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死者が住まう街の中で・・・  作者: ゾンデレラ城の雑務担当
2/8

こいつ、ゾンビですか?

夏は何でこんなに暑いのかねー。

爛々と輝く太陽

湿り気を帯びた風

日本の夏はナマモノを腐らせる為に存在するんじゃなかろうかと思いたくなるぐらいに嫌な暑さが続く。


紫外線はお肌の大敵だ。

対策を怠ると俺らゾンビの身体は火傷したように赤く爛れて、パサパサになった皮膚はやがて腐って剥がれ落ちるのだ。


生きたまま、人体模型のような悍ましい姿にされるなんて考えたくもない。


まあ一般的見解だと俺ら寄生虫に取り憑かれた人間は脳死扱いなんだけどさ。


今や日焼け止めクリームや乳液を塗ったりすることは俺の日課といっても良い。

極端に落ちた代謝を取り戻す為にも食事療法やストレッチなども欠かさない。


ゾンビにされた時点で殆どの人間は自我を失っていくが、運良く俺は自分を失う事にならなかったので、あの日から自分の身体を腐らせない努力は積極的に行っている。


ゾンビになったあの日からずっと・・・





『ゾンビ虫ふつくし過ぎワロタ・・・』


『まだカレーを食べた事のない俺にカレーの魅力を説明するスレ』


『コンマ00秒の奴がゾンビ化するスレ』


『【日本】寄生虫被害者、100万人突破。死者多数【終わってた】」



ー大丈夫、俺は感染していない。

寄生虫なんて着いちゃいない。

まだ慌てるような時間じゃない。


鏡に映ってた姿は良く似た別の病気で、俺が寄生されてるなんて馬鹿な話は有りはしないんだ。


ー落ち着かない。

顔を洗って眠りに就こうとしていた俺は自分の瞳の色に異常を覚え、すぐさまインターネットで『瞳が赤い』と検索をかけた。


真っ先に目に付いた物が最近噂になっている寄生ウイルスなる物で、次にアルビノやら赤目現象などがあり、病気に関するものは大概が白目部分に関する物であった。


ただ唯一、茶色と赤のオッドアイになっている画像が検索でヒットし、拡大してみるとやはり瞳の中にナニカが混ざりこんでいて、その画像が貼られたページは何処かの掲示板のようだった。


『例の寄生虫、やはりゾンビだった模様』


1:名無しのゾンビさん


アメリカテキサス州の研究チームの発表によると、寄生虫ザイリルムは人の脳から脊柱までに触手を伸ばして神経電位を操り、人を操作する性質を持つ事が明らかにされた。

神経伝達物質を操作し、人を脳死の状態に追い込んで自力で活動する事が可能な為に、寄生され、今尚昏睡状態で病院で眠続ける患者に対する警戒を強めるべきだと一部の人間から警鐘が鳴らされている。


ttp://www.zyrilm.nsw1862839e.co.us


画像


画像





2:名無しのゾンビさん


何か目の中にいるんだけどこれ目見えてんの?



3:名無しのゾンビさん


>1

ぎゃああああ!



4:名無しのゾンビさん


寄生されるとこんな目になるとか怖すぎる



5:名無しのゾンビさん


魔眼が開眼しとるwww




:

:

:

:


178:名無しのゾンビさん


ちなみにコレが感染者を解剖して取り出された寄生虫の全体像です


っttp://qawsedrf.fuzic.jpg



179:名無しのゾンビさん


グロ中尉



180:名無しのゾンビさん


ふ、ふつくしい・・・



181:名無しのゾンビさん


『感染者がお風呂入るとケツからハリガネみたいな物がにゅるっと出てくるのwww?』っと



182:名無しのゾンビさん


そろそろショッピングモールで立て籠もろうかと思うんだけどオススメのショッピングモール教えてくれ



183:名無しのゾンビさん


怖すぎてまだ画像が見れない件



184:名無しのゾンビさん


>182通報しますた



185:名無しのゾンビさん


ショッピングモールって良く立てこもる場所の筆頭に挙げられるけど実際そんなに役立つ物置いてないよね。



186:名無しのゾンビさん


物流倉庫で篭るワイ、高みの見物。



187:名無しのゾンビさん


巨大船舶で世界一周の旅に出ている俺には関係のない話だった。



189:名無しのゾンビさん


近くの病院で昏睡状態だった感染者が突然暴れ出したらしい。



190:名無しのゾンビさん


テレビでウイルスって言ってたけどやっぱり虫だったじゃん。



191:名無しのゾンビさん


緊急だし、ウイルスって言ってた方が予防法とかの周知がし易いんとちゃうか?(適当)





掲示板には男性の顔写真が掲載されており、その男性の瞳にはよく見ると黒い影が混ざっている。


間違いなく先ほど鏡で見た自分の眼の中に酷似しており、この症状はやはり例の寄生虫であろう事が確定的となってきた。

冗談じゃないぞ、寄生されたなど認めるものか!



それから情報収集を続けるも、いつしか件の寄生虫についての情報ばかり検索する様になり、感染したらまずどうすれば良いのかを調べ始めた頃には自分が感染していることは認めざるを得ない認識となっていた。



どうやら現状、感染してもとくにコレといって助かるための対策はないらしい。


それどころか感染者の多くは高熱を発した後、意識を取り戻さないばかりか、最悪、そのまま衰弱死してしまう事例が大半であるらしい。


意識がある人間は異常行動を起こし、どっかの施設で拘束されて治療を行うらしい。


だが、俺の場合は別に眼が赤くて気持ち悪い生き物がそこに潜んでいる以外は至って普段通りの健康そのものであり、赤くなった左目も普段通り問題なく見えている。


盲点に入っているのか、視界が赤いとか何かそこにないものが見えるとかはない。


だからこそ認めたくないのだが。


調べを進めていくと感染した多くの人間は病床に着いており、その大半が植物状態であるとされ、人工呼吸器やら点滴、

挙げ句の果てには血行が悪いのか体の一部が壊死する人間も大勢出てきている。

病床の設備も足らず、受け入れ先のない患者が次々腐って死んでいる。


だが、もっと深刻なのは異常行動を起こし始めた感染者で、施設でも受け入れできる人数を既に超えているのに受け入れざるを得ない状況が続き、先日とうとう施設の職員が噛まれ、対応出来ない状態となり感染者も脱走。

遂には自衛隊も介入したらしい。


一番恐ろしいのは体の所々が壊死して腐っているのに鈍い動きで襲いかかったという施設の患者だろう。


病院内でも突然目覚めて暴れ出す事例が多発。

患者は鼠算に増えて益々受け入れ体制が苦しくなっている。

近々感染して植物状態とされた患者を脳死扱いにするとかどうとかの法案が可決されるらしい。


どうやら、俺が知らなかっただけで世界はここ最近で大きな混乱の渦に飲まれている様だった。

俺もその渦の流れの中に、巻き込まれちまった。


後輩に噛まれた右腕の親指あたりを見る。

歯型の傷口の周りは気持ち悪い色に変色しており、触った感触も鈍い。

痛みはなく、傷口は粘っこい粘膜の様なもので覆われている。


マズイかもしれない。

このまま傷が治らず、親指が千切れてしまうんじゃないだろうかとか

傷口がどんどん広がって、本当に体が腐ってゾンビの様な姿になってしまうんじゃないだろうかとか、

そんな良くない考えばかりが頭の中をよぎる。


傷口を洗い、救急箱箱を取り出して消毒をし、バンドエイドで傷の手当を行う。


事は傷口だけの問題じゃない。

なんで俺だけ寝込んでるわけでも異常行動を起こさないのかも分からないが、折角動けるのだがらみすみす研究標本になってやるつもりも無いし、腐っていくかもしれない体を放って置くつもりも毛頭無い。


なんだが体の代謝が落ちている気がするのだ。

本当に腐るかもしれない。


そうして俺は取り敢えず感染してしまった事実に目をつむり、

アンチエイジングやらお肌ケアの方法などを検索し始めるのであった。

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