変化する魔王ダンジョン
ダンジョンを探索して10年。
何を隠そう私は突如異世界に出現した迷宮を攻略しようと今日まで生きてきた。
入れば二度と出ることはできない。
おまけに食糧は自給自足でトカゲやら虫を食べた。
複雑に蠢く壁。
表すとしたら生きたダンジョンなのだ。
壁面は煉瓦のそれと酷似しており触るとザラザラと硬質化しているのだが一日経過すれば部屋の構造が、形が変化していた。それも我々を悩ますポイントとなった。
一日覚えた場所は一日で模様替えをされるようなものだ。
そもそも、
迷宮を作り出した者の名前は熟知している。そうーー野獣の魔王である。
顔は醜く角やら長い体毛に覆われた獣のようで、血を連想する色や毒池の色を体現したカラーを基調とした鎧に身を包み、全身体躯は鬼族のように遥かに大きい。筋肉の鎧ではないかというほど今まで古書に伝承されている。
伝承されているものの見たものは誰もいないという。見れば最後、その者は体躯を最大魔法の獄炎で焼き尽くされるからだ。仲間からも恐れられてその顔の存在を知る者はほぼいない。
その恐ろしき野獣の魔王が人間の狩場として都市の中央部に巨大な建造物を出現させたのだ。あれほどの壮大なスケールのある魔法を使用できる者は人間ではない。魔法を嗜む魔導師ですらあのような無から有を創生させた魔法を詠唱は不可能に近い。
とにかくだ。
とにかく、私は転生し、6歳の頃に村の近場に創り出されたこのオブジェクトを父に連れられ遊び感覚で侵入してしまい、今に至るわけだ。
大手のギルドからもダンジョンの謎の解明に資金を導入している。それ故に一攫千金を狙う輩も多い。
ダンジョンは幾つもの壁を何層にも重ねられた構造になっており、横一層ずつチマチマと調べなければ中央部にたどり着けない。私を含めた者達を旅人者と呼び、熟練の兵士がいるのだがそいつで2層をやっと解読したばかりである。そう。一層に10年という時間を費やし過ぎた。魔王が放った得体の知れない何かがプレイヤーを襲うのだ。
気づけば千人が153名に。
その男が遂に見つけたらしく天井の七色に煌々と輝く四角い宝玉を飛翔魔法で高く飛んで持ち前の槍で一つ突き。破壊されたとともにダンジョンが揺れて二層の扉が現れ皆歓喜した。
二層の攻略は始まったばかりだ。
鷹の眼を使い、魔法で空からダンジョンを眺めた魔導師が、驚愕の言葉を口にした。
「このダンジョンは千層以上あります。
それ以上かもしれません」
絶望したのは言うまでもない。
二層の領域。
危険を顧みずに侵入したばかりに化け物の巣に入ったようだ。
そこは暗色模様の大きな卵だらけ。疎らに垂直に並ぶそれから産まれた化け物は容赦なく我々に寄生する。黒い液体は顔に取り憑き呼吸困難を引き起こし殺傷していく。
ただ、純粋に逃げ惑うしかなかった。
この場所にある宝玉をひたすら求めて。