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ブンドルによる汚染

「ゴールドランクのパーティ相手に、これといった取り調べもないまま暴行を加えた。死ぬ覚悟は出来てるんですよね?」


 ノワールに手を上げた兵にそう言う。

 すると今度は、手にした警棒を振りかざして殴り掛かってきた。


「いい加減にしてください」


 僕は瞬時にロープを引きちぎり、兵士の顔面に水弾をぶつけた。それほど威力は出してないけど、出鼻を挫くのには十分だ。

 そして身体強化を施したパワーで、兵士の横っ面をぶん殴る。頬骨が砕けた感触を残して兵士が十メートル程も吹っ飛んでいった。


「き、貴様!」

「おっと、動かないで下さいね?」


 僕は頭上に火球を十個ほど浮かべて周囲に集まってくる兵達を牽制する。そしてノワールもアーテルもロープを引きちぎって立ち上がり、僕の後方を守るように立った。

 ……と思ったら、ノワールはとことことさっき僕が殴り飛ばした男に向かって歩いていき、げしげしと踏みつけている。


「気が済んだかい?」


 一頻り踏みつけたあと、ノワールがいい笑顔で戻ってきた。


「はい! ご主人様が先にキレて下さったので、殺さずにすみました」

「フッ、そうだな。危うく我が先に八つ裂きにするところだったぞ」


 気が長い二人で助かったね。


「貴様等、こんな事をして――」

「あなた方こそ、僕達にどんな罪があると言って拘束した上に暴行したんですか?」

「だ、だから要人に対して暴行を……」

「要人とは?」

「……」


 僕との問答に答えを詰まらせた役人が俯く。


「答えられないなら僕が言いましょうか?」

「!」

「王家お抱え商人のブンドル」

「……」

 役人は俯いたままだ。


「いくら貰ったんです?」


 周囲の兵士達はノワールとアーテルの殺気に当てられて動けないが、ざわつき始めた。自分達の上官が賄賂を貰っていた疑いがある事に対してだろうか?

 それならば、この兵達は命令に従っただけで『白』という事になるけど。


「ブンドルに暴行されたのは、僕のクライアントであるマシューさんの娘、リンちゃんの方です。捕縛するならブンドルの方では?」

「だ、だまれ! 貴様の言う事になんの証拠が!」

「じゃあブンドルの言葉にどんな証拠が?」

「そ、それは……」


 役人が言い淀む。というか、証拠なんて無いんだから言える訳がないよね。


「社会的立場が貴様とは――」


 立場のある人間が正しいっていうのは、ある意味正論だろう。実際に今起こっている事がそうだ。だけど、面倒になってきたので、僕は影収納の中から一通の書状を取り出した。そしてその封蝋を役人に見せつけるように掲げた。


「そ、それは!?」

「ええ、ノア・グリペン侯爵閣下の書状です。僕は閣下の意向で王都に向かう途中だったのですが社会的立場というならこちらの方が重いですよね?」

「く……」


 形成逆転かな? それなら畳みかけようか。


「あなたの理屈だと、あなたが賄賂を受け取ったかどうか、証拠の有無なんて関係ないですよね?」


 そこまで言うと、役人がガックリと膝を付いた。


「さて、皆さんはどうしますか?」


 あとは僕等を取り囲む兵士達なんだけど……


「俺はこの部隊を預かるケルナーだ。俺達はその人の直属の部下からの援軍要請を受けて来たんだが、その人とは指揮系統が別でね。取り敢えず来てみたはいいが碌な説明も受けていないんだ。詳しい話を聞かせてくれないか?」


 僕等を取り囲む兵士の中から一人、眼光鋭い一人の男が前に進み出てきた。三十代半ば程だろうか。一目で分かった。この人は出来る。とは言っても僕達の障害になる程じゃないかな。冒険者で言えばシルバーランカーと言ったところだろうか。

 取り敢えずは話が通じそうな人物が出て来たので、僕はグリフォバーグでの経緯を話した。そして、僕達がプラチナランクへの昇格試験に向かっている事も。


「なるほどねえ……プラチナランクになるには、そのギルドがある領地の領主の推薦状が必要だ。つまり、あんた達の事は実力、人格共に申し分なし。領主にそう保証されている事になる」


 プラチナランカーの条件は、卓越した実力とともに、人格も優れていなければならないというのがあるんだよね。つまり僕はグリペン侯爵からそのあたりのお墨付きをもらっている訳で、その僕に罪を着せようとした者は、グリペン侯爵の顔に泥を塗るも同じ。


「はっはっは。あの豚商人、エラいヤツに喧嘩売っちまったなぁ」


 そうだよね。思い起こせば、僕が侯爵の意向を受けている証明としてグリフォンの紋章入りの短剣を見せた。だけど、それだけでは少々腕の立つ冒険が侯爵の指名依頼を受けただけという認識でしかないかもしれない。

 ところが、プラチナランクの推薦を受けているとなるとまるで話が変わってくる。


「あ、あ、そんな……」


 僕とケルナーさんの話を聞いていた役人は、すっかり土気色した顔になっている。自分がやらかした事の重大さに気付いたみたいだね。


「ケルナーさん、この人の事は任せていいですか? 僕等は無罪放免になればそれでいいので」

「あ、ああ。だが、この人をお縄にしても無駄かもな」

「え? それはどういう?」


 ケルナーさんは苦い顔で溜息をついてから続けた。


「そりゃあ、領主である伯爵サマも買収されてるからな」


 なるほど、領地まるごと汚職まみれかぁ。でも僕にはあんまり関係ないんだよね。


「その辺は僕はどうでいいいんで、後はおねがいし――」

「どうでもよくないでしょ!」


 その時、聞き覚えのある声が飛び込んできた。

 

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