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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現代剣豪の異世界漂流記

作者: 京ノ命

「うっ!」


酷い頭痛に一瞬目の前が真っ白になりつつ周りを確認していく。


「何処だここは。。」


所々に木漏れ日が漏れ背の高い木々がお生い茂る林の中、一本の巨木に寄りかかるように目が覚めた。

すぐに周りの状態を確認し人の気配が無いことを確認すると自分の身体の異変いや異常に頭が急激に回転していく。


「なんだこの身体は。小さく、いやこれは、若くなってる!?」


50歳を過ぎた今でも怠る事無く日々の鍛錬を行い、自身の体調を管理しているからこそすぐその異常さに気が付いた。


「何だこれは、どうなっている。。」


暫く逡巡するがこれ以上情報を得られないと感じ


「とにかく水場を探すか。」


怪我がないことを改めて確認すると皺になった藍色の袴と腰にある()()を確認し林の中を降りて行く。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「お嬢様!もう少しすればヘレンの街が見えてまいります!今しばらくご辛抱ください!」


護衛3人が馬車の後ろで相手をひきつけ時間を稼いでる中、他の護衛が左右を守りながら馬車を急がせる。

しかし前日の雨でぬかるんだ道では速度がでず馬に跨った相手に徐々に追いつかれていった。


「隊長このままでは追いつかれます!ここでお嬢様だけでも先に行かせて我々でせき止めましょう!」


相手の数は20人程。多勢に無勢ではあるが鍛え抜かれた我々であれば十分対応できる。

但し守りながら戦うとなると十分にその力が発揮できるとはいえない。

馬車を先に行かせれば対応はできるが1人でも抜けられれば無防備なお嬢様の命は無い。

そんな考えを逡巡していると馬車が勢いを無くしついには止まってしまう。

何ごとかと先を見ると土砂が道を塞いでいる。


「隊長!」


後ろにいた隊員が合流し馬車を背にして相手とにらみ合う。


「ハハハ。ようやく観念というか運がないねーあなた達も。ハハハ。」


「ドルス!お嬢様を連れて土砂を超えて先に行け!ここは我々で防ぎきる!」


「サーシャ、ムルガ、ヨハン、何としてもここを死守するぞ!」


「隊長お任せを!」


「はい。」


「あ~あ何か嫌な予感がしてたんだよな~。隊長これ特別手当て貰いますよ~」


「ヨハン!貴様こんな時に何を言っておる。貴様は護衛としての。。」


「サーシャ良い!ヨハンこの危機を乗り越えたらちゃんと手配してやる。」


「流石隊長話が分かる~。それに引き換えサーシャは真面目ちゃんだね~」


「ヨハン貴様という奴は。。」


「ハハハ。余裕だねー皆さん。たった5人でこの人数を相手にできると思うー。ハハハ。」


「ドルス何をしている早く行け!お嬢様を街まで無事に送り届けるのだ!」


「わ、分かりました!お嬢様足元は悪いですが馬車を捨てれば馬で超えて行けます。さー急ぎましょう!」


「なりません!オズワード!ただでさえ人数が少ないこの状況で更に人数を分けてどうなります!

ここでこ奴らを成敗し皆で街に行くのです!」


場違いな白いドレスを纏っていかにも()()()が馬車から降りながら言い放つ。


「お嬢様しかし!」


「ここで防ぎきれなければ結局追いつかれ遅かれ早かれ同じことです。ならば全員で戦う方がまだ勝ち目があります。」


「ハハハ。流石お嬢様。2手に分かれてくれた方が都合が良かったんですがねー。いやいや若いからといって侮ってはいけま。。」


その時鋭い一撃が相手の話を終える前に喉元に迫っていた。


「キンッ!」


「何だ~今なら簡単に首が取れたと思ってたのに~。アンタ以外にも手強そうな奴がいるのね~。」


ヨハンの虚をついた一撃に目もくれず相手の首領らしき人物が言い放つ。


「ハハハ。ジョルテこのままこの軽薄そうな御仁の相手をしてさしあげなさい。」


「はッ!」


そして2人の剣戟が合図に双方の乱戦が始まる。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



何とか川辺を見つけて喉を潤し改めて水面を覗き込むと


「これは20代の自分ではないか。。」


自分の顔を触りながら不思議と力が漲っている自分を感じペタペタ何度も顔を触り身体全体も確かめる。


「丁度良いからここで身体を洗っていくか。」


引き締まった身体に溢れる力。


「若いころは力任せで知識も経験も無く気付かなかったが若さも立派な()だな。」


川で汚れを落とし一息つくとこれからのことを考える。

一体ここは何処で自分はどうなってしまっているのか。

しかしどんなに考えても答えはでるはずもなく、とにかく水はあっても食糧が無いこの状況ではジリ貧である。


「まずは人を見つけて話を聞かねば。」


「人がいればな。この世界に。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ハハハ。意外とやりますね~皆さん。特に軽薄そうなその青年と大柄な男はうちの2人と対等に渡り合っていますね~。」


「おーい、ムルガの旦那。相手の首領が褒めてくれてるぞー。」


「うむ。」


相手の剣先を器用に捌きながら軽口を叩くヨハンにサーシャが


「ヨハン!こっちは1人で5人も相手してんだ!余裕があるならチャッチャとこっちの応援に来い!」


「いや~余裕っていってもね~。このジョルテっておっさん相当な使い手だぞ~。っと。」


「随分余裕そうだな小僧、儂相手に軽口叩くとは。こちらも出し惜しみなくいくか。」


今までと違う重い一撃を受け弾き返そうとした時ぬかるんだ足元が滑ってしまった。


「しまった!」


体を捻り致命傷は免れたものの肩に深い傷を負い鮮血がほとばしる。


「勝負ありだな小僧。」


剣先をヨハンに向け獰猛な目つきでとどめを刺しにジョルテが突き出す。


「いやいやこういう時こそ隊長が颯爽と助けに。。」


ズシュ。


半笑いしているヨハンの片目にジョルテの剣先が吸い込まれ後頭部から剣先が突き出てくる。


「ぎゃああああああ!!!」


絶叫がしたとヨハンの身体が痙攣し剣を抜くと同時にその動きを永遠に止めた。


「ハハハ。これで勝負ありだね~。」


「ヨハン!! 貴様!!」


首領格の男が勝利を確信したように次の指示を出す。


「デイルはそのまま大男の足を止めておけ。必ずこちらに援護にこようとするからその隙を付けばいいから無理するな。」


「はっ!」


「ジョルテはあの隊長さんと戦っている連中と合流して一緒に足止めしておけ。1対1で戦おうとするな。多分あの隊長さんプラチナいやダイヤモンド級はあるからね。」


「・・分かりました。」


「ハハハ。今回はお嬢様の殺害が目的だから護衛に勝つ必要はないんだよ。」


首領格の男の顔から笑顔が消え


「ではお嬢様。お命頂戴いたします。」


「そう簡単にお嬢様に近づけるとおも。。」


ドルスが言い終わる前にその首が宙に舞う。


「ドルス!!」


お嬢様の悲壮な声が響くと同時に短剣を持つ御者が前にでて無駄だと分かりつつも時間稼ぎの為前にでる。


「邪魔。」


何の感情も無い剣が御者を袈裟切りにし目的をはらさんと迫りくる。


「お嬢様!!」


隊長とサーシャが周辺の敵を薙ぎ払い駆けつけんと大声を出すが別の敵が道を塞ぐ。


後一歩でお嬢様に剣が届くというところで壮絶な殺気が横の林から突き刺さる。


そして見たことのない恰好をした20代の青年が現れて一言漏らす。


「何だこれは。。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



隊長が見たのは異様という他なかった。

見たことのない恰好をした青年は突如林から現れ敵の首領格の男性の前に降り立った。

首領格の男が構わず剣を横に薙ぎ相手を引かせようした一撃はダイヤモンド級である自分の目から見ても早く鋭い一撃で、前にいる青年を切り捨てたように見えた。


「誰か分からないけど前に立つなら死んでちょうだいね~。」


2人が交差すると青年は見たことのない剣を腰にある鞘に納め一言言い放った。


「次。」


すると首領格の男の顔から赤いプツプツが現れそれが1つに繋がり赤い線が身体の中心に縦に現れた。と同時に身体が真っ二つに分かれた。

敵も味方も全員凍り付いたように動きを止め、まさに時間が止まったように静寂に包まれた。


「ドスン。」


お嬢様が膝から崩れ落ち遅れて従者も倒れこむ。


「お嬢様!!」


ジョルテの視線が外れた隙に周りの敵を振り払いオズワードがお嬢様の傍に駆け寄る。


「ん?お前はその女の味方か!?なら一先ず生かしといてやるか。」


その青年は再び剣のようなものを抜き、前に立つ相手を一振りで糸を切ったように倒して回る。


「サーシャ!ムルガ!剣を引いて距離を取れ!」


2人が敵の間をくぐりお嬢様の元に集まったころ青年はジョルテとデイルを相手して今度は股下から切り上げジョルテが2()()()なっていく。


「うわああああ!!!」


「何だ!何者だこいつは!!」


敵の1が叫ぶと同時にデイルも2()()()なっていた。


首領格とその参謀格2人があっという間に切り捨てられ残りの敵が戦意を無くして喚いている。


「俺たちはその女の命なんてどうでもいいんだよ!」


「命令だから仕方なく!」


しかし青年はただただ無言で相手全てを切り捨て正に血の海にしてこちらに歩いてきた。

例えでは無い。

前日に降った水溜まりと混ざり本当の血の海が出来上がっていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「聞きたいことがある。ここは何処だ?」


戻ってきた青年が今までの惨劇が無かったように聞いてくる。


誰もが言葉を無くし目の前の光景から現実に戻りきっていない。

何とか気を保っている隊長が


「ここはハイアット王国はジルサイト領内にあるヘレンの森だ。この先にヘレンの街がある。」


「ハイアット?ヘレン?日本語が話せるようだがここは日本じゃないのか?恰好からするとヨーロッパのどこかの国か?」


「二ホン?ヨーロッパ?何処から来たか分らんがここはデルボア帝国との境にあるジルサイト領だぞ。」


「・・今は何年だ。」


「今は王記2530年の4の月だが。。」


「・・・」


そんなやり取りをしてる中、気を取り直したサーシャが素早く剣を抜き


「貴様は何者か!お嬢様に何をした!」


「ことと次第によっては貴様の命ないものと。。」


サーシャが言い終わる前に隊長がサーシャへ体当たりし吹き飛ばした。


「へ?」


その刹那ヒュンと剣戟が聞こえたかと思うとチンと鞘に収まる音だけがした。


「お前は敵か?」


感情の無い低く暗い声がした。


「ま、待ってくれ味方とまでは言えないが敵ではない!サーシャの非礼は詫びる!どうか話を聞いてくれ!」


当のサーシャは隊長が付き飛ばしてくれなければあの者達のように死んでいたことに気付き又、目の前の青年が何の躊躇もなく剣を振るったことに改めて恐怖が込み上げてきた。


「あんたに聞いているんじゃない。そのサーシャっていう女に聞いている。お前は敵か?」


「い、いや敵ではない!非礼を詫びよう。申し訳ない!」


男は無言で殺気を納め何かを思考し始める。その時


「う、う~ん。。」


「お嬢様!!」


「な、何があったの。そういえば目の前でドルスが切られその後ドルスを切った男が2つに。。うっ!」


「大丈夫ですか!お嬢様!」


口元を抑え真っ青の顔をしながらも


「だ、大丈夫よ。この方に助けられたのですね。オズワードそうでしょ。」


「そうですね。お嬢様のお命を救って頂いたのは間違いございません。」


「そこの方、命を救ってくださりありがとうございます。訳あってここでは名乗れませんが良ければヘレンの街までご一緒できれば改めてお礼を申し上げたく思いますが。」


「お、お嬢様。一緒に街に行くというのは流石に。。」


「サーシャ、この方がいなければ私の命がなかったのは事実。その命の恩人に何のお礼もしないのは我が家の恥です。

それにここで話をしていても更なる追っ手がくるかもしれません。ドルスとヨハンの亡骸を回収して急いで街に向かいましょう。」


お嬢様とサーシャのやり取りを横目にオズワードは改めてこの青年を見て考えていた。


『あの首領格の男は少なくてもプラチナ級それも上位の実力をもっていた。

それを一刀両断。その言葉は軽くない。

人の身体をあんな風に真っ二つに出来る技量などダイヤモンドいやオリハルコンかアダマンタイト級でもおかしくない。』


「オズワード何をしています!隊長のあなたが指揮をとり素早く行動に移すのです!」


「は、はい!」


「待て。」


「えっ!?」


「お礼などはいらんがまだ質問がある。」


それを聞いたお嬢様は


「いいえ、お命を救って頂いて何もせずとは我が家の恥でありプライドがゆるしません。どうか街まで同行いただきお礼をさせてください。」


「何故救った儂がよいと言っているのに救われたお前のプライドに付き合わなければならない。」


「はっ!?」


「儂は聞きたい事があると言っている。」


「で、ですからそれは街に着いたらいくらでも。。」


「お前の都合など知らん。命を救われたと本気で思うなら救ったくれた相手の要望を一番に聞くのが筋であろう。それともお前の命はプライドより安いのか。」


それを聞いたオズワードが


「私はお嬢様だけではなく私や部下など全員の命も救ってくれたと思っている。

だから今すぐ知りたい事はここで私が残って答えるが急ぎではない質問ならば街でゆっくりいくらでも付き合う。それでどうだろうか。」


「。。分かった街まで付き合おう。」


「よし、では早速仲間の亡骸を回収し馬車は捨てて残っている馬に乗って街を目指す!各自迅速に動け!」


「はい!」



準備が終わり街に向かう馬の上でオズワードが1つ聞いてくる


「御仁お名前を伺ってもよろしいか。」


「圭司。柳圭司。」





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