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デライラ、女王とご対面③

「まさか……かつて創世神ルーベラ様の左右におわしたという神獣様が、あなたの眷属に?」


 本来の姿を現したグランツが肩に泊まるデライラを見て、女王であるレベッカが放心状態になる。さらに侍女と護衛達はグランツの威光に畏れを抱いたか、平伏してしまった。


「ええまあ。そういう事になります……かねえ?」

「それでは、もしやそちらのルークスという冒険者は……」

「ああ、彼は光の大精霊が具現化して人の姿をしている者です」

「なんと……」


 もはやレベッカは言葉も出ない。確かに四公家はそれぞれ精霊王の加護を受けている。しかし精霊そのものを眷属にしているなど聞いた事がない。それをこの目の前の少女は精霊の上位に立つ者と神獣を眷属に従えているのだ。

 いくら女王といえ、もはや人の身で彼女の前で対等以上に接するべきではない。そんな考えが頭を過り、レベッカはデライラを前に跪いた。


「ちょっ!? やめて! やめて下さい!」

「いやしかし、大精霊と神獣を従えるなど、もしかしてルーベラ様が降臨なされたのでは……」

「違う! 違いますって! お願いだから立って下さい! もう、グランツ! あんたのお陰でこんな!」

「ふぉふぉふぉ」

 

 神獣をまるでペットでも扱うかのように気安く接するデライラに、レベッカはすっかり彼女を上位の存在として認識してしまった。しかし、デライラはただの村娘であり、創世神ルーベラの神託で冒険者を志して今に至る事を説明する事でようやく対話できる空気を取り戻した。


▼△▼


「では、陛下もブンドルの排除を狙っておられたのですね」

「ええ。ですがアレに与する貴族や役人などが多いため、いままで実行に移す事が出来ませんでした」


 デライラの質問にレベッカが頷きながら話す。

 ブンドルを排斥するのにも現状はあまりにも味方が少ない。いや、味方と思っていた者すら本当に味方かどうか分からない状況であり、下手に動く事が出来なかった。


「私はまだ二十歳にも満たぬ小娘です。隙あらば私を追い落とし、王座を狙う者もいるでしょう」


 レベッカは悔し気に唇を噛み、そう言った。


「ルークス?」

「ええ、この人間の娘の言う事に偽りはありませんね」


 デライラも全面的にレベッカを信用している訳ではない。そんな彼女の言葉に偽りがないか、ルークスに確認させた。


「……大精霊とは偽りの言葉を見破る事が出来るのですか?」

「ええ、造作もありません。もっとも、その気になれば、ですが」


 レベッカの質問に、ルークスが爽やかなイケメンスマイルを浮かべて答える。


「デライラ様――」

「デライラでいいです!」

「では、デライラさん」

「はあ、まあいいです。なんでしょう?」


 明らかにデライラを上位の存在と認識してしまったレベッカは、つい様付けで呼んでしまい、デライラに窘められる。しかしデライラもこれ以上譲歩させるのは難しそうなのを悟り、諦めにも似た感情で話を進める事にした。


「ええ、その宝剣をあなたに授ける事の真意に関してです」


 レベッカが言うには、ショーンが起こしたトラブルのお陰で対ブンドルに関しては味方と言える大きな勢力が明らかになったと言う。


「グリペン侯爵、ポー伯爵、それにオスト公爵ですね」


 四公家、そして二候四伯家の一角が味方に付き、明らかにブンドル派だったポー伯爵も代替わりで味方に付いた。特にグリペン侯爵とオスト公爵が反ブンドルを表明したのは大きいとレベッカは言う。両者とも押しに押されぬ大貴族、ブンドルに従う者とてそう簡単に潰せない相手だ。


「そして、あなたにその宝剣を託し、私と共に戦って欲しいのです!」


 なるほど、とデライラは得心がいく。つまりこの女王は戦力が必要だったのだ。ブンドルを叩く為に。それだけの理由ならばデライラに断る理由はない。


「ショーンと共に行動している以上、ブンドルは敵です。陛下に言われずとも、アレとは戦う事になると思っていますので」

「では!」


 デライラの答えに、レベッカの表情に喜色が浮かぶ。


「ですが、その宝剣は受け取る訳には参りません」

「あはは」


 そして直後、レベッカの表情が絶望に変わった。コロコロと表情が変わるレベッカに、デライラは思わず笑いを零してしまった。


「失礼しました。早合点しないで下さい。その宝剣は陛下がお使いになればよろしいのでは?」

「しかし私には光属性は……」

「ルークス、何とかなるんでしょ?」

「もちろんです」


 ルークスがレベッカに向かい手のひらを掲げると、彼女の身体全体が柔らかい光に包まれた。それはデライラが魔力を込めた際に発した宝剣の光にも似た安らぎを感じるものだった。


「人の王よ。今あなたに光の加護を与えました。この加護ある限りあなたにもその宝剣が使えるでしょう」

「はっ!? いえ、ですがこの宝剣はデライラさんが使ってこその――」

「ああ、あたしは大丈夫です。ショーンが作ってルークスが手を加えた()()がありますから」

「な、なんと……」


 ショーンが魔法陣を刻み、ルークスが光属性に特化させた剣。それがあればデライラには事足りた。それに国家の宝を自分が使うのもなんだか気が引ける。

 だがデライラの言葉はレベッカの興味を大きく引く事になった。噂に聞く次のプラチナランカー候補とはどのような人物なのか。

 そこからはレベッカの質問攻めにあったデライラが、答えられる範囲で答えていく時間が過ぎた。


(私ったら、なにかとんでもない間違いを犯した気がします)


 そして聞けば聞く程、ユーイングに提示したプラチナランクの試験内容を後悔するレベッカだった。しかしデライラもショーンも、その試験内容はまだ知らない。

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