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3.異様な少女

残酷な表現があります。

読む方は注意して読み進めてください。

◎森の中 騎士視点


「何が…どうなっている…?」


 俺は、目の前で繰り広げられる戦いを呆然と見ながら呟いた。

 俺を守ってくれた人物が、地龍と戦っているのだ。


 通常、地龍というのは一人で戦えるものではない。

 地龍は防御力が高く機動力も高いため、魔法で動きを阻害しながら戦うしかなく、地龍を倒すには通常の魔物討伐よりも多く魔法を使える兵が必要になる。

 その人数は、20人から30人。


 それなのに、『彼女』は地龍の攻撃を凄まじいスピードで躱し、地龍を翻弄していた。

 そう、『彼女』。

 俺を守った人物とは、15または16歳ばかりの少女だったのだ。

 ボロボロのマントを羽織った彼女は、白く輝く長い髪をしており、その瞳はルビーのように真っ赤だった。

 だが、その顔に表情は無く、感情が感じられない。

 さらに、見たこともない、赤みがかった膨大な魔力を纏い、剣を振っていた。

 魔力が可視化するなど、聞いたこともない。

 それほどまで、魔力が膨大だということか。


 その姿は明らかに普通ではなく、異様であったが、美しいと感じた。


  俺は…夢でも見ているのか……?





◎森の中 少女視点


  強い…。


 私は、地龍の攻撃を躱し、捌き、防いでいた。


  鱗が硬くて攻撃が通らない。

  やっぱり、攻撃するなら鱗がないお腹の辺りかな…。


 でも、動きが速く、懐に入ることが出来なかった。


  なんとか、接近しないと…。


 一気に加速し、地龍に突っ込む。

 だが、地龍はそれを予見していたかのように尻尾を振るい、私を吹き飛ばした。

 そのまま木へと激突する。


「ぐはっ……!」


 視界が霞む。

 体がふらつくが、倒れそうになるのを我慢して立ち上がった。


「うっ……ぐぅ…………。」


 まだ、戦闘中。

 倒れるわけにはいかない。


 地龍の次の攻撃を警戒したが、その気配がない。


  どう…して…?


 そして、地龍の視線に気づく。

 その視線は先程助けた、騎士に向いていた。

 ゆっくり近づき、そして、その口を開ける。


 私は力を振り絞って地面を蹴った。

 一気に地龍へと近づく。


  今度は間に合わない…!


 剣で防ぐのは無理だと思った。

 だから私は、そのスピードのまま、騎士を突き飛ばした。


「何故…!?」


 騎士が驚いたように私を見る。


  なんでだろう…私にもわからない。

  でも、あなただけは助けなきゃならないって思ったんだ。


 騎士がいた場所に私がいる。

 地龍は止まらない。

 私の左側から迫ってくる。



  バグンッ

  メキメキッ

  ブチッ


 骨が砕ける音が聞こえる。

 肉が引き裂かれていくのが分かる。


 左腕に激痛が走ったような気がした。

 だが、左腕の感覚は既に無い。

 二の腕から先の左腕が無い。

 左腕が、無い。

 喰われた。


  痛い…痛い…痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い………痛いっ……………。

  でも……漸く近づけた………!


 皮肉にも、左腕を犠牲にしたお陰で接近できた。

 地龍の喉の辺りに剣を深く刺す。

 そのまま腹を斬り裂いた。


「グァアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


 地龍は叫び声を上げ、崩れ落ちた。

 その大きな叫び声は頭に響いて、クラクラする。

 もう自分が立ってるのかさえ、あやふやになってきた。


 少しだけ残った左腕から血が溢れ出てくる。

 明らかに、血を流し過ぎている。

 痛みは無かった。

 感覚が麻痺しているようだった。


「…………。」


  そうだ…逃げなきゃいけないんだった………。


 その場を去ろうと、少しずつ歩き始める。

 だが、すぐに崩れ落ちた。


  体が重たい………。


 薄れゆく意識の中、騎士の声が微かに聞こえた。






  何故か、とても安心できる声だった。



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