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7Days  作者: 八王女
6/23

2日目 act.2

高校3年の冬。私は焦っていた。

受験勉強ができていなかったからではない。

彼氏ができていなかったからだ。

もっと正確に言えば 好きになった人が今まで2人しかいなかったからだ。

相手は 幼稚園の先生と虎之助。

恋愛事態に縁がない私。

なのに 周りはポンポンと彼氏を作る。

エミ 彼氏いないの?やだぁ 超おかしくない?

そんなことを毎日言われてしまったら 催眠術のように 私はおかしい人だと思い込んでしまう。

彼氏が欲しいと焦りながらも 好きなのは虎之助だけで 約束を守りたいから 彼氏作れず。

心に2つの意見が戦っていて バランスが上手く取れなくて 恋愛ストレスにかかっていたかも。

そんな時に 友人が言ってくれた。

「人はね 平等に恋愛量があるんだよ。彼氏ほいほいと変えてたら 少しずつだけど恋愛量が減るの。

今エミは全く恋愛してないなら たくさん恋愛量が残っているんだね。

いいなぁ これから彼氏できたら その1人の人にたくさんあげられるんだよ。

だから とりあえず感覚で恋愛量減らしちゃダメ。慌てちゃだめだよ!」

卒業した後に知ったんだけど 友人は担任の先生と不倫をしていて

最近になって 先生が離婚をし めでたく結婚をしたらしい。

ふむふむ 恋愛量かぁ。

私 その恋愛量少しも使っていなかったから 天使が下りてご褒美くれたのかな?

あの時は よし!虎之助に全部使ってやる!!って思ってたけど

実際はKIYOSHIに使っちゃってる。

でも構わない。私は今 幸せを実感してるんだから。


「ちょっと 井上って奴出てきてくれない!?」

本日最後の講義が終わり これから買い物をしようと席を立った時だった。

バァァァンと 教室のドアが開き ドドドンと5人ほどの女たちが入ってきた。

そして 私を呼んでいる。

てか いかにもこれから拉致ります。的な雰囲気だして

はぁい 私 井上です。

なんて言うか。

私は立ったまま教卓に立ち尽くす5人組を見ていた。

この教室には50人近くの学生がいる。

そう簡単に井上…つまり 私が見つかるとは思えない。

しかし 女が井上と言った時から チラチラと学生たちが私を見つめ始めた。

前に座っていた3人組の学生なんて 体を後ろにまで向けて 私を見ている。

やばい バレる。

そう思ったとき すでに遅し。女と目があった。

「ちょっと来てくれない?」

女がそう言うと 他の4人が私のほうに向かってくる。

井上って 何かしたの?

えぇ?知らないの?KIYOSHIと付き合ってるらしいよ?

あぁ KIYOSHIファンって熱狂的な人多いよなぁ。

そうそう コンサートとの帰りとかさぁ 必ずケンカあるらしいよ?しかも女同士で。

知らない。そんな情報全く知らない。

予想してなかった出来事に 私の体は動かない。

4人の女の1人が がっつりと私の手首をつかんだ。

もう 逃げられない。

「ちょっと来なよ。」

鼻にピアスをして 少しだけふくよかで もしかしてプロレスしてる?みたいな女が ギュッと手に力を入れ私の手首を締め付ける。

私は 怖さで瞳をウルウルさせるが 女たちは全くもって無視。

グイグイと手首をひっぱられ 教室を出た。

廊下には講義が終わって たくさんの学生たちがいる。

たくさんいるため 私が拉致られていることに気づかない。

手首を強く握られて 顔を下に向けているのに

誰も 私の恐怖に気づいてくれない。

バーゲン会場のように みんな自分たちのことに夢中で 他人のことなんて見れないのだ。

私は俯いた顔を 少しだけ上げて前で歩く女たちを見る。

女たちは お互いの顔を見つめ 口をポソポソと動かす。

その口の動きに合わせて 自分なりに考えた台詞を入れてみる。

「こいつ どうします?」

「とりあえず大学の裏に行こうか?」

「いいっすね?殴りたい放題ですね?」

「ボコボコにして そのまま焼却炉にポイとか?」

タイミングよく 女たちがクスクス笑う。

あぁ 私の命は今日までだ。

私は 頭を下げる。すると女のお尻ポケットが視界に映る。

携帯ストラップが飛び出ていた。

KIYOSHIと名前が書かれたストラップ。

どうやら 女たちは本当にKIYOSHIのファンだ。

そうだよな。

私みたいなKIYOSHIの顔も知らない女が KIYOSHIが彼氏になったって言われたら腹立つよなぁ。

一般人の虎之助に彼女が出来ただけで すごく腹立つんだ。

それに KIYOSHIの恋人が一般人で どこにでもいるような女だけに よけい腹が立つだろう。

殴られて ボコボコにされて 焼却炉に捨てられても仕方ない。

てか 本当に私殴られるの?

今日は 夜からKIYOSHIの家に行けるのに

今日は いろんな初めてをKIYOSHIにあげるつもりでいるのに

私の恋愛量 全く使わないまま 私は燃やされるの?

こんなんなら 早く彼氏作っておけばよかった。

虎之助なんかの約束を守るんじゃなかった。

後悔 後悔 後悔…

頭には 後悔という言葉しか生まれず 埋もれた。

「絵美?どこ行くの?」

私の予想通り 校舎の裏出口に向かっている時だった。

イチゴオレを飲んでいる虎之助に会った。

あぁ こいつ。

こういう時には 必ず現れる男なんだよな。

そして必ず 私を助けてくれる。

だから いつも好きになってしまうんだ。

「虎之助ぇ。」

私は名前を呼ぶと ボロボロと涙を流す。

虎之助は私の表情と ガツンと掴まれた手首を見て 今の状況を察した。

「お前ら 何なの?絵美の何?」

プロレスラーみたいな女が軽く舌打ちをした。そして手首から手が離れる。

これで助かる。

私は トボトボと歩き 虎之助の横に立った。

虎之助はチューチューとイチゴオレを飲みながら 女たちを睨む。

「別に。ただ KIYOSHIと付き合ってるのか どうか知りたかっただけ。」

ウソつき。

虎之助のシャツの袖をギュッと掴む。

その手は震えていた。だって私 もう少しで殺されるところだった。

「ふぅん。そうなんだ。それで裏口向かうんだ。」

プロレスラーみたいな女が また舌打ちをする。

「そ そうよ。だって みんなに知られたら困るじゃん。井上さんのこと思って…」

「絵美のこと思って?だったらさぁ 裏口とか複数で行くなよ?絵美怖がってるじゃん。」

虎之助はそう言って 飲んでいたイチゴオレを口から離すと 思いっきり床に叩き落とした。

バン!!と牛乳パックのイチゴオレは鳴り ペシャンコになった。

「オレ 絵美に何かあったら マジでキレるよ?」

女たちは お互いの顔を見合すと そのまま顔を下げて 私たちから離れた。


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