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悪魔にござるっ!

別の日、拙者の自宅にて・・・




「・・・・・?」




 敬愛する同志諸君、総じて我々ヲタクという生物はやれ異世界だの、チート能力だの、悪魔だの、天使だのと、この世ならざるものというものに恋焦がれるものでござるが、はてさて現実というものは常にして、我々の理想とはかけ離れているものであり、目の前にあるこの光景もまた、やはり拙者の追い求めていた桃源郷とはかけ離れていたものだったという結論を下さざるを得ないのでござる・・・。




「・・・・ですから・・・・」




 AM5:50 人が活動を開始するにはちょっと早いかもなーなんと思うこの時間、拙者の健やかな安眠を奪ったのは、未だ半分ほどその姿をお隠しになられているアマテラス様ではなく、ちょっと人を起こすには、その音でかすぎじゃない?とクレームを入れたくなるなぁと思わざるを得ない一昨日買ったばかりの目覚まし先輩でもなく・・・そう・・・目の前に座ってこちらをじーっと凝視している、女性と呼べそうな何かだったのでござる・・・



「・・・・・・?」




「ええっと・・・。」



 何か・・・という表現・・・女性に対して使うのはいささか失礼ではなかろうかと思ったりもするのでござるが、いやはや、はてさて、何度見てもその女性、普通の女性とは呼べそうにないのでござる。



「・・・・・?」



「・・・・はあ(ため息)。」



 なんだか、その瞳は蛇みたいな形をしているでござるし、頭からはちょこっとかわいらしい角が二本ほど顔をのぞかせているし・・・何よりも、背中から黒い翼・・・生えちゃってるし・・・




 「・・・・?」



「・・・・(あきらめの表情)」



ちなみにでござるが、そのつばさ、着脱式でないのは先ほど確認済みでござる(ちなみにちなみに、その翼に触れた瞬間、その人が「あっ・・・」といって顔を赤らめてもじもじとしていたのだが、彼女にとってそこは触れてはいけない箇所だったのでござろうか・・・?)



「・・・・(あきらめの表情)」



「・・・・(あきらめの表情)」


つまりは早朝から人の家に侵入してくるような超変態美少女コスプレイヤーさん・・・というわけではないようなのでござる・・・。



「・・・・(眠そうな表情)」



「・・・・おーい、おーい?」



おそらく、常人の人であるならば、腰を抜かすなりおっかなびっくり「あんた誰!?」みたいなテンプレート的な展開が待っているのであろうが、そこは幾万とライトノベルを読んできた拙者・・・そんな約束みたいなテンプレートを暴発させて本の前のみなをしらけさせたりはしない!

 そう、ここは拙者らしい一言をもって締めくくり、二度寝という現実逃避行を持って、このハチャメチャな幻覚に終止符を打つことにしようじゃないか。


「さらば、俺の、夢妄想物語・・・!。素敵な幻覚をありがとう。」


「・・・・?」


さらば・・・バサッ(布団の中に潜る音)


・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


――ゆさゆさ(誰かが、布団をゆする音)――



(・・・・・・・・・・・・・・・。)



――ゆさゆさ(誰かが、布団をゆする音)――



(・・・・・・・・・・・・・・・・。)



――ゆさゆさ(誰かが、布団をゆする音)――



(・・・・・・・・・・・・・・・・・。)



――ゆさゆさ(誰かが、布団をゆする音)――



(・・・・・・・・・・・・・・・・・。)



――ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ――




(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)





もう一度だけ・・・おそるおそる・・・目を開いてみる・・・

目と鼻の先、幻覚だと思いたかった・・・その人は・・・拙者をのぞき込んでいた。

人間というには、あまりにも整いすぎている顔立ち。

 100人の男性がいれば、100人ともが見とれてしまうだろう、その人は・・・なぜか目に懐かしさをにじませながら、それでも拙者を見ていたのでござった。


「目は覚めましたか?」


「えーっと、おはようございます。」


「おはようございます。」


そういって、その人は可憐に笑う。その笑顔に見とれてしまいそうになりそうで、拙者は慌てて目をそらした。


「・・・これは・・・夢では・・・ないと・・・。」

「残念ながら。」

 悪魔さんは、居住まいを正し立ち上がると、上品にスカートのすそを軽く持ち上げると、

「初めまして、いえ・・・正確には、お久しぶりでしょうか・・・私の名前は、ヲルビダ タクト クレイドラ。・・・見ての通り悪魔をしています。」

そんな職業みたく言われても・・・。

「お久しぶりって・・・どういうこと・・・?」

当たり前だけど、悪魔の知り合いなんていない。

ヲルビダさんは笑みを崩すことなく、

「私とあなた・・・いえ、ご主人様はすでにあったことがあるのです。ただ、こちらの世界ではなく・・・・別の世界・・・ですが・・・」

 はぁ、また異世界転生ものかぁ・・・そろそろ飽きたなぁと、もしこれが小説であるのならば、拙者はその本をそっと書架に戻していたことであろう・・・。

「えーっと・・・前世で会ってた・・・とか?」

またかすかに悪魔がほほ笑む。まるで、久々との旧友との会話を楽しんでいるかのように・・・そしてその微笑みが、また誰かの視線をくぎ付けにする。

「さすがに私もご主人様の生まれる前、死んだ後のことは存じ上げません・・・そのような概念が本当に存在するのかも・・・ね・・・。」

「じゃあ・・・どうして・・・?」

「この世界の言葉でいうなら、ドッペルゲンガー・・・その言葉が一番しっくりくるでしょうか・・・」

「ドッペルゲンガー?」

世界には同じ顔を持った人が三人いるっていう・・・。

「もし、そのドッペルゲンガー、この世界ではなく、異世界にいて、しかも顔が同じだけでなく、魂も共有しているのだとしたら・・・?」

「・・・何が言いたいの?」

「ご主人様は、こちらとは別の世界にもいらっしゃるのですよ・・・そして、私はそちらの世界のあなた様を知っている。」

「・・・・。」

正直、話にちゃんとついていけてるかというと・・・・そうではない。ただ、拙者のコピーみたいなやつが、異世界にもいるのだというは、何となく理解できた。

 ふぅと息を吐き、一瞬ヲルビダさんが目をつむる。


「ここからが重要なのですが・・・」


ん?ちょっと待てよ・・・悪魔のヲルビダさんと異世界の俺が・・・顔見知り・・・?





「異世界のご主人様は・・・」









それって拙者・・・十中八九・・・人間じゃ・・・







「その世界で・・・」










「ちょっとまっ____」















「魔王をなさっているのです。」

















はっきりと、ヲルビダさんの口から、そんな言葉が紡がれた。いまだ布団の中に半分ほどその姿をお隠しになっている拙者(そんな状態で誰かと会話するなんて、なんと失礼な奴だ!)と居住まいを正したヲルビダさんの目が数秒交差する・・・。

 おそらく、その時の俺はその擬態語がこれほど似合うものかと思われるほど、ポカーンと口を開けていたことだろう。



「えーっと、・・・どうやってつっこめば・・・」

「漫才じゃありません。」



「新手の・・・」

「詐欺じゃありません。」



「体温計・・・体温計・・・」

「病気じゃありません・・・」




ヲルビダさんは決して拙者から目をそらさない。


「あなたの目の前にいるもの・・・」


拙者に全てを直視せざるを得ないほど・・・


「それがまごうことなき・・・」


だから・・・受け止めざるを得なかった・・・


「真実でございますよ。」

そう言って微笑む悪魔を。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



数十分後・・・

 


「それで、ヲルビダさんは、何のためにこの世界にやってきたの?」

瞬間、ヲルビダさんの瞳が怪しく光った。

「そうですね、私がこの世界に来た理由、それをお話しなくては・・・・」

一拍

「話は、この前に行われた宴の席にさかのぼります。」

「宴・・・?」

「そうです。その時、確か宴の盛り上がりは絶頂を迎えていたのですが、とある催し物をすることになりました。」

「・・・・・。」

「というのも、異世界にいる同じ御霊を持つ自分はどのような生活をしているのか見てみようとなったのです。」

ヲルビダさんがコホンとわざとらしいしぐさを入れる。

「その催しは、さも楽しいものでした。とある上級悪魔は、戦争の英雄。別のものは国のトップシークレットに認定されるほどの凄腕エージェント。次から次へと、その悪魔にふさわしい立派な人物が術を施した水晶に映されていきました。」

「・・・・・。」

なんだろう、嫌な汗がさっきから止まらないのだが・・・。

ヲルビダさんがこっちを直視してきた。

「そして、待ちに待って、ついに主様、つまりあなたと御霊を共有する魔王様の番となりました、場の盛り上がりは、過去に類を見ないほど、魔族を統べる主様のこと、さぞかし素晴らしい人が映し出されるだろうと、皆期待に胸を膨らませ、輝かんばかりの瞳で水晶を凝視しておりました。」

「汗汗汗汗汗汗」

「そして、術式のかかった水晶には・・・・・・・・」

「・・・・俺が・・・・・映ったと・・・・。」

「・・・・・はい。」

ヲルビダさんは、さも悲しそうにそういう。

「・・・・・察した。」

「ちなみに今、異世界の俺は・・・?」

「絶望して部屋に引きこもっております。」

「なんか、そこは俺っぽい。」

ヲルビダさんは、わざとらしくため息をついた。

「その後、悪魔たちの緊急集会が、行われました。もちろん議題は、魔王様の御霊を持つものが、こんなのでいいのかについてです。」

「・・・こんなの。」

ぐしゃりと鋼のような剣が心中で拙者の心臓を貫く音がしたような気がする・・・。

「そこで、私たちは決意したのです。主様の御霊を持つもの、つまりご主人様に最低限、それに見合うだけの何かをやってもらおうと。」

「それって・・・」

嫌な考えが頭をよぎる。まさか、これから日本で革命を起こせなんて無茶ぶりを言ってきたりしないよな・・・?いや、もしかするとエージェントになるための訓練を受けさせられるとか。

 そんな考えを予期してなのか、微笑みを携えてヲルビダさんが口を開く、

「ご安心ください。私どもも、ご主人様に無茶な要求をするつもりはありません。第一、調べた限りでは、この世界の現状は、歴史上でもまれにみる平和な世界。そんな中、それを壊すようなことは、我々も望んでなどいないのです。」

何とも、悪魔らしからぬお言葉・・・

「では、何をすれば・・・・?」

ヲルビダさんは、悪魔らしく意地悪に笑うと・・・・


「ご主人様には、沼田美咲というものを彼女にしていただきます。」


次に続く・・・


p.s.

そのあと、ヲルビダさんの姿を確認して目を点にしている両親たちを説得するのに小一時間ほど時間を有しましたとさ・・・。



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