっていうのは相手におかしな思惑は無いって事かもね。
「なるほど、それでは行きましょうか。全員外で待機してますから」
「分かりました。すぐに職員を手配して、表に馬車を回します」
受付嬢さんはそう言ってカウンターに『close』の札を立てかけ、奥に引っ込んでいった。同時に、僕とデライラは言葉を交わしながら外へと出ていく。
「もしもの時はマシューさん達を頼むよ」
「ええ、任せなさい。まあ、あんたならどうとでも出来るでしょ」
確かにそうなんだけど、自分だって似たようなモンでしょ。何なの、その謎の信頼感は。そんな会話をしながら外に出ると、リンちゃんと戯れるノワール、アーテル、グランツ。それを微笑みながら見つめるマシューさんとルークス。
なんだかすごくいい絵面なので邪魔するのも気が引けたんだけど、心を鬼にして声を掛ける。
「みんな、今からお城へ行く事になったんだ。ギルドの馬車で一緒にいこう」
「わーい! おしろにいけるのー? たのしみー!」
一瞬みんなの表情が引き攣った気がしたけど、リンちゃんの言葉が再びみんなを和ませた。




