#2 想う気持ちは平行線
新キャラ(以降出番なし)
わたし、三上百恵は、非常に不満である。
わたしは県内のとある大学に通う大学3年生。趣味は年下の女の子の観察。特技は女の子のスリーサイズを見ただけで当てること。好物は年下の女の子。大好物はJK。夢はJKの彼女を作ること。
分かってる。年下の、しかも、女の子にしか興味がないことがおかしいってことくらい。でも、わたしは自分の趣味を隠さない。わたしは自分に素直に生きるって決めているから。
こんなわたしには、高校時代から続けているアルバイトがある。『Cafe Reizo』っていう、ダンディなおじさん一人で経営してる喫茶店。このバイトをしようと思った動機はたった一つ。ウェイトレス姿の女の子たちが沢山いると思ったから。でも、事前に調査しなかったからいけなかったんだけど、その喫茶店には女の子はおろか、アルバイトすらいなかった。だからしばらくは、ずっとわたしと店長のおじさんの二人だけだった。まあ別に、男の人が苦手なわけじゃないからよかったんだけど。それでも、女の子が一人もいなかったことがショックだったし、お客さんも大人しかいなかったから、わたし的には残念。そんなバイト生活だったけど、責任感だけは人一倍あるわたしは、そのバイトを今でも続けている。
その後、妹の千恵も同じくバイトに入るようになったものの、相変わらずその他に年下の女の子はいない。仕方なく、興味もない妹の制服姿を見て目の保養代わりにしていた。
そんな中、わたしに転機が訪れた! なんと、この春から現役JKがアルバイトに入ったのだ!
店長によると、その娘の名前は『園田鈴』ちゃん。あぁ、とっても可愛い名前。その名前の通り、可愛らしい見た目に違いない!
鈴ちゃんは高校一年生らしい。ということは、アルバイトをするのも初めてだろう。ならば、きっとどれも初めてだらけで緊張したり、失敗するかもしれない。そんな時、わたしがさっと現れ、鈴ちゃんを助けてあげるんだ! そうしたら、きっと……
『百恵さん! かっこいい! とっても素敵ですぅ!』
『はは、そんなことはないさ。おっと、鈴ちゃん、ほっぺにまつ毛がついているよ。わたしがとってあげよう』
『あぅ、は、はずかしいですぅ』
『じっとしてておくれ……』
『はぃ……』
そして鈴ちゃんは目を瞑る。それはまるで、わたしに何かを期待しているかのように……。
「はあああぁん! たまらない! 青春が! 青春が加速してしまうぅ!」
「ちょっとお姉、うるさいんだけど」
リビングのソファの上で妄想に悶えていると、妹の千恵の冷静な一言が飛んできた。顔を上げれば、千恵はバラエティ番組を見ながら呆れたようにため息を一つついた。
「どうせまた、年下の子の妄想でもしてたんでしょ。やめろとは言わないけど、そーゆーのは自分の部屋でやってよね」
「妄想じゃない! シュミレーションよ!」
千恵がジト目でこっちを振り返った。
「シュミレーションって、何の? どうせ学校帰りのJKのナンパとか、くだらないこと考えてたんでしょ?」
「く、くだらないって何よ! ふんっ、なんで千恵にはJKの素晴らしさが分からないのかしら!」
「お姉、三年前はJCが好きJCが好きって言ってたのに。来年辺りには大学の一年生たちに目移りするようになるんじゃない?」
全く理解の無い妹だ。わたしはただ、歳を重ねたことでJKの素晴らしさに気付いただけであって、なにもJCやその他の女の子をないがしろにしているわけではない。ただ純粋に、順位をつけるなら今はJKが一番ってだけ。それが分からんとは、これだから千恵は……。
いやいや、それよりも今は園田鈴ちゃんのことだよ。
「それよりさ、千恵、一緒に考えてよ!」
ソファから体を起こして身を乗り出すと、千恵がまたため息をついた。
「はあ……何を?」
「バイトでさ、鈴ちゃんと一緒のシフトに入れる方法だよ!」
そう、実はわたしたちはまだ、園田鈴ちゃんと顔を合わせたこともないのだ。
わたしたちのバイト先の喫茶店は、個人経営で規模が小さいこともあってか、常連さん以外はほとんど店に来ない。つまり、お客さん自体数が少ないので、基本バイトは一人居れば間に合ってしまうのだ。そのため、わたしたちはまだ一度も鈴ちゃんと同じシフトに入れない。つまり、顔を合わせることができていないのだ。
だから、わたしと鈴ちゃんが付き合える関係になるためにも、その切欠を作らなければ!
けれど、どうやら千恵はそれに消極的、もとい、反対らしい。
「ちょっとお姉、まさかその子にまでちょっかいかける気なの!? やめてやめて! わたしまでバイトに居られなくなるじゃない!」
驚きと呆れと焦りの混じった顔で千恵が反対してくる。む、まさかわたしがJK相手に失敗すると思っているのか? なんて心外な!
「だいじょうぶだよ、わたし、鈴ちゃんを落とす絶対の自信があるから」
「これまで一度も彼女作れたことなかったのに、その自信はどこから来るのやら」
ぐっ!? 中々心に刺さることを言ってくれるじゃない!
苦しさに胸を押さえるわたしに、しかし千恵はさらに追い討ちを掛けてくる。
「第一、その、鈴って子が彼氏持ちじゃないなんて証拠はないでしょ? その子がお姉と同じく女の子好きなんてこと、普通に考えたらありえないし。それに、ヘンに絡んで大事になったら、わたしだって迷惑するんだから」
グサッ、グサッ、グサリ
胸に次々と突き刺さる言葉の刃。うぬぬ、妹のクセに、姉であるわたしの心を折りにかかろうとは。普通そこは、妹として姉を応援するべきじゃないのか?
ふんっ、千恵にはいろいろ言われたけど、そんな言葉じゃわたしは諦めない。千恵の言葉の矛よりも、わたしの心の盾のほうが強いんだから。
「そんなの、実際に聞いてみないと分からないでしょ? 始める前から諦めるだなんて、わたしの矜持が許さないわ」
わたしはソファから立ち上がり、千恵に背を向ける。妹に相談しても無駄だということが分かったので、一人自室で作戦会議といこう。
「はぁ……お姉のバカ……」
リビングを後にしようというとき、背後で千恵がポツリと呟いた。
突然ですが、ここまで読み進めてくださった皆様に感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。まさか本作をブックマーク、評価していただけるとは思っておりませんでしたので、内心大変驚いております。
私は物書きを趣味とするまでは文をまともに書いたことなどなく、また読書もあまりしませんので、本作においても読みにくかったり、表現力に乏しい箇所が多々あるかと思います。そんな本作ですが、皆様の娯楽の一つになれたなら幸いです。ですので、どうか最後まで、私の妄想にお付き合いくださいませ。