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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最終決戦兵器『俺』

「世界を救ってみませんか?」


 そう言われて俺は、物語の主人公にでもなった気がした。パッとしない俺の人生に光が射した。

『人は誰しも、一人で生き、一人で――』あぁ、これじゃない。

『人は誰でもその生涯で15分は有名人になれる』

 アンディのそんな言葉を思い出していた。とうとうその時が来たのかと、思ってしまったんだ。


 俺の世界は謎のエイリアンに侵略を受けている。そいつらの文明は地球より進んでおり、当然、地球側はどんどん追い込まれていった。突如として現れた奴らの攻撃によって、主要な都市国家が壊滅的なダメージを受けたのである。

 

 アポカリプス――人類滅亡かと思われた。しかし、奴らによる一方的な虐殺(ワンサイドゲーム)になるほどではなく、こちら側が勝利することも稀にあった。

 そんな中で手に入れた奴らの技術。人類より進んだ文明から得た戦利品。それを人類は分析し、解析し、解明し、こちら側の兵器とすることが可能となりはじめていた。


 そして今、一つの成果、最終決戦兵器が完成しようとしていた。

 俺はその兵器のコア、パイロットとなるべく選ばれたのである。



「世界を救ってみませんか?」

 普段の俺なら絶対相手にもされないだろう、ブロンドヘアーで白衣を着た美女に言われた。どこかのモデルかと見間違うような抜群のスタイル。青い目をしたそんな彼女に、ニッコリと微笑んで言われて断れるだろうか? いや、断れる(もの)などおるまい。

 

 しかも世界を救う英雄となれるのである。これ以上なにを望むというのか? 

 特にこれといって尖った特技もない、イケメンでもない、平凡な人生を送ってきた俺には、断る理由などこにも見つからなかった。


 俺は契約書にサッと目を通し、即決でサインを済ませると、薄い布を糸で繋いだだけの、服とも言えないような物を渡された。その後彼女に案内され、俺は更衣室に案内される。


 俺は喜び勇んで着替えようとしたが――。

「あ、あの……、えっと……」

「気にせず、着替えてください」

 彼女はやさしく微笑みながら、こっちをじっと見ている。


 いや、彼女がいいならいいんだが――。むしろ、ごっつぁんです。

「そ、そうですか?」

 俺は内心はずかしかったが、こんな綺麗な人の前で裸になることに、少し興奮してしまっていた。我ながら中々のド変態っぷりである。


 服を脱ぎ、下腹部が元気になるのを感じながら着替えた。もちろんソレを見られないように隠しながら。

 これを機に彼女とお近づきになれたらいいなぁ。むふふ。


 着替え終えた俺に、

「では、こちらの錠剤をお飲みください」

 彼女が手のひらで示す先に車輪のついたテーブルがあった。その上に、錠剤とコップの入った水が置いてある。

 俺は白い錠剤を口に放り込み、水で流し込む。以外に大きい錠剤が、一瞬のどに引っかかるが、無事飲み込んだ。

「っ……、飲みました」

「はい、では行きましょう」

 彼女に前かがみで付いていく。


「さっきの錠剤は、いったい何なんですか?」

 俺は何の気なしに聞いてみる――が、前かがみで付いていった俺の視界に、彼女のお尻がモロに入り込む。歩くたびに揺れるソレに俺の視線はくぎ付けになった。

 

 やばい……。ますます。俺の意思とは無関係に元気になっていく。――だが仕方あるまい、こんな美女のお尻を間近でみることなど今まで無かったのだから。この際だ、天から授かった三つ目のチャンスだ。今の内に目の保養を済ませておこう。『チャンスの神様は前髪しかない』というし。


「あれはこの後の――――で使う――――効果を高めるものですよ――――――体の――を――――にするんです」

 俺は彼女に聞いておきながら、ほとんど彼女の話を聞いてなかった。『ほぉ』『へぇ』『なるほど』『すんごいですねぇ』と、適当に相槌を打つ。



 窓もない無機質な通路を数分歩き、俺は真っ白な部屋へ案内された。部屋の中央には歯医者にあるような、恐らく可動するであろうヘッドレストの付いた椅子が置かれている。そして壁の一部が大きな鏡になっている。


 なんだろうあの鏡、でかいなぁ。あ、もしかして軍のお偉いさんが覗いてるのかな? よく映画なんかであるやつだな。今ごろ鏡の向こうで『これが成功すれば、勝てるぞ!』とか言ってんのかな。



 しばらくして、白衣を着た人が数人、部屋に入ってきた。

 医者か何かかな? あぁメディカルチェックってやつか? まぁなんでもいいからとっとと終わらせて、彼女と話したいなぁ。なんて名前なんだろうな? 聞いておけば良かったな。


 椅子が稼働し、俺は寝かされた状態になる。そして酸素マスクを着けられた。俺の中を緊張感が走り、自然と呼吸が荒くなる。天井の光が少し眩しかった俺は、目を閉じた。


「では、施術を開始します」

 ん? せじゅつ?


「麻酔を」

 えっ? 麻酔なんているのか? ちょっと痛い事するのか……。いや、しかし未来の彼女の前で情けない姿は見せられない。漢は度胸、ひたすら我慢だ――。俺は何が来ても声を上げないように体を強張らせる。


 背中のあたりから駆動音が聞こえ、チクリと痛みが走った。予想していなかった場所からの刺激に、

「うっ!」

 結構痛い。というか俺の経験した麻酔注射の中でトップクラスだ。注射は嫌いだが、悲鳴を上げた事なんてないのになぁ。


 

 しばらくして、麻酔が効いてきた。自分であって自分でないような、不思議な感覚が全身を巡る。どこにも自分がいないような浮遊感。麻酔をしているのにおかしいが、全身の筋肉が垂れ下がったような感覚がする。

 まかさかの全身麻酔か……。これは予想外だったな……。


 試しに体を動かしてみるが、どこも反応(リアクション)が無かった。コントローラーのケーブルを抜いたように、無反応。口すらもう開ける事は出来なかった。完全に全身が痺れてしまっている。

 これから何するんだろ……。ちょっとドキドキするな。

 ガチャガチャと器具が触れ合う金属音が聞こえる。俺にとっては黒板を引っ掻くより苦手な音だった。


「では、四肢の切断を――、まずは右腕から」

 なんだって?! 

 俺は叫んだつもりだったが、声が出ていない。目も開かないし、それどころか全身が動かない。意識だけはあるのに、まるで何もできない。

『チュイィン』という、甲高い機械音が響き渡る。


「しかし、切断の必要はあるのかね?」

  医者の男性の一人だろう、疑問の声が聞こえた。

「必要です、現行の我々の技術では、そうしないと入らないですから――」

 彼女が淡々と理由を説明している。ニッコリと笑みを浮かべていた彼女からは想像もできない、冷徹で冷酷な言葉が紡がれる。いま彼女は、モルモットでも見るような目で俺を見ている気がする――。

 

 入らない? なんだ入らないって。ていうか、四肢を切断なんて聞いてないぞ?!

 あぁっ!? まさか……。なんてこった! 書いてあったのか?! あのサインした書類、契約書に……。


 待って! ちょっと待ってくれ! よく読んでなかったんだ! やめてくれ! 誰か! 聞こえないのか?! 誰か助けてくれ! 


 暗闇の中で俺は必死に叫んだ。声を限りに叫んだ。でもその叫びは、その願いは届くはずもない。聞いているのは俺だけなのだから。


 かくて俺は新型兵器のコックピットに組み込まれ、そのコアとなった。侵略者を蹂躙し、殲滅するマシーンに。対エイリアン用最終決戦兵器が遂に完成したのである。

 

 彼女とはむしろ遠ざかってしまったが、人類を救う英雄になれる、そう思えば少しは気分が良かった。


 それから、

 幾度かのモデルチェンジを経て、俺は結局『脳』だけとなり、未だ奴らと戦っている。



あとがき

当初の主人公には、『家族の最後の一人である、妹を失って失意のずんどこに居た』それもあって引き受ける、という設定があったのですが、まぁもういいか誰も読んでねぇし(酷)と思いやめました。


あとがき2

この後、主人公は見事侵略者を追い返し、晴れて英雄になりました。と、いま決めました。むしろこっちから奴らの母性に攻め込んでやろうかという話が軍でお(略)一方ロシアでは秘密裏に手に入れた奴らの(略)中国も(略)。



地球の技術も進歩して、主人公は晴れて体を取り戻す(義体『ジャスティン・ビーバータイプ』ですが)事にします。ちんこもあります。


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