公園の二人
朝。丘の上にあるせいか、この時間帯の公園は少々ひんやりしている。
愛海は今日も公園にいた。
「おっ愛敬じゃないか!」
「あら? 自主練の途中」
朝からベンチでうたた寝していた後ろから東弥が歩いてくる。
相変わらずの上下ジャージ姿だ。
「まぁそんなところだな。愛敬は?」
「私? 私はこれよ」
愛海は横に置いてあるカバンを指差した。
その動作で大体の事情を察した東弥は、なるほどな……などとつぶやいてから愛海の横に座る。
「それで? どうなんだ漫画部の方は」
「まぁぼちぼちよ。そっちこそジャージ愛好部の活動はどうなの?」
「あぁ! こっちは絶好調だ!」
ぐっと指を立てる東弥に対して愛海の顔は暗かった。
「書けてないのか?」
「まぁなかなかね……キャラクターは決まったんだけど、お話の内容がなかなかね……まったく、部長も一人一作品なんて無茶を急に言い出すんだから」
愛海は、ベンチにもたれかかって空を見上げる。
その時、ぽすっと彼女の頭に手が置かれた。
「まぁあれだ……部活をちゃんとしようってのも立派だけど無理するなよ」
「わかってるわよ。それぐらい……あなたこそ部活にどっぷりねっとりはまりすぎてジャージ以外は福じゃねぇ! っていうのが口癖のお宅の部長みたいにならないでよ」
「そー来るか……」
ぼりぼりと頭を書いた後、優しげな声色で続ける。
「まぁ確かに上法先輩は無茶苦茶だけどさ……なんていうかな。結構、いい人だと思うんだ。情報処理部とジャージ愛好部の部長を兼任してる上に風紀委員長だろ? 大変なはずなのにいつも笑ってるからな」
「天使のほほえみってやつね。うわさでは聞いてるわ。なんでも争う気力をなくすような笑みらしいけど……」
「あぁ。あれを見て喧嘩する気が失せないやつを見たいな」
愛海は疑るような表情で東弥の顔を見る。
「そんなにすごいの?」
「まぁな。誰かが争っているところにいつの間にかあらわれて争いを沈めちゃうんだよ。風紀委員会の最後の切り札とまで言われているぐらいだ」
「なるほど……上法先輩か……」
ボソッとつぶやくと愛海は立ち上がり、目の前に設置された木目調の転落防止用の柵のほうに歩いていく。
「愛敬?」
「決めた」
「何を?」
東弥は、意味が分からずに頭に疑問符を浮かべている。
そんな彼の様子など気にせずに愛海はにこっと笑っていた。
「ヒミツよ。ヒ・ミ・ツ!」
その笑顔のまま、愛海は丘を駆け下りていく。
東弥は、ただただ呆然とその場に立ち尽くしていた。




