5.少女は語り始める
意識が浮上していく。
私はゆっくりと、閉じていた瞼を開けた。
そこは、装飾は控えめでありながら、整った部屋だった。
開いた窓から穏やかな風が吹いている。
射し込む陽の光は、暖かい。
何で、こんなところにいるんだろう…?
記憶を辿る。
徐々に思い出していく。
そうだ…私、地龍と戦って、それで…。
そのとき、「コンコン」と扉をノックする音が聞こえ、見覚えのある、1人の男性が入ってきた。
あ…この人……。
その男性は、私が起きているのに気づき、私が寝かされていたベッドに近づいてくる。
その場で目線を合わせるように、膝をついた。
「目が覚めたようだね。よかった…。あの時は助けてくれてありがとう。」
優しそうに笑う彼は、ジークと名乗った。
少し癖のある綺麗な金色の髪に、透き通ったブルーの瞳。
体格が良く、身長もそれなりに高かった。
歳は20代くらいだろうか。
私が、重たい体を無理に起こそうとすると、ジークが手伝ってくれる。
起き上がるとき私は、自分の体に違和感を感じた。
そして、その違和感の原因であろう、半分以上が無い左腕に目を向ける。
あぁ、そっか…。
腕、無いんだった……。
「その腕は、俺が原因だ……。本当にすまなかった…。」
ジークは自分を責めているようだった。
でも、あれは私がやったことだから、彼が謝る必要なんてない。
「ちがう……あれは、わたしが…やったこと……。だから………いい。」
うまく話せない。
最近、まともに会話していなかったからだろう。
思ってることを言葉にするのは、とても難しいことだった。
「だが……いや、分かった。ありがとう。」
ジークはまだ何か言いたげだったが、それを飲み込んだ。
「何か不自由があれば言ってほしい。出来る限り対応するよ。」
「…ううん、平気。」
「そうか。俺は今から君が目覚めたことを知らせてくる。またここに来ると思うけど、それまではゆっくり休んでくれ。」
そう言って、ジークは部屋を出ていってしまった。
私は、ジークが居なくなった部屋を見渡す。
ここ…どこなんだろう……?
どこかの屋敷だろうか。
方角も確認せずに、何日も逃げ続けていたため、今自分がどこにいるのか分からなかった。
ぼーっと部屋を眺めていると、再び扉をノックする音がした。
「入るよ。」
そう言って入ってきた人はジークよりも少し長い金髪で、豪華な服を纏った、頭の良さそうな男性だった。
その人の後ろにはメイドが1人と、ジークを含めた騎士が3人いる。
「私は、アウグスト王国第2王子のエドガーだ。君にいくつか聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
王子……ってことは、もしかしてここって王城?
私は王子の言葉に頷いた。
「じゃあまず、君の名前を教えて貰ってもいいかな?」
名前……私の…………。
「わから…ない。」
「…それはどういうことだい?」
エドガー王子がそう聞き返す。
「覚えてない……。」
私の言葉を聞いたエドガー王子は、少し目を見開いた。
「やはり君は……。質問を変えよう。…君は何と呼ばれていた?」
「……ナンバー036。」
私は、あの場所で呼ばれていた、名前ですら無い、識別番号を答えた。
ごめんなさい!
更新するのがこんなにも遅くなってしまいました。
やっと………やっとですよ!
やっと主人公が会話をしました!!
いや、5話目で初めて人と会話する主人公って明らかにおかしいのですけれど!
ですがみなさん!
ご安心ください!
これからはちゃんと喋ります!
それでは次回をお楽しみに!
感想お待ちしてます!