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解放

 ノワールの身体から湧き上がる赤みがかった黒い魔力は、僕と目線の高さで徐々にヒトの姿になっていく。

 と言っても、黒い(もや)のような魔力が集まってヒトの形を成しているだけで、まるで影をみているようだ。その『影』が、胸に手を当て僕の前に跪いた。

 穴の上だから実際は浮いているんだけどね。

 

「この度は私を封印から解放していただき、ありがとうございます」


 喋った?

 しかも封印ってなんだ?

 いや、その前にこれは一体なんなんだ?


「私は闇の大精霊。遥か昔、私達闇属性の存在を疎ましく思った四大精霊達が、大した力も持たない小動物に封印したのです」


 四大精霊とは、火、水、風、土の精霊の事だ。その精霊達の頂点には、それぞれ精霊王と呼ばれる存在がいるらしいけど、とても人間が制御できる存在ではないって話だ。

 その事は今はいいか。その四つの属性以外に闇という属性があった事が驚きだ。


「私達闇の精霊は、他の四属性と比べて個々の力は遥かに強いのです。ですが数が少なくそれを統べる精霊王もおりませんでした」


 そう語る闇の大精霊の話を聞いて、僕はなんとなく事情を察した。

 四大属性にはそれぞれを統べる精霊王という存在がいる。それは人間ではとてつもなく強大だ。。

 恐らくだけど、大きな力を持つ闇の精霊達を恐れた四大精霊達は、闇の精霊達を統べる存在が生まれる前に、その存在を封印しようとしたんじゃないかな。


「ご推察の通りです。流石はご主人様」


 ご主人様?

 てか、なんでさっきから僕が頭の中で考えてる事に的確に返事してくるの?


「私は二度も助けていただきました。ウサギの群れに虐められている時。そして封印から解き放って下さった今この時です」


 もう、何が何だか訳が分からないよ。少し落ち着いて考えたいな。

 僕は近くの大きな木に背中を預けて腰を下ろした。あまりに信じられない事が目の前で起こっている。現実逃避したい。


「ご主人様、大丈夫ですか?」


 僕が眉間を揉み解していると、心配そうに(表情は分からないけど)闇の大精霊が話しかけてきた。


「ああ、色々と混乱しているだけだよ。それで、君はノワールでいいのかな?」


 ヒトの形はしているけど、黒い靄が集まってそうなっているだけで、顔がある訳でも実際に喋っている訳でもない。それでも僕はこの存在と意思疎通をしているのだという事実を認める為に、ノワールかどうか問いかけた。


「精霊には個々を判別する為の名前はありません。ですがご主人様が助けて下さった黒ウサギの事を言っているのであれば、私はノワールでもあります。なので……」


 人の形をしていた魔力の靄がその形を崩し、スーッと僕の身体に入り込んできた。

 何故かな? 普通ならここで慌てたり恐れたりするところなんだろうけど、僕は不思議とそれを受け入れる事を拒絶しようとは思えなかった。

 やがて、その靄が全て僕の身体に吸収されると。


「……なんだこれ? 内側から力が漲ってくる?」

(はい。これからは私がご主人様の力となります)


 そして、頭の中でノワールの声が響く。


(それにしても、ご主人様は規格外のウィザードなのですね。私を浄化する為にあれだけの魔力を放出しながら、すでにこれだけの魔力が回復しているなんて……)


 そうなのかな? ノワールが驚きと感嘆が入り混じったような話し方をしているけど、何しろ僕はまともに魔法を発動できない出来損ないのウィザードだ。冒険者登録の時の魔力測定で魔力量は多い事は分かっていたけど、ただそれだけの存在だと思ってたし。


「僕の魔力量はゴールドランク相当だそうだよ。確かに多いかもしれないけど、そう驚く程のものなのかい?」

(ご主人様がゴールドランク?)

「ああ、ギルドの測定器では確かにそういう結果だったよ」


 僕がそう言うと、どうやらノワールは考え込んでしまったみたいだ。そして暫くすると。


(ご主人様は、闇属性の事をご存知ありませんでしたよね?)

「ああ。でも僕だけじゃなくて、闇属性なんてものがあるなんて、知ってる人はいないと思うよ?」

(なるほど……)


 精霊は四つの種類に分類される。これは世界の常識と言っていい。ノワールのような闇属性の精霊がいるなんて、こうして会話でもしていなければ僕だって信じられないよ。


(そのギルドの測定器とやらは、闇属性と親和性のある魔力には反応しないのではないでしょうか?)

「え?」


 ノワールの言葉に、僕は思わず間の抜けた返事をしてしまった。


(ご主人様のお話から鑑みるに、今は闇属性というものが無かった事にされているようではありませんか。ですからその魔力測定器も、四大属性に親和性のある魔力にしか反応しないように作られていたのでは?)


 なるほどな。

 それは尤もな感じがする。


(そして、ご主人様の魔法に対して精霊達が従わなかったのは、闇属性の力が強すぎたためだと推察致します)


 はぁ~、なんか説得力が凄いね。それなら、四大属性のみでもゴールドランク相当の魔力を持っている僕は、計上されなかった闇属性まで合わせると、とんでもない魔力量を持っているって事か?


(そうですよ、ご主人様。私がご主人様を最強のウィザードにしてみせます!)


 あ、なんかノワールの気合が伝わってくる。

 それから僕は、ノワールといろんな話をした。精霊の話、魔法の話。

 そして、ノワールを殺したヤツの話も。

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