6日目 act.1
お互いがお互い 好きだということが嫌でもわかっていて
ずっと一緒 が口癖で 仲良くやっていた。
それが突然 君よりも好きな奴ができた。と言われて別れを言われる。
あっ そうか。じゃぁ しょうがないね その好きな子と仲良くね。
なんて 言える人がいるのだろうか?
普通なら 納得なんて出来るわけがなく 恋人がいる場所に行ってしまう。
潔のマンションを出たとき 入口で紫音を見つけた時
私は 驚きよりも納得の感情が生まれてしまった。
潔は 朝早くに仕事へと出て行った。
だから1人で出ていく私は このマンションの住人になりすまして 紫音の前を通り過ぎることだってできた。
わぁ 芸能人がいる!そう驚いたふりして 紫音にサインを求めて去ることもできる。
それなのに 紫音の前に立ち止まってしまったのは
彼女があまりにもキレイすぎたのと
口を少しでも開けば 簡単に白い息が出てしまう寒い外で
震えながらも 潔を待っていたから。
こんなにも寒い外でも 頭には潔のことでいっぱいなのか 顔を固めずに笑顔で待っていたから。
横取りして 無理やり潔の彼女になった私には 彼女が眩しすぎた。
立ち止まり 自分をみる私に 紫音は自分が歌手の紫音であることがバレたと思い
私と目が合うと 少しだけ眉を寄せ困りながらも TV用の笑みを私に作ってくれた。
そう 紫音は 私が潔の彼女だと思っていない。
無理もない。
私は どこにでもいる普通の女だ。
潔や紫音のように輝けるものなんて何も持っていない。
そう私には何もないのだ。
ポケットからケータイが鳴る。
潔からの電話の着信音だ。
KIYOSHIの歌が聞こえ始めると 紫音の笑顔がコマ送りのように徐々に消えた。
そして 黒い瞳孔を満月のように瞳いっぱいに満たし私を見る。
私は 紫音の瞳を見つめながらケータイを取る。
そして声を出す。
「もしもし 潔?今 マンションでたよ。」
私がそう言うと 紫音は強引にケータイを奪った。
紫音の長い爪が 私の手の甲を掠り傷が出る。
でも 紫音は私の手の傷など全く気にせず ただケータイに叫び続ける。
「潔!!潔なの?なんで なんで携帯番号変えたの!?なんで なんで なんで…」
こんな女と付き合ってるの?
そう言おうとして 私を見つめ紫音は言葉を詰まらせる。
正直に言えばいいのに 私に気を使って言わない紫音。
少しだけケータイから耳を離し
「ごめんなさい。手のひらケガさせちゃった。」
申し訳ないとは思ってないのに 謝っちゃって。
本当 腹黒いな自分。
紫音は きっと いやきっとじゃない。
絶対に潔のように優しい人だ。
私は こんなに優しい2人を引き離したんだ。
あの時 思いつきで潔の名前を言って 別れさせたんだ。
紫音?お前 絵美にケガさせたのか?
受話器からは 潔の声が聞こえる。
紫音は潔の声を聞き 涙を流す。
「あなた 絵美って言うの?潔の彼女なの?」
私は頷く。
紫音は瞳を閉じながらも涙を流し続ける?
おい?紫音?いいから 絵美に変われよ!
潔のどなり声が 紫音の耳に届く。
つい最近 5日前までは 甘い言葉を言ってくれた潔。
紫音 お前いいかげんにしろ!!絵美に何かあったら許さないからな!
それが今 私を怒鳴り 違う女の名前を言っている。
紫音は 現実に耐えきれなくなり
何も言わず そっとケータイの切ボタンを押すと
そのまましゃがみ込んだ。
私は その姿をただ見つめていた。
「なんで… なんで… 潔… 突然 こんなことになったの?」
それは私が天使に願いを叶えてもらったから。
そんなこと言って 紫音が満足するわけがない。
私だったら 絶対ふざけるな!と言ってビンタをする。
そう ふざけた話なのだ。
ふざけた話なのに これが現実なのだ。
そして私は このふざけた現実に必死なのだ。
「紫音。」
私が名を呼んでも 紫音は頭を下げたままだった。
「ごめん 本当にごめん。」
潔を取ってしまって こんな ふざけたことになってしまって。
でも
「1日だけ我慢して。1日だけ潔の恋人でいさせて。」
震えた声で言った言葉に現実味を感じられたのだろうか?
瞳を大きく震わせて紫音は言う。
「…いやだよ 1日でも嫌だよ。
潔とソバにいたいのに ずっとソバにいるって言ったのに 1日だって我慢できないよ!!
なんで こんなことになったの。ねぇ あなたは潔に何をしたの?」
まただ 相模と同じことを紫音は言う。
何もしていない。
それが 私の答えだ。
その答えを口に出せないのは
そんなこと言って紫音が満足するなんて思ってないからだ。
「私は… ずっと潔が好きで ずっと思いを言い続けたの。それで やっと両想いになったのに。
そんなたった1日で気持ちは変われるものなの?」
変わったんじゃない。
変わらせたんだ。
天使が 私が 無理に変わらせたんだ。
胸がずっと痛い。
私は 潔と付き合うべきではなかったんだ。
そう頭で理解しても 私は潔と別れるつもりはなかった。
それでも願ってしまうんだ。
潔を好きになってしまったから 大好きになってしまったから
お願いだから 後1日だけ潔の恋人でいさせて。