残滓
本日二本目です!
デライラがパーティから抜けていったあの日から、僕はソロで依頼を受けている。
今現在での僕の冒険者ランクはブロンズ。一応魔物の討伐なんかも受けられるんだけど、ロクに魔法を使えないウィザードが魔物と戦える訳がない。戦士系のジョブと違って、魔法を使えないウィザードなんてただの人だからね。
「よう、残滓! 今日も薬草採取か? ああ、それとも迷子の子猫ちゃんでも探すのか?」
「ギャハハハハ! ブロンズランクだってのに討伐依頼を受けねえなんて、とんだ腰抜けだぜ!」
僕は今日も薬草採取の依頼表を掲示板から剥がし、受付カウンターへと持って行った。それを目敏く見つけた他の冒険者たちがからかってくる。
まあ、それもそうなんだよね。採取系みたいな依頼は、魔物との戦闘が出来ないような駆け出しの冒険者、つまりウッドランク御用達の依頼であって、ブロンズ以上のランカーは殆ど受ける事がない。
収入も少ないしギルドへの貢献度も少ないから、昇級までの道程も遠くなる。でも、今の僕には……
「ショーンさん……パーティメンバーはまだ見つかりませんか? いくら採取系の依頼と言っても、全く魔物と遭遇しない訳ではありませんし、ウッドランカーの方とでもパーティを組んだ方が……」
受付嬢のパトラさんが心配そうな表情でそう言ってきた。
「ははは……その、中々見つからなくて」
僕はそう言って愛想笑いを浮かべる事しかできない。勿論パーティメンバー募集はしたし、逆に募集しているパーティに参入をお願いもした。
だけど、残滓の二つ名はウッドランカーにも広がっていて、誰も僕と組もうなんて人は現れなかった。
「そうですか……困った事があったら相談してくださいね? では、お気をつけて」
「はい。ありがとうございます」
いつものように優しい笑顔で送り出してくれたパトラさんに礼を言い、冒険者ギルドを出ようとしたその時だ。
「!!」
「あら」
ギルドを出ようとする僕と、依頼を終えて戻って来たらしいデライラと鉢合わせた。彼女の後ろには僕よりもやや年上くらいの男が三人。
「デライラ……元気でやってる――」
「おーおー、残滓君じゃないか。いやあ、デライラはホントに優秀だな。これでまだブロンズだってんだから信じられないよ!」
デライラに声を掛けようとした僕の言葉を遮り、大きな盾とハンドアックスを持った男が割って入ってきた。
「こんな出来損ないのウィザードなんかと組んでたから昇級が遅れたんだって」
「そんなハッキリ言ったら残滓君が気の毒じゃん。ハハハ!」
更には身軽な装備の双剣の男と、弓を持った男が畳みかけるように話しかけてくる。いや、寄ってたかって僕を笑い者にして楽しんでいる。そんな感じだ。そして、始めに話しかけてきた盾の男がドスを効かせた声で凄んで来た。
「てめえ、目障りなんだよ。冒険者なんてやめて、とっとと田舎に帰んな」
そして僕の肩を突き飛ばすようにしてギルドへと入って行く。他の男達もニヤニヤしながら僕を見ながら後に続いていった。
「ショーン。あんた、村に帰った方がいいわよ。さもないと、死んじゃうわよ? いい? これ以上は言わないから」
最後にデライラが、特に感情も籠っていない声でそう言い、視線も合わせずにギルドへ入って行った。
確かにね。デライラやパトラさんが言うように、魔法が使えないウィザードがソロで冒険者なんてやっていても、明るい未来なんかないだろうなぁ。
何しろ僕は『残滓』だ。パーティなんて組めっこない。それに地道にランクを上げていったところで、魔法が使えるようになる訳でもないだろう。
「ノワールと一緒に田舎に帰るか……」
そんな事を考えながら、僕はノワールが待つ家へと向かった。
ノワールは妙に賢いウサギだ。僕が掛ける言葉を理解しているんじゃないかって思う時がある。田舎までの旅路も、彼女と一緒なら寂しさも紛れるだろうな。
今の僕には、ノワールは無くてはならない存在だ。気落ちし、心を折られ絶望しても、家に帰ればあの愛くるしい瞳が僕を癒してくれる。大切な家族以上の存在なんだ。
それでも、旅の途中でノワールが森へ帰るような事になっても、それはそれでいいんじゃないかと思っている。元々彼女が生活すべき場所は森なんだし。
さあ、家が見えて来た。旅支度を始めなくちゃだね。田舎に帰ったら畑でも耕すさ。
△▼△
ショーンと袂を分かった後、デライラは少しばかりの異変を感じていた。それも、戦闘時のみに感じる異変。
(……おかしい。身体が重い?)
新たなパーティメンバーと共に受けた魔物の討伐依頼を熟しながら、デライラは自らの動きに首を傾げている。
これと言ってどこか体調が悪い訳ではない。しかし、戦闘になると自分が思った程には身体が動いてくれないのだ。
走る事も、飛び跳ねる事も、咄嗟の反応も。どれも今までの自分のイメージに比べてワンテンポもツーテンポもズレがある。
幸い、今日の相手は強い魔物ではない。ほんの少しばかりの違和感程度で支障が出る事もない。実際、新たなパーティメンバー達はデライラの働きを絶賛していた。
「さっすが未来のソードマスターだぜ!」
「デライラが入ってくれて、随分楽に討伐が出来るな!」
最後の一匹を斬り捨てたデライラに駆け寄り、そう称賛する。
「ええ、ありがとう……でもまだまだ精進しなくちゃね」
自らの違和感は研鑽が足りていないせいだ。デライラはそう思う事で取り敢えず納得する事にする。
(まさか、ね)
一瞬だけ彼女の脳裏に過ったのは、ショーンの姿。
そして、物思いに耽るような彼女を見る新たなパーティメンバー達が、目配せをして頷き合う……
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