御神輿がたくさんある祭り
祭りが好きな自分ですが、未だ神輿をかついだことがありません。
憧れだけがつのり、体力は減少していく今日このごろ。
そんなわけで、たくさんの御神輿が見られる祭りに行くべく、電車に揺られること約一時間。
近くて遠い同県他市に到着。
閑散とした駅前から歩くこと、十分少々。ちらほらと出店が並びはじめたころ、なにやら車道で笛の音がする。
ピーッピッ!
ピーッピッ!
見れば、中学生くらいの少年たちが小ぶりながらも立派な御神輿を担いで、歩いてくる。
黒塗りの屋根に金の細工をちらちら揺らし、てっぺんに鳳凰をかたどった金の飾りを煌めかせた御神輿が、日焼けした少年たちに担がれて通り過ぎていく。
先導する男性の羽織る法被は汗でびっしょり背中に張り付き、御神輿を担ぐ少年たちの赤い顔を汗が流れ落ちていく。暑い。
屋根の下、日の当たらない道をのろのろと歩いているだけの自分でさえ暑いのだから、重たい御神輿を担いで陽光の下を練り歩く彼らは、そうとう暑いことだろう。
御神輿が練り歩く経路にある商店街の店のあちこちに置かれた発泡スチロールの箱には、汗だくになった担ぎ手たちを労うための冷たい飲み物が入っているらしい。
振り返れば、先ほどすれ違った少年たちが冷えた缶を手渡され、ぺこりと頭を下げつつ受け取る姿が見えた。
自分もここらでひとつ、かき氷でも買って涼みたいところである。
ちょうどそばにかき氷の屋台があり、さらさりと涼しげな音をたてて魅惑の氷山を作り上げている。
が、しかし。
今日の祭りは神社の例祭。
まずは参拝を終えねば、と気持ち早足で出店の並ぶ通りを歩き過ぎる。
かき氷、ベビーカステラ、お好み焼きに唐揚げ。いくつもある店の中でもところどころ行列が出来ているのは、特別うまいのか、やすいのか。
子どもが多いな、と思えば、ボールすくい、金魚すくい、それから細々とした人形をすくう、人形すくいなどがある。型抜きなんて、もうやらないのだろうか。
懐かしかったり胃袋をくすぐられたりしながら歩いていくと、飴細工の屋台を見つけた。その場で飴を練って、好みの動物を作ってくれるらしい。
ごった返す人波をぬい、どんどん歩いて神社に到着。手水舎から境内への流れに乗り、御賽銭をちゃりんと入れたらようやく祭りを楽しめる。
手始めに、境内にあるスマートボールの店でちびっ子に混じってボールをはじき、蜜がセルフサービスのかき氷屋で凶々しい色のかき氷を作り上げる。
道中、聞こえてきた甲高いわっしょい、の掛け声に車道を覗いて見れば、そこには可愛いお祭りが。
幼稚園児だろうか、小さな子どもがわらわらと集まり、小さな御神輿に群がっている。
練り歩きはしないのだろう。
歩行者天国になった交差点の真ん中。大人二人が持ち上げた御神輿の周りに集まって、わっしょいわっしょいと言いながら御神輿を上下に揺すっている。
横断歩道のあたりに群がるのは、親御さんだろうか。手に手にビデオカメラや携帯電話を持ち、嬉しそうに見つめている。
その様を微笑ましいと思いながらも、自分には炎天下に煮えるアスファルトの元へ行くほどの気概はない。
ぶらぶら歩いて飴細工の店でキンギョを作ってもらい、御神輿を追い越して駅に着く。
祭りの熱気と喧騒のあとでは、この閑散とした駅の雰囲気も悪くはないな、と思う。
ちょっと不恰好な飴のキンギョを眺めてついつい笑い、帰路につく。
見るのは好きだけれど、担ぎ手にはなりたくない軟弱者です。