正論で論破
「ショーンさん? 『ご主人様』とはどういう事でしょう? まさか助けた弱みに付け込んで奴隷契約を?」
ちょっとパトラさん、目が怖い!
大体、奴隷契約なんて、専用の首輪とか付けないとダメじゃないですか!
僕にそんなお金ある訳ないでしょ!
「ちょ、待って下さい! 彼女、僕より強いですから! 僕が何か悪さしようとしたら僕殺されちゃいます!」
僕は慌てて弁解するけど、パトラさんの視線はまだ疑っている。
「酷いなあ……僕がそんな事する人間だと思ってたんですか?」
肩を落としてしょんぼりだ。いや、演技じゃなくてこれはマジで落ち込むよ……
その姿を見兼ねたのか、今まで大人しくしていたノワールがずいっと一歩前に出た。視線はパトラさんに向けているが、意識は周囲全体に向けているのが分かる。
「ここにいる皆様は、ご主人様に何か恨みでもあるのでしょうか? ご主人様は己の命を懸けて、どこの誰とも分からぬ私を助けて下さいました。これは賞賛されるべき事であり、そのような悪意に満ちた視線を投げかけられる謂れはないはずです!」
さすが大精霊、威圧感が半端ない。僕もちょっと怖い。
更にノワールは続ける。
「それに奴隷契約? とんでもない。ご主人様は私を助けて下さった恩人であり、その人格、実力共にお仕えするのに申し分なしと判断したから従っているのであり、決して強制されたからではありません!」
ギルド内がシンと静まり返る。
「あの……ショーンさん? ごめんなさい、私……」
ノワールに論破されたパトラさんがしょんぼりと謝罪してきた。
「ああ、いいですよ。この街で悪意に晒されるのは慣れてますから」
今のはちょっと性格が悪い言い方だったかもしれない。でも、実際そうなんだ。唯一、パトラさんだけは優しく接してくれたけど、結局ノワールの助け船がなければこの程度だったって事だし。まあ、別にどう思われようが構わないけどね。
「さあ、行こうか、ノワール」
「はい!」
換金もしたしノワールの冒険者登録もした。あ、パーティ登録するのを忘れちゃったな。まあいいか。ノワールの服や装備品を揃えてからでもいいだろう。
僕達はギルドを出た。
街に出た僕達は、最初に衣料品を売っている店に行った。ノワールはなぜかピッタリと身体のラインが出る黒いボディースーツを欲しがったので、それを購入。ツナギタイプなので上下買い揃えるよりは安上がりなのかもしれないけど……
さっそく店の中で着替えてもらったのだけど、これが中々刺激的だった。
「もうちょっとゆったりしたデザインの服でもいいんじゃないかな……?」
「いいえ、これがいいです!」
しっかりと形が分かるお尻から目を背けながらそう言うけど、ノワールは頑として譲らない。
「あとは、これとこれがいいです」
次いでノワールがおねだりしてきたのは、ひざ下まであるロングブーツ。まるで寒冷地で履くような毛皮のブーツだ。そして胸の下くらいまでの短い丈でフードが付いているジャケット。
「おお……」
「どうですか? ご主人様」
「カッコイイよ。それにキレイだ」
「うふふ……」
なんだろう?
クールでセクシーなのに顔を見ればあどけなさが残るアンバランスさ。これは反則だ。
っと、見とれてばかりもいられない。次は装備品だな。衣料品店を出て、武器や防具を売っている店に行く。
「ご主人様? 私に装備は必要ありませんよ?」
まあね、精霊だからね。大魔法は撃てるし物理攻撃は意味を成さないチートな存在だもんね。
「ああ。でも冒険者をやる以上は、最低限それっぽく見える装備を身に付けておかないと面倒な事になるんだ」
「ノワールだって、ウサギだった時に経験あるだろ?」
「ああ……理解しました」
毛色が違う。耳が垂れている。毛が長い。そんな理由で他のウサギから迫害されていたノワール。バカバカしい話だとは思うけど、見た目っていうのは重要な要素なんだよね。
ノワールがそこを理解してくれたところで、最低限の装備を購入した。ボディースーツの上に装備する革の胸当てと、剣帯を腰に巻く。そして短剣を二本。あとは革のグローブ。うん、軽装のアタッカーに見えるね。カッコいいぞ。
「ご主人様のはよろしいのですか?」
ん?
僕は一応だけど初心者用の装備を揃えている。胸部を守るレザーアーマーと同じくグローブ、ブーツ。それに短剣とフード付きのローブ。駆け出しの頃から変わってないんだよね。だって俺は後衛で、殆どの魔物はデライラがバンバンやっつけてたからさ。
でも、森に籠ってノワールと修行している間に分かった事がある。闇魔法使いの強みってヤツを。
「そうだな。僕も武器は必要だよね」
そこで僕が手に入れたのは二本の短槍。片手で扱える長さと重さだけど、これを連結させると僕の身長と同じくらいの、穂先が両端にある一風変わった槍になる。トリッキーだし小回りも効くこの武器は、僕にピッタリかも知れない。
「まいどー」
安物の装備しか買わなかった僕達に気の無い挨拶をした店主をスルーし、二人で店を出た。市場で夕食用の材料を買い込み、家へと向かう。
「ご主人様」
「ああ」
少しすると、前方から四人組が歩いて来るのが見える。
「ショーン!?……なぜ戻って来たのよ!」
そう、デライラとそのパーティだった。




