鬼教師、島村
自己否定の先に待ち受けるのは発狂ですよね。
1時間目、社会。また吐き気がするほど退屈な島村の授業がはじまる。
この授業も大概だが、窓の外の景色を眺めている方がずっと面白いと感じる授業が毎日6時間もある。
どうして俺よりもバカなやつにモノを教わらなければいけないんだ?お前らの言うことは全部教科書に書いてある。わざわざそれを音読してもらう必要もない。
音読どころか呼吸している意味すらないんじゃないか?お前がいなくなったところで誰も困らないさ。むしろ音読で消費される酸素が減って地球にもやさしいくらいだろう。環境保全団体がエコのたまめにお前を殺すと言い出したら俺はよろこんで賛同者として署名しよう。
文科省だかなんだか知らないが、頭の硬いお偉いさんが作ったカリキュラムをひたすらにこなすだけでは生徒の心なんて掴めるはずがない。だからこうやって舐められるんだよ。
周りを見てみろ、誰もお前の話なんて聞いちゃいない。頭の良い奴らは自習しているし、そうじゃない奴らでもだいたいゲームかSNS、あとは最近流行りの回し手紙で時間を潰している。
それ以外のことをやっているやつといえば、島村の「はいっじゃあ〜」という冒頭の口癖の回数を数えてるとか、島村が黒板を向いてる間に席を立ってズボンを下ろすスリルをあじわうとか、まあ暇過ぎて変異してしまった奇行種だ。リ◯イ兵長がいたらすぐ駆逐してくれるのに...
まあなんにせよ、バカばかりでつまらん。本当につまらん。何かこのつまらない日常をひっくり返すようなビックなイベントでも起きないだろうか?
しばらくして時計を見る。あと20分。この20分がどれだけ長いことか。30分ほど経過したかと思い時計をみると10分もたっていなかったりする。
ふと俺の前の席にいる山口が消しカスを丸めてることに気づいた。(ちなみに、こいつも奇行種の1人だ。)そして山口はまるめた消しカスを島村の背中に投げつけた。
「島村、お前の授業はつまらん。出て行け。」というクラスの総意を非言語的に代弁したのだと言えよう。
島村が振り向いた。また誰かが正直に名乗り出るか、あるいは誰かがチクるまで終わらない犯人探しがはじまると誰もが確信する。
しかし、今日だけは様子が違った。こちらを振りまいた島村の顔は完全にいっていた。白目をむき、クビをカクカクさせながら奇声を発したのだ。そしてそのまま山口に近づき、山口の耳を食いちぎった。
ちぎれた耳が隣の席の女子の佐々木さんの机にベチャッとした音とともに落ちる。
「キャ、キャアアアッ!」
学校に悲鳴が響き渡る。山口は耳を抑えて転げ回ったが、そこに島村は馬乗りになり、腕を押さえつけて今度は指を食いちぎった。その光景をみてクラス中が絶叫し、教室をでていく。
しかし、何人かが廊下にでるとこのクラスの事件とは関係のないはずの他の教室からも悲鳴が聞こえてきた。混乱した生徒たちが出口に殺到する。
そうこうしているうちに山口は体のいたるところを食われ、無残な姿になっていた。島村が山口のもとからゆるりと立ち上がり、今度は佐々木さんの方へとじりじりと歩いて行く。
「だ、だめ!来ないで!!」
腰がすくんで動けない様子でいる。
このままではまずい。普段なら他人のことなどどうでもいいのだが、この場で佐々木さんを見捨ててしまえば、土壇場で何もできなかったという事実が俺の人生に絡みつくことになる。日常に変化を求めていたはずの俺が、変化に対して変化できないというのはプライドが許さない。たとえ助けられなかったとしても助けようとした事実をつくらねばならない。
そう思った俺は野球部の席にあったバットを拾い、島村の前に立った。
すると島村は奇声を発しながら俺に飛びかかり、バットを両腕でつかむ。血と加齢臭が混ざった最悪の匂いがする。
両腕をふりほどこうとしたが、中年のおっさんとは思えない筋力だ。鉄バットに握力だけで指がめりこんでいる。このままでは次は俺が食わてしまう。
すると、横から机が飛んできて島村の胴体に直撃した。島村が倒れこむ。
「ユウキ!こいつはまじでやばい!今の隙にそのバットを振り下ろせ!!」
どうやら、ヒトシが机を投げつけたみたいだ。
「お、おう!わかってる!!」
(相手は人だぞ...本当にやって大丈夫か!?)
島村が机をどかし今にも起き上がろうとしている。
「おい!はやくしろっ!!」
ヒトシが俺に叫んだ。
(クソ!どうにでもなれ!)
島村の後頭部にバットを振り下ろした。衝撃とともに鈍い音が教室に響く。島村はその場で倒れたが、ビクビクしながら立ち上がろうとしている。
「この怪我で生きてるのか!?やばい、逃げるぞ!ユウキ!」
ヒトシがそう言ってまくし立てた。
俺は佐々木さんの手をひっぱり、ヒトシと一緒に教室をでた。
廊下にでるとこちらへ数人の生徒が叫びながら走ってくる。
「ヒトシ、様子がおかしい。」
「どういうことだ?」
「島村がいる方に人が逃げてきている。あっちでも何かやばいことが起きたんだ。」
「そんな、島村がおかしくなったこと以上のやばいことなんてあるか?」
そう話していると、佐々木さんが震えながら指を廊下の奥にさした。
「あ、あの人...さっきの島村先生みたい...」
奥を見つめると、首をピクピクさせた血だらけの生徒が立っていた。
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