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1960年春(5/5)

 バスの時刻があったので二杯目の珈琲をご馳走になった後でお店を出た。


「いいお店教えてくださってありがとうございます」

「一度、余所で尾見さんの事は見かけた事があってね。その時はえらく助けて貰ったけどお礼言う機会もなかった。だから一度話をしてみたかったからちょうど良かった」

「え、どこですか、それ?」

「あ、忘れているならそれでいいから。わしがかっこ悪かった事だし」


そう言って彼は微笑した。


「しかし、今日はわしの趣味に付き合わせてしまっただけみたいで悪かったね」

「そんなことないですよ。ここの珈琲ならまた来てもいいです。誘ってください」


そう言ってうちは「バスの時間がありますから」と小走りに彼の元を離れた。


「じゃあ、遠慮せずまた声かけるから」


そう彼が言っているのが聞こえたので手を振って頷き返した。


「はーい。お誘い待ってますから」


 我ながら大胆な事を言っているとは帰りのバスの席に座りながら感じた。




 2日後だったか横手さんと昼食の弁当を食べていたら、いきなり変な事を言われた。


「チセ先輩、古城さんとデートしたでしょ?」

「はああ?」


この子、どこで見てたのよ?と思いつつ、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

周りを見回したが思ったほど大声ではなかったようで職員食堂の他の人たちは反応していなかった。


「横手さん、何それ」

「直感です。あんな頭のいい人が尾見さんを誘わないわけがないと思いました。チセ先輩ばりのいい直感でしょ?」

「あんた、どこで見てたのよ。係長には濡れ衣のおわびだって言われてちょっと珈琲をご馳走になっただけ。それぐらいでいちいちデートって言われたら係長が困るから言って回ったらただじゃおかないからね」


 横手さんは不満そうにしていたけど他では言わないと約束させた。


「本当にそれだけなんですか。わたし、この手の見立ては外した事ないんだけどなあ」


あの子は何かぶつぶつ言っていたけど、そこは無視した。


 実際のところ、横手さんの見立ては間違ってはいなかった。

ただうちがそういう風に気持ちが傾いていくと思ってなかった。

そしてうちの事をいろいろと誘ってくれるようになったのは彼の方だった。


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